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病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第7話「睡眠薬」

永遠の課題「不眠症」と睡眠薬の歴史

今回は「睡眠薬」を取り上げてみようと思います。

「王冠に代えても一時の眠りが欲しい」

これはシェークスピアの悲劇の主人公マクベスの言葉ですが、いつの世でも人は不眠に悩まされてきました。

「な~に、一日や二日寝なくても死にやしないよ」

そう言って周りの人は慰める訳ですが、当の本人は気が気ではない。

目が冴えて時計の音が耳につくあの辛さといったら・・・。

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成⼈の30%以上が何らかの不眠症状を有し、6〜10%が不眠症に罹患しているという統計データもあります。

また不眠(特に慢性不眠)は、眠気・倦怠・集中困難・精神運動機能低下・抑うつや不安などを引き起こす結果、長期⽋勤や医療費の増加、⽣産性の低下、産業事故の増加など、様々な人的及び社会的損失をもたらします。  

このように「不眠症」は人類にとって永遠の課題なのです。


【コラム】睡眠薬が「怖い」のに「依存」する歪な国民性

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これから睡眠薬のことをお話していく訳ですが、不眠を生じた場合、先進諸国の中でも断トツにアルコール(寝酒)に頼る率が高い国なのです。不眠で医療機関を受診する人は10人に1人もいません。恐らく国民の中に「睡眠薬は怖い」というイメージが定着しているからだと思いますが、そのくせ、「乱用」の問題は後を絶ちません。歪としか言いようがありません。


1.バルビツール酸系と「睡眠薬自殺」

合成睡眠薬が使われ始めたのは100年以上も前の話。

20世紀の初め、バルビツール酸系の薬が登場して一時代を築き上げました。

尿素とマロン酸が結合した構造のバルビツール酸自体に催眠作用はありませんが、分子構造の一部を水素からエチル基に置換したところ、強力な催眠効果があることがわかったのです。

それ以降、バルビツール酸系は様々なモデルチェンジが行われ、実用化されたものは60種類以上、あらゆるタイプの不眠症に用いられました。

ところがバルビツール酸系は、飲み続けるうちに効き目が悪くなったり(耐性)、止められなくなったり(依存性)、大量に服用して自殺に使用されたりと社会問題化、次第に敬遠されていきました。

※現在では抗けいれん薬や麻酔薬として使用されています。

替わって注目され始めたのが「非バルビツール酸系」でした。


2.非バルビツール酸系と「薬物乱用・催奇形性」

1950年代の半ばより、エチナメート(商品名:バラミン※販売中止)、メプロバメート(商品名:アトラキシン※販売中止)、サリドマイド(商品名:イソミン※販売中止)、メタカロン(商品名:ハイミナール※販売中止)といった非バルビツール酸系と呼ばれる睡眠薬が相次いで登場し、バルビツール酸系に取って代わりました。

しかし、飲むと気持ちが良くなるのが災いして、メタカロンのように若者の間で「睡眠薬遊び」(薬物乱用)が流行ることとなりました。

また、サリドマイドは催奇形性が問題となり、薬害事件として衝撃的に報道されました(現在では多発性骨髄腫の治療薬として復活しています)。

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そんな中、注目を集めたのが、元々は抗不安薬(マイナートランキライザー)として使用されていた「ベンゾジアゼピン系」でした。


3.ベンゾジアゼピン系と「転倒・健忘・せん妄」

抗不安薬(精神安定剤)の中には、ニトラゼパム(商品名:ネルボン・ベンザリン)、フルラゼパム(商品名:ダルメート)といった催眠作用の強いタイプがあり、これらが睡眠薬として転用され始めたのです。

ベンゾジアゼピン系薬は「何十錠飲んでも自殺できない」と言われるほど毒性が低く、習慣性も(既存の薬よりは)低いのが特徴です。

睡眠中の脳波のパターンが自然の状態と似ている点でも好印象を与えたベンゾジアゼピン系は一躍脚光を浴びることとなりました。

しかし、日本が超高齢社会となった2007年頃に転機が訪れました。

それまでは大して問題とならなかった「転倒(とそれによる骨折)」「健忘」「せん妄」などの副作用が問題視されるようになってきたのです。

原因はズバリ「高齢化」です。

人間は加齢に伴い、薬を分解・排出する体の働きが弱まるため、薬が体に蓄積しやすくなる傾向があります。

そのため薬が効き過ぎたり、副作用が出やすくなってしまうのです。

このため、行政は「向精神薬処方の適正化」と称して、多剤処方並びに1年以上の同一用法・用量の継続処方の処方料・処方箋料を減算する一方、薬の種類または1日当たりの用量が減少したものには加算を新設するなど、「脱ベンゾジアゼピン」に躍起です。

「安全性の高さ」がウリだったベンゾジアゼピン系が、今や「推奨されない薬」という真逆のレッテルを貼られることに・・・皮肉なものですね。


【コラム】ベンゾジアゼピン系のダークサイド!?
「脱ベンゾジアゼピン」が叫ばれるもう一つの理由が「犯罪性」です。反社会勢力の資金源に利用され、恥ずかしいことに医療従事者による盗難も後を絶ちませんでした。また、強姦目的で睡眠薬を飲食物に混入する事例が報告され、フルニトラゼパム(商品名:サイレースなど)は混入防止のため、2015年より錠剤が青く着色されています。さて、そのフルニトラゼパムですが、医療上の必要性があっても、アメリカやカナダへの持ち込みが禁止されています。もし見つかった場合は、逮捕されたり、重い刑罰が科せられたりするようです。また、トリアゾラム(商品名:ハルシオン)も、現在のところは持ち込み禁止ではありませんが、アメリカでは麻薬に指定されているので注意が必要です。

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4.新世代の睡眠薬

睡眠薬が最優先にクリアすべき課題は「安全性」に尽きます。しかし、「非ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる睡眠薬(商品名:アモバン、マイスリーなど)もベンゾジアゼピン系と本質的に大差はなく、全く新しい機序の睡眠薬が待望されていました。そんな中、2010年にメラトニン受容体作動薬ラメルテオン(商品名:ロゼレム)、2014年にはオレキシン受容体受容体拮抗薬スボレキサント(商品名:ベルソムラ)が発売され、入院患者を中心に睡眠薬のスタンダードになりつつあります。

【経験者からのアドバイス】
睡眠薬に抵抗感のある患者さんを説得する際、私は下記のようなレトリック(修辞)を用いていました(ま、熟練の技ですな)。

睡眠薬って、どんなイメージを持たれていますか?
何か麻酔薬みたく強制的に眠らせる薬ってイメージがあるかもしれませんが、この薬(ベンゾジアゼピン系)は違います。
いいですか?
どんなに睡眠不足でも、それを上回る刺激があると人は眠れないものです。
一見どうってことない「物音」とか「匂い」とか「温度」とか、空調や布団の「感触」だって、気になり始めたら眠れなくなるものなんです。
刺激は「外的」なものだけとは限りません。
心配事や何かに夢中になると眠れなくなったことって、ありますよね?
「内的」な刺激で不眠になることも多いのです。
この薬(ベンゾジアゼピン系)はそれらの刺激に対する感受性を少しだけ鈍くしてくれる薬なんです。
で、これまで睡眠を妨げてきた刺激が弱まると、それまで溜まっていた睡眠不足が優勢となって眠りに落ち、やがて薬の効果は切れますが、そのまま自然の眠りにバトンタッチ、という訳です。
どうですか?
少なくとも「きつい薬じゃない」ってことは、おわかりいただけましたか?

睡眠不足は翌日に様々な支障を残します。
必ず飲まなければいけない薬ではありませんが、飲むことで翌日が快適に過ごせるのであれば、そちらの方がメリットがあるのではないでしょうか?

のび太睡眠」(1・2・3・グゥ)が得意な私にとって、睡眠薬はほぼ「無用の長物」でしたが、夜勤前にどうしても眠れない時にはお世話になっていました(寝覚めの快適さが素晴らしかった記憶があります)。

残念ながらロゼレムは飲んだことはありませんが、「体内時計」に働き掛け、「寝るべき時間(夜)に眠たくしてくれる薬」というMRさんの説明に驚きを覚えた記憶があります。

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一方、ベルソムラは2回だけ飲んだことがあって、不思議な体験をしました。服用後も気を張っていれば眠たくならないのです。でも、何もやることがなくなって「あ~、もう寝よっか」と思うと段々眠たくなってくるのです。つまり「睡眠 or 覚醒」を自ら選択できる薬。不思議ですよね~。これまたMRさんに聞いた話ですが、もし眠っている間に地震があっても一定以上の刺激が加わればちゃんと起きられるそうです。便利やなぁ。


5.市販薬は「奇々怪々」

一応お断りしておきますが、ここまで紹介した睡眠薬は全て病院で処方してもらわないと入手できないものばかりです。ならば、薬局・薬店で購入できないかというと、ないことはありません。ただし、病院の薬とはかな~り「異質」な薬です(下記の2剤以外は生薬・漢方系の薬があるだけです)。

❶ジフェンヒドラミン塩酸塩(商品名:ドリエル)

私も長年病院薬剤師をやっていますが、2003年にこの薬が発売された時には衝撃を感じずにはいられませんでした。ジフェンヒドラミン塩酸塩といったら、花粉症などのアレルギー疾患に使用される抗ヒスタミン薬です(しかも相当古いタイプの)。確かに副作用として眠気はあります(私なんかこの薬を1回でも飲もうものなら、2~3日は眠気が続きます)。まさかその副作用で眠らせようとするなんて!もちろん、病院では睡眠薬として使用されることはありません。抗コリン作用の副作用(口渇・眼圧上昇・尿閉など)もある訳だし、ん~、何だか納得できませんが、どうしても眠りたいけど、病院にかかる暇がないという若者にはアリなのかな?という見解です。


❷ブロムワレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素
 (商品名:
ウット

これまた病院薬剤師としては仰天の薬です。というのも、ブロムワレリル尿素(別名:ブロモバレリル尿素)という成分は、先述したバルビツール酸系よりも更に前の世代の薬だからです。古いだけではなく、過去に自殺に用いられ、過量服薬や乱用の危険性もあり、「現在でも日本でなぜ用いられているか理解に苦しむ」という専門家のコメントがあるくらいです。一方、アリルイソプロピルアセチル尿素はブロムワレリル尿素とバルビツール酸系の中間のような化学構造で、市販の頭痛薬にも配合されている成分ですが、海外ではもはや用いられていません。そんな古い薬なのに、廃れずに生き残っている理由は・・・やはり売れてるからなのでしょうね(複雑)。

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睡眠薬に関するFAQ(よくある質問)

睡眠薬は、乱用する人もいれば逆に過度に怖がる人もいて両極端な傾向があります。ここでは「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」から抜粋して正しい知識を整理しておこうと思います。

睡眠薬、睡眠導⼊剤、安定剤の違いは何でしょうか?
 本質的な違いはありません。

睡眠導⼊剤と睡眠薬の間に本質的な違いはない。消失半減期が短い睡眠薬は主として⼊眠障害の治療に用いられることが多いため、睡眠導入剤と俗称されることがある。安定剤とは抗不安薬を指し、その大部分は睡眠薬と同じベンゾジアゼピン系作動薬である。催眠作用の強い抗不安薬を睡眠薬代わりに⽤いることに科学的妥当性はない。
【推奨グレードC2】
   
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


睡眠薬はいつ服用すればよいでしょうか?
寝る直前がベストです。

睡眠薬の薬効を最大にする服⽤時刻に関する臨床データはないが、副作用と⾷事摂取の影響をできるだけ回避するためにも、⼣⾷食からある程度時間をおき、就床時刻の直前に服⽤し、服用したら速やかに就床することが望ましいと考えられる。【推奨グレードC1】  
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


睡眠薬は飲酒後何時間空けてから服用したらよいでしょうか?
 飲酒した日には飲まないのが無難です(もち日付が変わってすぐもNG)。 

アルコールと睡眠薬の併用は、副作用の頻度と強度を⾼める可能性があるため、原則禁忌である。 アルコールを代謝した後に睡眠薬を服⽤することは可能であるが、アルコール代謝は⼀般に考えられているよりも長時間を要することに注意すべきである。  
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


睡眠薬を服用した翌朝に運転しても⼤丈夫ですか?
基本的にはお勧めできません。

 睡眠薬を服用した翌朝に⾃動車運転を行うことは推奨できない。睡眠薬を処⽅する際には、運転をしないように適切に指導する必要がある。
【推奨グレードD】
 一⽅で、不眠症⾃体も⽇中の眠気や判断⼒、集中⼒、反射能力の低下を惹起することに留意すべ きである。
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


認知症の不眠や昼夜逆転に睡眠薬は効果があるでしょうか?
十分に有効で、かつ安全な 薬物療法はありません。

認知症の不眠症に対する睡眠薬の有効性は確認されていない。処方する場合には転倒や認知症状の悪化などの副作⽤の発現に絶えず留意が必要である。また、有効性が認められても漫然と服用させず、症状の改善に合わせて適宜減薬もしくは休薬するなど、副作用を低減させるよう⼼がけるべ きである。【推奨グレードC2】  
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


痒み・痛み・頻尿による不眠に睡眠薬を服⽤すべきでしょうか?
原因の治療が優先されますが、一時的な睡眠薬の使用は許容できます。

睡眠薬の使⽤はその原因疾患とそこに横たわる精神的問題点により薬剤選択、期待効果度が異なる。睡眠薬以外の選択肢も考慮に⼊れながら、いずれにしても漫然と使⽤することなく、一定の期間で効果を判定し、副作用に注意を払うべきである。【推奨グレードC1】
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より 


⾼齢者の不眠症にも睡眠薬は効果があるでしょうか?
非ベンゾジゼピン系が無難です。

 ⾼齢者の原発性不眠症に対しては⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬が推奨される。ベンゾジゼピン系睡眠薬は転倒・⾻折リスクを⾼めるため推奨されない。メラトニン受容体作動薬については転倒・⾻骨折リスクに関するデータが乏しく推奨に⾄らなかった。高齢者では睡眠薬による不眠症の改善効果のエフェクトサイズに比較して、相対的に副作用のリスクが高いため、不眠の重症度、基礎疾患の有無や身体的コンディションなどを総合的に勘案して睡眠薬の処方の是非を決定すべきである。 【推奨グレードA】
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より 


睡眠薬を服⽤中に妊娠に気づきました。胎児に影響はないでしょうか?  
主治医よりも「妊娠と薬情報センター」(下記)で確認を。
TEL:03-5494-7845
受付時間:平⽇10:00-12:00、13:00-16:00
ホームページ:http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

特定の薬物が胎児に及ぼす影響に関する臨床データは少なく、情報の解釈も難しい。医師個人が知り得た情報だけで判断を下すことは難しいため、「妊娠と薬情報センター」から情報を得ること が望ましい。
【推奨グレードC1】
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


更年期障害で眠れません。睡眠薬を服用すべきでしょうか?  
⾮ベンゾジアゼピン系(エスゾピクロン・ゾルピデム)が有効です。

更年期障害に伴う不眠に対しては、⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるエスゾピクロン、ゾルピ デムが推奨される。⻑期服⽤時の治療効果と安全性についてはエビデンスが乏しく、慎重に処方す べきである。
【推奨グレードB】

※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


睡眠薬を服⽤しても眠れません。増量すれば効果が出ますか?
基本的に増量はお勧めできません。

臨床常用量を超える睡眠薬の服用は副作用リスクを高めるため絶対に避けるべきである。臨床用量内での増量についても、リスク・ベネフィットバランスを慎重に考慮した上で行うべきである。 睡眠薬の増量の前に、睡眠薬の長期連用による耐性形成や⼆次性不眠症の可能性、代替薬物療法や認知行動療療法の活用などについても検討すべきである。【推奨グレードD】 
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


睡眠薬を服⽤しても眠れません。何種類か組み合わせれば効果が出ますか?
できるだけ併用は避けるべきです。

常⽤量の睡眠薬を服⽤しても効果が不十分な場合に、睡眠薬の多剤併用がより有効であるというエビデンスは無い。副作用リスクを低減するためにも、多剤併⽤はできるだけ避けるべきである。 特に3種類以上のベンゾジアゼピン系ないし非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の併⽤は避けなくてはいけない。
【推奨グレードC2】
代替療法として、メラトニン受容体作動薬や催眠鎮静性抗うつ薬、認知行動療法の使用もしくは併用が選択肢となり得るが、その実施にあたっては症例に応じた⼯夫が必要である。

※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


漢⽅薬やメラトニンも不眠症に効果があるでしょうか?
どちらも効果は限定的でお勧めできません。

不眠症に対するメラトニンの効果は比較的弱く、主たる治療薬として推奨することは難しい。不眠症に対する漢方薬の有効性は確認されておらず、推奨されない。不眠症患者からメラトニン、漢方薬に関する意見を求められた場合には、不眠症の治療効果は限定的もしくは実証されていないことを説明し、慎重に⽤いるように指導する必要がある。【推奨グレードC2】  
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


市販の睡眠薬も不眠症に効果があるでしょうか? 
不眠が⻑引く場合にはお勧めできません。 

ジフェンヒドラミン等の第一世代抗ヒスタミン薬を不眠症(特に慢性不眠症)患者に用いることは推奨されない。短期間の使⽤に際しても、持ち越し効果による眠気や精神運動機能の低下に十分留意するよう説明するべきである。【推奨グレードC2】  
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


睡眠薬を⽌められなくなるのではないか心配です。
短期服用ならば危険性は少ないです。

短期服用時には睡眠薬による依存形成の危険性は少ないが,⾼用量・長期間の服⽤が依存形成リスクを上昇させるので避けるべきである。不眠症状が改善すれば、患者の状態に応じて、頓用、漸減、休薬日を設けるなどの方法がある。症状の推移に対応した治療計画を⽴てることが求められる。
 【推奨グレードB】
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


睡眠薬を服⽤しているとボケますか?
長期服用時には可能性がないとは言えません。

ベンゾジアゼピン系薬物の⻑期服用によって認知機能低下が起こり得るということについて数多くの報告が存在するが、認知症発症のリスクが上昇するかについては相反する結果が報告されている。リスクが存在する場合、数年年〜十数年の長期服⽤時に罹患リスクが1.5倍~3倍程度高まる可能性がある。現時点では、不眠症の高齢患者に睡眠薬を投与する際には、認知機能の評価を適宜実施しながら慎重に投与することが望ましい。認知⾏動療法などの非薬物療法も考慮しつつ、睡眠薬の服用期間、⽤量を最小限にとどめることを⼼がけるべきである。【推奨グレードB】
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


睡眠薬の飲み過ぎで死亡した人がいると聞いて不安です。
死亡に至るのはごくまれです。

ベンゾジアゼピンおよび⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動薬は、常⽤量用いる範囲内において死亡リスクを高める可能性は低い。一方、バルビツール酸系睡眠薬は⾼用量服用により死亡リスクが⾼まる。ただし、ベンゾジアゼピン系睡眠薬であっても呼吸機能の低下した患者(閉塞塞性肺疾患や睡眠関連呼吸障害など)や⼩児に対しては⼗分注意して処方する必要がある。 【推奨グレードA】
※「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より


良質な睡眠を確保するために大切なポイント

定期的な運動  
なるべく定期的に運動しましょう。適度な有酸素運動をすれば寝つきやすくなり、睡眠 が深くなるでしょう。  

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寝室の環境  
快適な就床環境であれば、夜中に目が覚めることは減るでしょう。防音のために絨毯を敷く、ドアを閉める、遮光のためにカーテンを⽤いるなどの対策も⼿助けとなります。また、寝室を快適な温度に保ちましょう。暑過ぎたり寒過ぎたりすると睡眠の妨げとなります。  

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食生活  
規則正しい⾷⽣活を心掛けましょう。空腹のままだと睡眠が妨げられることがあります。睡眠前に軽⾷(特に炭⽔水化物)を摂ると睡眠の助けになることがあります。ただ、脂っこいものや胃もたれする食べ物を就寝前に摂るのは避けましょう。  

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就寝前の水分 ・カフェイン・お酒・タバコ
就寝前に水分を摂り過ぎないようにしましょう。夜中のトイレ回数が減ります(脳梗塞や狭心症など循環器系の持病がある方は主治医の指示に従ってください)。 また、就寝の4時間前にカフェインの⼊った飲料や⾷べ物(例例:日本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど) を摂ると、寝つきにくくなったり、夜中に⽬が覚めやすくなったり、睡眠が浅くなったりします。寝酒も逆効果です。⼀時的に寝つきが良くなるかもしれませんが、夜中に⽬が覚めやすくなり、深い眠りも減ってしまいます。夜は喫煙も避けましょう。ニコチンには精神刺激作用があります。

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寝床での考え事  
昼間の悩みを寝床に持っていかないようにしましょう。問題に取り組んだり、計画を立てたりするのは、翌日にしましょう。不安な状態では寝つくのが難しくなりますし、眠りも浅くなってしまいます。  

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まとめ動画を作ってみました。おさらい用にどうぞ。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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