逃亡者?あの有馬記念を出場辞退したウマ娘たち/ゆっくりURAウマ娘解説チャンネル

ゆっくり霊夢だぜ。

ゆっくり魔理沙だよ。


霊夢、今時そんなにテレビに齧り付いて、一体何を見てるんだ?

あ、魔理沙。今ね、昔の有馬記念の、ビデオを見ていたのよ。

......ビデオ?HDDレコーダーじゃなくてか?

それはそうなんだけど、ついついビデオって言っちゃうのよね。中の人、昭和生まれだからさ。勘弁してあげて?

相変わらず、時代に取り残されっぷりが酷いな。それはそうと。何年前の有馬記念なんだ?

ほら、シンボリルドルフとハルウララが最初に戦った時のヤツよ。

ああ、アレか!この動画でもお馴染みのやつだな。

私、あの時はそんなにウマ娘に興味なかったんだけど、あの有馬記念をたまたま観た時からどハマりしちゃって。今でもこうして見返してるのよね。

実は私もなんだぜ。いろいろ掘り下げるところが多くて面白いよな。

そうだったの?嬉しいこと言ってくれるじゃない!私、この時からハルウララのことをいろいろ調べたんだけど、めちゃくちゃ苦労人なのよね。だけど、そんなことを表情にも出さず、毎日毎日元気いっぱい走り続けて、すごく偉いと思うわ。

そうなんだぜ。ハルウララはダートをずっと走り続けていた訳だが、トレーニングにトレーニングを重ねて芝に転向し、ついには有馬記念に出走できるほどの成長を遂げた、もの凄いウマ娘なんだぜ。

そうよね?そうやって彼女の事を知れば知るほど、またこの有馬記念の映像を見たくなるのよ。そしてついつい感情移入して、毎回泣けてきちゃうの。うるうる。

うるうるはさておいて、霊夢よ。

なんだってさ。

この、夢のオールスター戦とまで呼ばれた有馬記念なんだが、他の年度と比べた時、ほんの少しの違和感を感じないか?

違和感?......わからないわ。魔理沙には何か違和感があるの?

違和感というか、不自然というか、この有馬記念を特別なものに仕立てている要素の一つではあるな。

......?何かしら?

出走ウマ娘の人数が、妙に少ないとは思わないか?

あっ!そう言われてみればそうよね。去年や一昨年の有馬記念は、確か出走16人だったもん。

そうなんだぜ。有馬記念の最大出走可能人数は16人なんだが、この有馬記念に出走したのは13人なんだ。正式な選出は14人だったがな。

キングヘイローが直前で怪我しちゃったもんね。でも、何で少なくなっちゃったの?

じゃあ今日は、この有馬記念の直前に展開された、出走参加、及び辞退についての幾つかのドラマを紹介するぜ。

楽しみだわ!レースも一緒に見ましょうね!


それじゃあ......


ゆっくりしていってね!
ゆっくりしていってね!


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1.そもそも有馬記念の出走ウマ娘は、どうやって決められている?


まずは魔理沙よ。有馬記念という重賞について、少し復習してみるとしようぜ。

年末に中山競馬場で開催される、グランプリレースよね?その一年の集大成となるような、とびきりビッグな重賞よ!

ふむふむ、グランプリレースの意味合いについては知っているか?

もちろんよ!グランプリレースっていうのは、ファン投票で出走ウマ娘が決められるレースの事よ。この投票だけでも毎回お祭りみたいに盛り上がるのよね!

確かにそうだな。この有馬記念の他だと、宝塚記念なんかが同じシステムを採用しているぜ。また中央だけでなく、地方の一部のレースでも、同じようなファン投票式のレースが設けられているぜ。

そうなの?

ああ。ばんえい競走のばんえいグランプリなんかは、割と有名な方だと思うぜ。

ばんえい!なんか凄そう!一度でいいからから生で見てみたいわ!

ファン投票というシステム上、それまでのレースの成績や、勝利期待値だけに左右されず、ファンからの純粋な人気で出走ウマ娘が決まるから、いざ蓋を開けてみると思いがけないメンバーになっていたりして、面白いんだぜ。

確かにそうよね。あまりにも人気がありすぎて、距離適正を完全に度外視されてしまった参加ウマ娘もなんかもいるわ。ちょっと気の毒な気もするけど、それでもファンの期待を背負って出走する姿には、私、胸を打たれちゃうのよね。

それでは魔理沙よ。その、有馬記念におけるファン投票以外にも、実は出走枠が存在するのを知っているか?

え?全員がファン投票で決まるんじゃないの?

違うんだぜ。有馬記念は、完全にファン投票の結果に従って上から順番に16人が決定されるわけじゃないんだ。実のところ、人気投票で出場できるのは10人なんだ。

じゅ、10人?少ないわ!

それ以外は、URAの選考委員会が決めているんだぜ。

私にとっては新事実だわ。一体どんなふうに決められているの?

まずは『URA推薦枠』だ。

推薦枠?

そうなんだぜ。これはステップ競走に指定されているG1、G2はもちろん、その年に素晴らしい成績を残しているウマ娘に対して、URAが出走を打診し、確保される出走枠だ。この有馬記念で言えば、オグリキャップなんかは、そっちの枠なんだぜ。

そうなの?だって、2番人気って......

ああ。当時の2番人気という発表を霊夢は覚えているのかもしれないが、おそらくそれは当日の人気の事だ。他にもシンボリルドルフなんかもその枠と考えて間違いないと思うぜ。

なるほど。前年度覇者と七冠王者だもんね。

あと、海外から招待されているウマ娘もいるが、これは『外国枠』と呼ばれているぜ。もっとも、相手方のレースプランと折り合いがつかなくて、辞退されてしまうケースがほとんどだな。その出走枠は、最大で6人もいるし、相手がOKさえすれば、優先的に出走出来るんだぜ。

6人?けっこう多くない?

確かにな。だが、さっきも言ったように、辞退されてしまうケースが多いんだ。実際は海外からの参加ウマ娘の人数は、毎回0人なんだ。

なるほどね。どうりで見た事ないはずだわ。

他にも、地方所属のまま有馬記念に参加するウマ娘もいるぜ。

え?そんな娘いたの?

その前例となるウマ娘がコスモバルクだ。彼女は凄かったんだ。北海道所属のままで中央の重賞を3つも制覇し、クラシック三冠レースにも全て参戦。有馬記念に至っては、実に6年にも渡って連続出走したんだぜ。

6年!凄すぎる!

まあ、後年の成績は想像に任せるが、それでも全国のファンに支持され続けた、素晴らしいウマ娘なんだぜ。

ふうん。いろんなドラマがあるのね!

では霊夢よ。ここで聞いておくが、お前の推しウマ娘であるハルウララはどうだった?

え?彼女は人気投票枠のはずよ?マックイーンに得票数は一桁差に迫り、ブライアンを上回る人気を集めたって、当時話題になってたわ。

そうだぜ。彼女は、投票枠なんだ。それでは当時の人気投票枠、その10人と、当時の推薦枠を振り返ってみるとするぜ。

人気投票枠(人気順)
3.メジロマックイーン
4.ハルウララ
5.ナリタブライアン
7.ゴールドシップ
8.ウォッカ
10.アグネスタキオン
11.マンハッタンカフェ
12.ツインターボ
13.キングヘイロー/不出走
14.ダイワスカーレット

推薦枠
シンボリルドルフ
オグリキャップ
トウカイテイオー
ミスターシービー

そ、錚々たるメンバーね。

だな。このメンバーは2度と揃わないだろうし、揃ったとしても再び同じような闘いにはならないだろうと多くのファンに語られているぜ。数ある有馬記念の中でも、珠玉のメンバーと言えるんだぜ。

ところどころ、数字が抜けているのはどうしたの?

それはファン投票で入選はしたものの、出走を辞退したウマ娘の痕跡だな。その分だけ繰り上がり当選しているから、数字が14まであるだろう?それもそういう事なんだ。

え?そうなの?なんか勿体なくない?だって1番人気と2番人気がいないなんて?一体誰だったんだろう?

抜けているのは1と2と6と9だな。ではここから先は、その枠に収まっていたはずのウマ娘について語っていくぜ。

お願いするわ。

ああ任せろ。だがこれらについては推測の域を出ない。しかも私自身の主観による推測だ。その点をよく理解しておいてくれよな。

了解したわ。

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2.幻の1番人気、オルフェーヴル

1番人気となっていたのは、オルフェーヴルだ。

金色の暴君!?

そうだぜ。よく知っているな。

知ってるも何も、超・大御所じゃない!大御所っていうか、ぶっちゃけ中央の番長でしょ!?

ああその通りだぜ。生来とさえ言われたヤンキー気質で、デビューから引退まで暴れに暴れまくった、正真正銘の番長だ。

番長といえばオルフェーヴル、オルフェーヴルといえば番長よね。

今ではトレーナーに転身し、多くのG1レーサーを輩出して高い評価を受けている彼女だが、暴君という二つ名だけは、今でも現役なんだぜ。

コ、コンプライアンス的に大丈夫なの?

そんな彼女なんだが、もちろん当時はバリバリの現役G1レーサーだった。有馬記念での姿を是非見てみたいというファンの声は高かくて当然。第◎○回では見事に優勝しているし、その他様々な重賞を制している。『あの走りをもう一度』というファンの願いが多いというのも、ある意味当然なんだぜ。

でも、何で出なかったの?やっぱり暴君だから、何か機嫌が悪くなるようなことがあったのかしら?

違うんだぜ。彼女が出走を辞退した理由は、ズバリ体調面の不備だ。

そうなの?

ああ。実は、この年の秋に彼女は凱旋門賞に挑戦しているんだが、その後、体調を上手く整えることが出来なかったんだ。

ふむふむ。

それにもかかわらず、帰国後すぐにジャパンカップに出走する為、彼女はトレーニングを開始する。しかし凱旋門賞での疲労は抜けきらず、成果はなかなか見られない。出走までの日数も減っていく中、彼女は更にトレーニングを上乗せし、ジャパンカップに望んだ。そこで更に無理がかかったのかも知れない。

心配ね。どうなっちゃったの?

拭えない不安を押し切るように出場したジャパンカップであったが、彼女は無念にも2着に終わったぜ。

2着?それでも充分強いわよ!?

確かにそうだな。だが、その代償は大きかった。彼女は有馬記念までに体調を整えることがもはや絶望的になってしまい、出走を辞退したんだぜ。

そうだったんだ。なんか可哀想ね。

当時の彼女のトレーナーも、フランスを発つ日程をあと1週間も遅らせて、完全に疲労を解消することが出来ていたら......と溢していたらしいぜ。

暴君とはいえ、人気ウマ娘の哀しい宿命よね。

うーん、そうなのかもしれないな。


3.幻の2番人気、キンイロリョテイ

お次の番だぜ。

2番人気ね。誰だったの?

キンイロリョテイだ。

こ、これまたどエラいウマ娘の名前が上がったわね。

ちょっと凄いよな。

一応聞いておくけど、本当なの?

本当なんだぜ。まあ、霊夢がその事実を受け入れ難く捉えているのも、私には充分理解できるぞ。

オルフェーヴルとキンイロリョテイがターフでかち合ったりなんかしら......ダメよ!その瞬間から、中山競馬場の名前がサザンクロスに変わってしまうわ!

ジャンプ脳の霊夢よ。それはない。それはないが、お前は一つ忘れていやしないか?

な、何を?

この2人が向かうターフには、既にゴールドシップが存在しているっていう事をだよ!

あ〜っ!!それはもう、日本の終わり、どころの騒ぎじゃないわ!もはや完全なる宇宙の終わりよ!次元の秩序が破壊されてしまうわよ!

とまあ、そんな中2病ガンギマリの心配をしてしまうほどに、キンイロリョテイがぶっ壊れたウマ娘であるという事は、紛れもない事実だ。彼女も今となっては引退しているが、現役生活中は様々な逸話、いや、都市伝説を残したウマ娘だからな。

ひぇ〜。ど、どんな?

そうだな。記録にあるものだと、並走練習相手との喧嘩は日常茶飯事。レース中にも蹴った殴った斜行したのクレームは、星の数ほどに及ぶ。トレーナーには気の休まる暇も前歯もない。トレーニングジムの中では高価な機材を数度も破壊。そこを出禁になってからは、もっぱらストリートで体を鍛え上げたという噂まであるんだぜ。

怖すぎる!

とにかく王様気質だったらしい。自分の方が強いんだ、自分の方が偉いんだという感情を、目に入る者全てに見せつけていったという、そんなウマ娘だぜ。

トレーナーさんの胃袋が心配だわ。私なんかじゃ、とても太刀打ち出来そうにない......

当たり前の事を言うな霊夢よ。お前なんかただのまんじゅうなんだから、視界に入った瞬間に頭から齧られているに違いないぜ。

やめてぇ〜!

そんなハリケーンのような性格をした彼女なんだが、実は、非常に遅咲きのG1レーサーとしても有名なんだ。

そうなの?

こう言っては何だが、彼女は彼女らしからぬ連敗記録を持っている。聞いて驚け何と28連敗だ。

ええっ!?

まあハルウララに比べたら1/4にも満たないし、それ以上の記録の持ち主なんていくらでもいるが、彼女のその後の成績から考えると、ちょっと意外だよな。

そうね。何しろ日本で初代となる海外G1を制したレーサーですもんね。

ドバイ・シーマクラシックだな。あれは全ての日本ウマ娘に夢を与えてくれた勝利だったぜ。何しろただ夢を見せてくれただけでなく、現実にしてしまったんだからな。

あのレースの動画も、ついつい何回も見てしまうわね。

うんうん。彼女が日本ウマ娘を代表して、世界に羽ばたいた瞬間なんだよな。

その後も香港ヴァーズも制覇して、大団円を迎えての引退となったのよね。

生涯2度の凱旋門賞でも、双方とも2着。そしてたったの2秒間だけかも知れないが、彼女は世界一だった。それだけでも素晴らしい功績なんだぜ。

でも、彼女はどうして、あの有馬記念には出走しなかったの?

そこなんだぜ。実は、はっきりした理由は明らかになっていないんだ。

そうなの?

そうなんだ。今回の動画を作るにあたって結構な数の資料を探してみたんだが、いずれもぼやっとしていて、とても発表できるような情報ではなかったんだ。

逆に気になるわね。

それでもあえて推測するとしたなら、彼女は、ハルウララと自分が同列に置かれることに嫌気が差したんじゃないか?というような答えが見つかるぜ。

嫌気が?どういうこと?

さっき、28連敗の話はしたよな?キンイロリョテイは、最初から強かったわけじゃない。その28連敗という時間の中で、じわじわと人気を獲得していったんだ。

そうなの?なんか、ひどく身近に感じる話よね。

霊夢がそう思うのも無理はないぜ。この盛り上がり方は、ハルウララと重なる人気の集まり方なんだ。

そうよ!そうよね!ハルウララとキンイロリョテイに共通点があったなんて、驚きだわ!

シルバー&ブロンズコレクターと呼ばれ、善戦は見せるもののなかなか勝てず、負けの数だけが重なる日々を彼女は過ごしていた。しかし、その記録を紐解いてみれば、その28連敗中、掲示板に入ったレースが28戦中22回。2着は10回。そしてその2着の内の2回がG1なんだ。さらに付け加えるなら、その28戦は全て重賞なんだぜ。

凄すぎる!

日本人というのは、とにかく宦官贔屓なんだ。負けている方を応援したいと思う人種なんだ。もちろんファンだって、彼女の素行の悪さは知っているさ。しかし、どんなレースも常に2着か3着という結果が、レースを繰り返すうちに、彼女の最大の魅力として捉えられるようになっていったんだ。

うーん。なんだか、ハルウララと似てるって思ったばかりだけど、よく聞いたら全然違うわね。

そうなんだ。ハルウララとの完全な違いはそこなんだぜ。キンイロリョテイの場合、その魅力となったのは、頑張る姿だけじゃないんだ。レース結果の上に成り立つ、あと一歩の歯痒さだ。ハルウララのように負けても負けても何度でも立ち上がる姿は似ているが、その結果と過程は、全く異なるんだぜ。

そうよね。

だから、ハルウララが113連敗から抜け出して、その後破竹の勢いで連勝を遂げた時、ダートのキンイロリョテイという表現を、ある雑誌記者が使用したんだが、その表現に当のキンイロリョテイは、烈火の如く怒り狂ったんだ。

そうなの?

ああ。それ以降、キンイロリョテイはハルウララを毛嫌いするようになったんだ。彼女にとって必要なステップレースであっても、ハルウララが出るとわかると出場を回避した。ハルウララが既にオールラウンダーとしての頭角を表し始めていた当時、その行為は当然、キンイロリョテイの進路を狭めた。しかし彼女は、頑なにハルウララを拒み続けたんだ。そしてそのままキンイロリョテイは引退したんだぜ。2人がゲートを並べる事は、ついに叶わなかったんだ。

そ、そこまで嫌わなくてもいいと思うんだけど?

ああ。私にとってもそれが素直な感想だぜ。しかし、それが彼女のプライドだったんだ。自分よりも下と見た相手と同じ評価を向けられる事が、実に耐え難い屈辱だったんだろうな。

孤高のウマ娘だったのね。

今となっては、彼女が現役生活に後悔を残していない事を、祈るばかりだぜ。


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4.幻の6番人気、ビワハヤヒデ

次は、6番人気を紹介するぜ。

誰だったの?

ビワハヤヒデだ。

まさかのお姉ちゃん!

そうだ。ビワハヤヒデは、その絶対的な安定感と緻密な計算でレースを盛り上げた、ウマ娘界の知将だぜ。

あのメガネの奥の瞳で、一度見つめて頂きたいものだわ。うふ。

お前なんか、ただのまんじゅうにしか見えないぜ。

アンタもまんじゅうでしょうが!

では霊夢よ。ビワハヤヒデといえば、何だ?

菊花賞、春天、宝塚記念よ!

お、流石だな。しかしビワハヤヒデについて最も評価されるべきは、その安定した成績だ。G2、G3も含めてだが、デビュー以来15連対という記録は、もっともっと評価されるべきなんだぜ。

15回連組で1位か2位だったってことじゃない!しかもデビュー戦から数えて!?控えめに言ってヤバくない?

ヤバいんだぜ。妹であるナリタブライアンと比較されがちで、確かに、ナリタブライアンのような派手さやドラマには一歩及ばない感は否めないが、一ウマ娘の成績として比べた場合、決してヒケを取るようなものじゃないんだ。何しろ安定感が抜群なんだ。第四コーナーから末脚を見せれば、会場のファン全員に「来たっ!」と思わせてしまうくらいの、強い説得力があったんだぜ。

説得力!レーサーとして素晴らしい素質ね!

そうなんだぜ。ウマ娘のレーサーはアスリートと同時に、エンターテイナーとしての素質も要求される。ビワハヤヒデは決して派手なレーサーではなかったが、その巧みなレース運びと説得力のある脚で、玄人たちさえ楽しませてくれたんだぜ。

おおーっ!

さて、そんなビワハヤヒデなんだが......

どうして彼女は出走しなかったの?

それには少し、複雑な事情がある。

?何なの?

うん。それを説明する前に、出走の全メンバーをもう一度確認してもらいたいぜ。

どれどれ?

人気投票枠(人気順)
3.メジロマックイーン
4.ハルウララ
5.ナリタブライアン
7.ゴールドシップ
8.ウォッカ
10.アグネスタキオン
11.マンハッタンカフェ
12.ツインターボ
13.キングヘイロー/不出走
14.ダイワスカーレット

推薦枠
シンボリルドルフ
トウカイテイオー
オグリキャップ
ミスターシービー

以上の14名だ。では、彼女たちの関係性に、もう一度注目してくれないか?

えっ?関係性?

まずは、推薦枠から考えてみてくれ。シンボリルドルフを中心にしてくれて構わないぜ。

了解よ。うーん、オグリキャップは、前回優勝者なのよね。ディフェンディングチャンピオンとして、推薦枠にいるのは当然よね。シンボリルドルフとの対決は楽しみだわ。トウカイテイオーについては、うーん......彼女は、シンボリルドルフの強烈な信奉者よね。いつかシンボリルドルフみたいなウマ娘になりたいっていうのが、彼女の口癖だったわ。成績だけでは示せない、直接的な皇帝越えのチャンスだもんね。シンボリルドルフとの対決はやっぱり気になるわよね。ミスターシービーといえば、彼女も三冠ウマ娘じゃない?同期対決としても目が離せないわよ!

なるほど。ちゃんと見るとこ見てるな。では、人気投票枠についてはどうだ?ここではシンボリルドルフを外した目線でも構わないぜ。

まず......シンボリルドルフとナリタブライアンの新旧三冠対決でしょ?アグネスタキオンも幻の三冠ウマ娘なんて名前で呼ばれてたし、実際はどうなのか、気になっちゃうわよね。ゴールドシップとマックィーンっていう組み合わせも、ついにという感じで楽しみだわ。ツインターボだって打倒トウカイテイオーを連呼してきたわけだから……え?ちょっと待って?今何個出た?もっとあるんじゃない?

ああ。まだまだあるぜ。ダイワスカーレットとウォッカのライバル対決、ダイワスカーレットとアグネスタキオンの先輩後輩対決、アグネスタキオンとマンハッタンカフェのライバル対決、マックイーンとトウカイテイオーの友情対決も、ずいぶんと待たされたカードだな。

これは......夢のオールスター戦と呼ばれる理由がわかったような気がするわ。もうお腹いっぱい夢いっぱいよ。

その通りなんだぜ。ビワハヤヒデがあの有馬記念に出場していたら、レースの内容に、ナリタブライアンとの姉妹対決という更に非常に強い要素が加えられる事になる。彼女は、それを回避する為に出走を辞退したんだぜ。

つまり?

大人の事情ってやつだぜ。

......つ、つまり?

わからないか?この有馬記念にはシンボリルドルフが出走をする。それだけでも超満員札止めの案件だというのに、それ以外のドル箱級カードが、一局集中してしまっているんだ。

た、確かにそうだけど。

だろう?平たく言うと、客を呼べる要素が集まりすぎているんだ。この日一日で消化してしまうにはあまりにも惜しい。それぞれ一戦一戦を、じっくり楽しみたいファンも多いだろう。URA運営委員たちは、そう考えたんだ。そして一つの選択をするぜ。

何なの?まさか……?

彼らは要素を一つ削ることにした。その白羽の矢が立ったのがビワハヤヒデだったんだ。そして、彼女は有馬記念を辞退したんだ。

それって、辞退させられたってことじゃない?なんか可哀想っていうか、そういうのアリなの?

確かにそうだぜ。だが、ビワハヤヒデはそこを理解し、腹に収められるウマ娘だったんだろうな。その時に彼女が経験するはずだったレースが、これから実現していくことを祈るばかりだぜ。

......ねえ魔理沙?私......なんか気づいちゃったんだけど?この推薦枠の、数の少なさ?それに、この全体的な出走ウマ娘の少なさも、まさか......?

......まあ、そういう事なんだぜ。

5.幻の9番人気、アグネスデジタル


いよいよ最後のウマ娘だ。

誰だったの?

アグネスデジタルだぜ。

究極変態乙女!

ヘンタイって言うなw

これは褒め言葉よ!ダート、芝、距離の垣根を超えて、さらには天候にさえ臆することなくレースに立ち向かった、伝説の勇者の立派な称号よ!

そこまで説明してもらえるなら安心だぜ。アグネスデジタルのオールラウンダーぶりは、まさに異端の極みと言える。そもそも距離適性とは、先天的な遺伝に要因する事が多い。だが、アグネスデジタルは驚異的なトレーニング量でそれを克服したんだ。その活躍の場は地方、海外にまで及び、戴冠G1タイトルは6冠と、シンボリルドルフに迫る成績を叩き出しているんだぜ。

前回はまぐれだろう、今回は来ないだろう、つか走れると思ってんのかよ、空気読めや、なんていう評価をことごとく覆えして、結果で外野を呆然とさせたのよ。カッコ良すぎて尊みが過ぎるわ!

レースに対する姿勢は実に神出鬼没、はては無頓着とさえ言われ、「どこにでも首を突っ込んでくる」「まさか、と思う間もなく勝っていく」などなど、幾つもの話題を攫っていった、スーパーウマ娘なんだぜ。

じゃ、何でアグネスデジタルは出走しなかったの?

彼女はな、この有馬記念については、走るんじゃなくて見る方に価値を見出したんだ。

......マジで?

マジなんだぜ。さっきも言ったが、このレースには非常に強い要素がこれでもかとつめこまれている。彼女にしてみれば、垂涎のレースだったんだろうぜ。

ろ、録画じゃダメだったの?

多分、リアルタイムという拘りは、何物にも変え難いものなんだろうな。

え?え?私だって彼女の性格は知っているけど、勿体なくない?

ああ。私だってそう思うぜ。当時のトレーナー達だって、そう思ったんだろう。アグネスデジタルを何度も何度も説得はしているんだ。しかし、彼女は首を横に振るばかり。それどころか『どうしても出ろって言うなら、頭と両手にデジカメ持って走ってやる!ドローも飛ばす!』なんて言うもんだから、周囲もようやく諦めたらしいんだ。

す、凄まじい情念ね。

ここまで来ると、もう苦笑いするしかないんだぜ。

ウィニングライブでは、さぞかし盛り上がってたんでしょうね。

そうなんだぜ。何しろライブ開始から終了まで、一瞬たりとも気を緩めることなく、アゲアゲでオタ芸を披露し続けたんだ。そんな客席での彼女の様子を捉えた動画が、公式公開されたくらいだからな。あまりにも高評価が付いたもんだから、DVDの付録として製品化されてしまったんだぜ。『デジたんは、自らの行為に歓喜した』っていうのが、そのタイトルだぜ。

何そのぶっ飛んだタイトル!逆に欲しい!欲しいわ!逆にね!

6.まとめ

さあ、ここまで例の有馬記念を振り返ってみたが、どうだった?

出走、不出走の裏側には、いろんなドラマがあるのね。すっごく楽しめたわ。

当時、出走を辞退したウマ娘たちについて、逃亡者なんていう烙印を押そうとする輩も多かったが、今回の話を聞いて、どうかそんな感覚を捨てて欲しいものだぜ。人気投票という選出方法は確かに名誉ではあるし、それを蹴るということは、つくづく無礼に思えるかもしれない。でも、各々に細かい事情ががあった上での事なんだ。理解してあげて欲しいんだぜ。

でも魔理沙、この有馬記念については何度も話してもらってるけど、私、まだまだ聞き足りないわ。もっともっと奥深いものがありそうで、今からワクワクしちゃう。

そうだな。あの有馬記念は、本気のシンボリルドルフが久しぶりに走ったという事で話題になることが多いが、そのルドルフを本気にさせたのが、奇跡の駄馬、ハルウララだったという事も忘れてはいけないんだぜ。彼女たちの関係性については、本当に面白いよな。

「ウララ事変」ね!もちろん忘れてないわよ!

ウララ事変については概要欄にリンクを貼っておくので、過去動画を参考にして欲しいぜ。

今回の話が面白いと思ったら、是非チャンネル登録と高評価、よろしくお願いします。

それでは......


まったね〜
まったね〜

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