見出し画像

【WAmazing 𠮷野氏】コロナ下での3年間。未来と仲間を信じたCTOが考える「重宝されるエンジニア」とは

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。

WAmazing株式会社(以下、WAmazing)は「日本中を楽しみ尽くす、Amazingな人生に。」をビジョンに掲げ、訪日外国人向けにオンライン旅行サービスを展開しています。

今回は、同社のCTOである𠮷野哲仁氏に、入社の経緯から、コロナ禍でのWAmazingの事業展開、スタートアップで活躍するエンジニア像まで幅広くお話を伺いました。


𠮷野 哲仁 氏
SES企業を経て、2007年にヤフー株式会社(以下、ヤフー)に入社。Yahoo!ショッピングやYahoo!トラベルのテクニカルディレクターを担当し、プロジェクトを牽引。
2019年にWAmazingへVPoEとしてジョイン。入社後2週間でCTOに抜擢され、プロダクトをはじめエンジニア組織のマネジメントまで幅広く従事。現在はインバウンド市場のさらなる拡大を目指して挑戦している。


技術以外のスキルをさらに高めるために、スタートアップへ

──まず、𠮷野さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。

𠮷野:20歳でエンジニアとしてのキャリアをスタートし、およそ20年くらい経ちます。最初は小規模なSES企業に入社し、25歳でヤフーに転職しました。12年在籍する中で、最後の3年間はYahoo!ショッピングやYahoo!トラベルのテクニカルディレクターを任されました。技術をサービスにどう適用していくかをマネジメントする「サービスのCTO」のような役割を担っておりました。

2019年にWAmazingにジョインし、入社後すぐにCTOに就任し、3年ほど経ちました。

──もともとスタートアップを視野に入れて転職活動をされていたのですか?

𠮷野:いえ、最初からスタートアップを視野に入れていたわけではありません。今後やりたいことがはっきり決まっていないまま、フォースタの六丸さんにご相談をしました。さまざまな会社をご紹介いただく中で、段々自分にはスタートアップが合っていると思うようになったんです。

わがままな話ですが、私は自分の思い通りに、ものづくりをしたかったのです。当然、ひとりでできることには限りがあり、周りの人を動かす力が必要になります。そこで技術力を高めるだけでなく、交渉術やプレゼン能力など、技術以外の周辺スキルをさらに磨きたいと考えるようになりました。

ヤフーは大企業で、良い意味で分業化がすすんでいたため、自分が手を伸ばせる範囲が限られていました。対してスタートアップならあらゆることに関われて、技術以外のスキルをもっと伸ばすチャンスがあると、六丸さんとのお話で実感しました。

──WAmazingに入社して、色々なことに幅広く携われている実感はありますか?

𠮷野:入社し、CTOに就任したことにより、手を伸ばせる範囲は広がりました。もちろん全部思い通りにできるわけではありませんが、入社前のイメージを超えてあらゆる領域に関われている実感があります。

弊社にも「自分の領域からはみ出していこう」といったカルチャーが根付いているため、まさに私の考えとマッチした働き方ができています。


コロナ下での苦境。可能性を見出した市場でWAmazingを信じる仲間と乗り越える

──直近3年間はコロナ下といった未曾有の事態で苦しい場面も多かったと思います。改めて、𠮷野さんがどんなミッションを追いかけ、乗り越えてきたかを教えてください。

𠮷野:WAmazingは訪日外国人向けいわゆるインバウンドのオンライントラベルエージェント(以下、OTA)事業を展開しています。ホテルや交通チケット、免税のお買い物やSIMカードの予約など、旅行に必要なサービスを一気通貫で提供しています。

私が入社した2019年時点は、事業を成長させるために組織を拡大するフェーズでした。CTOとしての当時のミッションは、採用や人事評価の再構築など、組織拡大における社内の体制づくりでした。

しかし、コロナ下によりインバウンド需要が止まってしまったため、OTA事業は一時クローズ。今まで掲げていたミッションをがらっと変えて、会社を潰さず従業員の雇用を維持するためにできることを、経営陣と議論していました。

──コロナ下を乗り切るため、新たに事業を展開されたと伺いました。どのような事業を展開されたのでしょうか?

𠮷野:新たに展開した事業は2つあります。

1つは翻訳の受託事業です。弊社の従業員の約40%は外国籍ですが、皆日本語が堪能です。雇用を守るため、彼らの言語能力を活かしました。

もう1つは、地方自治体や観光協会、DMO等から受託している観光のDX推進事業です。インバウンド事業の知見やこれまでに得た予約情報などのデータを活用しています。今となってはOTAとならび、2つ目の柱になるほど成長しております。

上記2つの事業は、プロダクト作りを必要とするものではありません。そのため、エンジニア組織は仕事がない状態が続きました。
エンジニア側の雇用も維持できるよう、あらゆる手を尽くしました。助成金の活用、副業解禁、中には一時的に他社に出向してもらったメンバーもいました。

コロナの先行き、インバウンド事業の見通しに不安を覚えるメンバーは少なくなかったです。生活面など様々な事情でWAmazingを離れざるをえなくなった人もいました。当時は本当に苦しく辛い状況が続きましたが、今となっては自分の中で消化ができています。

──苦しい状態の中で、なぜ諦めずに向き合えたのでしょうか?

𠮷野:WAmazingにジョインした理由でもあるのですが、インバウンドのマーケットに大きな可能性を感じていたからです。コロナが収束すればインバウンドは必ず戻り、事業も復活すると信じていました。誰かに言われたからではなく、自分の心に留めていたのが大きかったと思います。

また、この状況を悲観せず、今の私にしか経験できないと前向きに捉えたことも原動力となりました。万が一、会社が傾いたとしても私の人生が終わるわけではないですし、この経験は今後のキャリアを歩むうえで必ず糧になる。そう信じて、今の状況で何をインプットできるか、何を実行できるかを意識して動いていました。

私を奮い立たせてくれたのは、経営陣や周りのメンバーです。皆市場とWAmazingの事業成長を信じていました。だからこそ、前を向きながら苦境を戦い抜けたのだと思います。


CTOは”今”を捉える仕事。インバウンド市場の拡大を自ら作り出す

──コロナ禍からおよそ2年半。最近は各国の規制も徐々に緩和されていますが、WAmazingの事業状況と、𠮷野さんが現在担うミッションを教えてください。

𠮷野:ようやく最近、インバウンド事業の復活が数値で見えてきました。
そのためOTA事業を今年8月から再開しました。ありがたいことに、メイン顧客である台湾はじめ世界中のお客様からご予約をいただいています。

私自身は、OTA事業を軌道に乗せ、いかにシェアを伸ばすかにコミットしています。
OTA事業は成熟途上にあり、これから5倍、10倍に拡大する市場だと考えます。市場自体の規模をWAmazingの力でどこまで広げられるかがミッションだと捉えています。

また、上場も視野に入れています。上場は市場をどれだけ広げ、成長できたかを測るバロメーターだと思っているので、インバウンド市場の拡大と並行して挑戦していきたいです。

──類を見ない困難に向き合われた3年間の経験から、CTOとはどのような役割であるべきだと考えられていますか。

𠮷野:CTOは、その時の状況によって何をすべきか見極め、実行に移さねばならないポジションです。だからこそ、“今”は何をするフェーズなのかを解像度高く捉えることが求められると思います。

例えば、メンバーが不安定な状態に陥っていたら解決に向かって動き、チームがバラバラになっていたら整えなければなりません。この3年間で本当に多くの変化に直面したからこそ、今何ができるかをしっかり捉えることが、CTOの果たすべき責務だと実感しています。


異文化で気付いた素質。技術以外の領域を担えるエンジニアこそ重宝される

──ここからはスタートアップにおけるエンジニアキャリアについてお伺いします。スタートアップで活躍できるエンジニアは、どんな人だと考えますか?

𠮷野:技術に特化するだけではなく、ビジネスやデザインなど周辺領域の壁を取っ払い、広く見渡して取り組める人や、その間を埋めるように動ける人は、スタートアップに限らずあらゆる企業で重宝されると思います。

ある技術領域を極め、スペシャリストとして活躍しているエンジニアは世の中にたくさんいるため、その中で突出することは容易ではありません。対して、周辺領域まで意識を持って取り組めるエンジニアはまだ少ない印象です。まさにブルーオーシャンのキャリアですし、幅広く何でもできる人は、どの会社でも普遍的な価値を発揮できると思います。

──これまでのお話から、𠮷野さん自身も広い視野を持たれていると感じます。その重要さに気付いたきっかけはありますか?

𠮷野:きっかけは、ヤフー時代に中国のEコマース大手・アリババ株式会社に出張した経験です。

技術力もさることながら、エンジニアが業務に限らずユーザー特性などの細部まで理解し、マーケットを作り出していく姿勢を持っていることに驚きました。その時、初めてエンジニアにはただ技術を磨くだけではないキャリアパスがあると知ったんです。同時に、良いプロダクトをグロースするには技術領域以外にも視野を広げて、とことん向き合うことが必要だと痛感しました。

私は運良く、思考が切り替わるターニングポイントを経験して今の考えにたどり着きましたが、全てのエンジニアに私と同じような体験をしてもらうのは難しいです。だからこそ、多くの人に『周辺領域を担えるエンジニアが重宝される』ことを感じてもらえるように、WAmazingのメンバーにはいつも「もっとはみ出していこう」と声をかけていますし、インタビューを掲載いただいているメディアでも、それを伝え続けています。

──技術以外の周辺領域として、𠮷野さんがおすすめするスキルはありますか?

𠮷野:話す能力を磨くことをおすすめします。プレゼンでは当然、言葉で伝える力が求められますし、相手に何かをお願いしたい時のささいなコミュニケーションにも、会話力が必要です。人と人との相対はロジックではないため、いかに相手にアプローチするかは、知識だけあってもうまくいかないものです。

私自身の話す能力が磨かれたのは、ヤフー時代に書いたテックブログがきっかけでした。それまで物書きは全くの未経験で、最初は自分の思い通りにまとめられず苦戦しました。ですが何回もアウトプットして周囲からフィードバックをもらうにつれて、文章の起承転結や構成の組み立て能力が鍛えられていきました。そして文章を書く能力が、会話の場面でも自然に活きてきて、論理的なアプローチができるようになったんです。

──実践的な内容ですね。最後に、周辺領域のスキルを身に着けたいエンジニアにメッセージはありますか。

𠮷野:周辺領域を担えるエンジニアとして活躍したいならば、スタートアップはぴったりな環境です。少人数だからこそ色々な役割をこなさなければならないため、おのずと周辺領域に関わる場面に直面します。その状況をチャンスと捉えて動けるエンジニアの成長を後押しするフィールドが、スタートアップにはあります。

──𠮷野さん、ありがとうございました!WAmazingのさらなる事業成長を楽しみにしています。


インタビューご協力:WAmazing株式会社

執筆:近藤ゆうこ

取材・編集:フォースタートアップス エンジニアプロデュースチーム

取材場所:STARTUP STATION


この記事が参加している募集