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【SmartHR 齋藤氏】決め手は「ユーザー目線」。顧客価値を最大化するプロダクト開発への挑戦

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。

株式会社SmartHR(以下、SmartHR)は、あらゆる労務手続きを自動化、ペーパーレスで管理することができるクラウド人事労務ソフト『SmartHR』を提供する会社です。「well-working」をミッションに掲げ、これまでに多くの人事労務分野の非合理を解消してきました。働くすべての人を支えるプラットフォームを目指し、関連サービスの開発も進んでいます。2021年6月には累計資金調達金額は約238億円を突破し、想定評価額は1,700億円を超えるなど、社会からの期待も大きいスタートアップです。

今回お話を伺うのは、その中核機能の開発を担う齋藤 諒一氏。現在、プロダクトエンジニアグループにて活躍される齋藤氏に、toCからtoB向けサービスへの転身の背景やレイターステージの開発組織の面白さなどをお話いただきました。


齋藤 諒一氏
2006年都内の受託開発会社へ入社。PC向け写真管理ツールのライブラリ開発を経て、2011年よりバックエンドをメインとしたWeb開発へ転身。新規サービスの立ち上げや既存サービスの機能拡張を行いつつ、エンジニア組織のマネジメントを担当。その他、各種ツールの導入推進やレビューフローの整備、スクラム開発の導入等も実施。
2018年より動画配信プラットフォームを運営するスタートアップへ入社。バックエンドの開発を軸にしつつ、ユーザーが求めている価値や体験を提供することを第一に考えエンジニアリングでできる範囲のことはもちろんそれ以外の分野にも積極的に取り組んだ。2021年7月にSmartHR入社。


肩書より、世の中へ早く大きくインパクトを届けられる環境を

−−これまでの経歴を教えてください。
 
齋藤:2006年に受託開発の会社に入社しエンジニアとしてのキャリアをスタートしました。入社後3、4年はデジタルカメラのアプリを開発し、その後WEBサービスの部署に移りました。その後は動画配信プラットフォームを運営するスタートアップに入社し、エンジニアのマネジメントに従事しました。そして2021年からSmartHRで働いています。
 
−−現在はどのようなお仕事をなさっていますか。
 
齋藤:プラットフォーム事業に所属し、SmartHRの顧客向けの機能ではなく、サービス全体を支えるAPIや認証系機能の開発、並びにサードパーティー機能を開発ベンダーが作りやすいような基盤作りをしています。
 
−−1社目の受託会社から、前職へ転職した経緯や理由を教えていただけますか。
 
齋藤:最初の会社では受託開発を行っていたため、直接ユーザーに届く様なサービスを作りたいと思いました。エンタメ系に関わりたいと思い、ゲーム系や音楽系の会社も見ていましたが、「動画配信」という尖った領域に興味を持ちました。動画は扱うデータの容量が大きいので、これが出来たら他のWEBサービスの比ではない力がつくだろうと考えました。実際に予約サイトの開発とは異なる学びを得ることが出来ました。

また「プレイヤーでありマネジメントも出来る」というこれまでの経験が活きるのかなと思いました。スタートアップは自分次第のところがあって、余白が大きく、自分が頑張ることでプロダクトや組織の未来が変えられそうという点に魅力を感じました。 
 
−−SmartHRへ興味を持ったきっかけは何ですか?
 
齋藤:toC向けのサービスは楽しいですし、華やかなのですが、リーチできる顧客数が限定的だと感じたのです。数百万人ユーザーがいたとしても、日本全体の数%、それ以外の人達にリーチするのは難しい。しかし、B向けのサービスはより多くの人にリーチできる可能性があり、多くの方に価値を届けられるのではないかと思いました。
 
−−少人数のスタートアップのCTOなど、より裁量権の大きい肩書も狙えるご経験をされた中、なぜSmartHRを選ばれたのですか。 

齋藤:先程と同じく、大きな価値を届けられるかで選びました。
自分がどんな役割でそれを成し遂げるかより、最も早く大きく届けることができる会社がどこかと考えたんです。
SmartHRはすでに拡大期に入っており、早く市場に価値が届けられる可能性がある上、狙うとするエンドーユーザーは労働人口6,000万人。日本の人口の半分に届けられる可能性のある事業はとてもやりがいがあり、社会貢献ができると考えました。

また、働きやすさも決め手の1つになりました。転職活動時、どの会社も理念や価値観を話してくれましたが、一番共感出来たのがSmartHRでした。「自律駆動」という価値観、全体としての強みが自分の考え方とマッチしているなと。
 
SmartHRは基本的には現場でどんどん意思決定して行こうという、主体性の高いチームです。「新しいプロダクトを作ろう」と言ってすぐに試作をすることもあります。
私がSmartHRに入って最初に作ったのが、通勤費を計算するツールです。入社1ヶ月の時に技術検証目的でプロトタイプを作ってみたのですが、技術的にも実現可能であることと、ユーザーニーズもありそうだということで、本格的に開発を進めてそのままリリースに至りました。このツールを導入してくださる顧客も多く、売上に繋げることができました。自分の作ったものがダイレクトに顧客に使ってもらえて、売上に直結するという体験が楽しかったです。

 −−実際に働いて感じるSmartHRの魅力を教えてください。
 
齋藤:役割がはっきりしているようでしていない所です。エンジニアでありながら、プロダクトマネジメントに近い役割を担っている人もいる。作る事に専念することもできますし、手を挙げればやりたいことができるのが魅力です。


マネジメント・開発に共通。「ユーザー目線で考える」ことの大切さ

──ここからは、齋藤さんの仕事に対する考え方を伺います。エンジニアとして大切にしていることはありますか?
 
齋藤:ユーザーの視点から考えることです。例えば、データベースの構造通りに作ると使い勝手が悪くなってしまうようなケースもあるので、ユーザーがどう使いたいか、使いやすいかを重視しています。
 
そのためにユーザーヒアリングはよく行っていて、リアルな声を聞く様にしています。人事労務の領域なので、自分では分からないことが多いんですよね。
 
──toB向けと、toC向けサービスでの開発には違いがありますか?

齋藤: 課題の見えやすさが大きな違いだと感じます。
toB向けは、「こういうことに困っています」という課題があって解決したい事象がある。toC向けは課題があるわけではないので、考え方としてはtoC向けのほうが難しいかもしれません。完全にユーザーのインサイトを仮説で考え、当たった、外れたかは使用状況で判明しますからね。
 
──現職や前職でもマネジメントをされていると思いますが、齋藤さんが軸として持っている「哲学」を教えて下さい 。

齋藤:ピープルマネジメントでは、向き合う方にとってベストな選択が出来る手助けをすることを重視しています。

特に最初の会社では新卒で入社したメンバーばかりのチームを率いていたので、どうしたら長く活躍してくれるだろうか、というのは常に考えていたんですね。その中で自分が出した結論が「ここで活躍してくれることにこだわらず、その人にとってベストな選択が出来る手助けをすること」だと思ったんです。そこからはメンバーが仕事に何を求めているのか。お金なのか、仕事自体が生きがいなのかということを考える様にしています。
 
業務上でも、メンバーの人生においてプラスになる依頼の仕方を考えていて、そこを一番重視しています。
 
──価値観のすり合わせを重視されているのですね。SmartHRさんはフルリモート体制だそうですが、メンバー理解のために工夫していることはありますか?
 
齋藤:開発部署ごとに様々な工夫をしています。月に一回集まってワイワイと開発する部署もありますが、僕の部署は住まいが遠い方がいて集合する機会が少ないので、オンラインでも顔を見てコミュニケーションをとることを意識しています。オンライン会議で必ずカメラをONにしていますし、ちょっとした疑問も相談できる時間などもとっていますね。部署内にエンジニア、PM、営業がいるので、コミュニケーションを小まめにとることで、今どんなことをチームで進めているのかお互いの理解も深まるなと。ただし、オンラインでは立ち話レベルのカジュアルな雑談をすることは難しいので、それが今の課題です。

──ピープルマネジメントでも開発でも「ユーザー視点」を大切にされていると感じました。そういった考えに至ったご経験などはあったのですか。
齋藤:開発に関しては、最初の受託会社での経験が大きかったと思います。最初に関わっていたのはデジタルカメラ用のアプリだったのですが、もちろんアプリのためにカメラを買う人はいないのでユーザーからの反応が皆無だったんです。その後Webサービスの開発部門に移り、ユーザーの反応がダイレクトに返ってくる楽しさを覚えました。その楽しさを追求していった結果、どうせやるならユーザーに広く受け入れられるものにしたいと思うようになりました。

 

スタートアップには誰かの作ったルールはない。試行錯誤した経験こそが資産

 ──様々なフェーズの会社を経験してきて、スタートアップだからこそ積める経験はあると思いますか?
 
齋藤:より大きな裁量をもって動けることですね。良い意味で整備されていないので、自分で考えて動かなければいけない。誰かが作ったルールの中で動いているだけでは身に付かないこともたくさんあると思います。言語やフレームワークは流行り廃りがあり、企業によっても使用しているものが違うので汎用的なスキルではありません。しかし、開発する中で試行錯誤した経験はどこにいっても生きる。その経験を積みやすいのが、スタートアップだと思います。

──直近は、テックリードやエンジニアリングマネージャー(以下、EM)など、エンジニアのキャリアの幅が広がっているように感じます。それぞれ、どのような経験が必要だと思いますか?
 
齋藤:テックリードは技術に明るくいてほしいので、業務でさわらなくても技術を知る必要があります。

EMに求められるピープルマネジメントについては、実践して得られる知識のほか、マネジメントに関する本など、書籍から学ぶこともあります。読んで、実践しても、本の通りには中々いきませんけどね(笑)。また、技術についても最低限知っておく必要があります。マネジメントする人が技術について知らないと、良い悪いの判断もつかないし、支持されないですよね。

──SmartHRに入社されて一年半が経っていますが、今後やっていきたいことはありますか?
 
齋藤:入社したときと変わらず、自分がサービスを作って社会により良い影響を与えることを重視していきたいです。SmartHRは人事労務領域が使用するツールからはじまり、プラットフォーム事業はその可能性を広げていくサービスだと思うので、この領域をもっと大きくしていきたいと思っています。
具体的には、SmartHR上にある従業員データを使用し、もっとできることを増やしていこうと考えています。従業員がいたら、当然勤怠や定期健康診断の管理が必要になりますし、最近ではストレスチェックの義務化なども始まりました。これ以外にもやらなければならないバックオフィスの業務は山ほどあります。これらの多様なニーズも全て解決したいと思ってはいるのですが、全て自社開発をするには限界がありますので他社システムと連携によって、スピーディーに課題を解決していきたいと思っています。
実際向き合ってみると、世の中にはこんな業務があったのか、こんなサービスがあったのか、と新たな発見ばかりで、これがSmartHRと繋がって機能するようになったらどんなに便利だろうか、と考えています。
 
──スタートアップに挑戦したいものの、漠然と不安に感じてる方も多いと思います。そんな方にアドバイスをお願いします。
 
齋藤:未来のキャリアを想像することが重要だと思います。
実は、僕も転職時に妻のご両親から、「聞いたことない会社だけど大丈夫?」と言われたこともあります。
受託企業でも開発の専門性を身に着けていれば、スタートアップに入っても言語が違っても活躍できます。思っているよりも怖くない、ハードルは高くないと思います。自分のできることを広げてくれる場所でもあります。エンジニアを10年、20年続けていくのであれば、自分たちで考えたものを作っていくことが成長につながるのでは無いかと思います。
 

──背中を押す言葉をありがとうございました!今後のSmartHRさんのさらなる発展を楽しみにしております!


インタビューご協力: 株式会社SmartHR

執筆:中村梢

取材・編集:for Startups エンジニアプロデュースチーム