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急な発熱に対応する漢方

季節のかわり目により体調を崩す方が増えています。それだけではなく、新型コロナウィルスワクチン接種後の副反応で発熱される方もいらっしゃるかと思います。
今回は、急な発熱に対応する漢方についてお伝えします。

発熱時、市販の解熱鎮痛剤を服用される方も多いかと思います。ワクチン接種時にも高熱で辛い際には服用すると良いとされています。
ただ、解熱鎮痛剤は一時的にその辛い症状をなくすという役割であり、数時間後に薬効が切れると再度発熱します。辛い時には我慢せずに服用することも大切ですが、併せて、根本の熱を取り去る漢方のアプローチも考えてみてはいかがでしょうか。

熱をとる生薬、板藍根

漢方の生薬には、熱をとる作用のあるものがいくつかあります。
その代表的なものが「板藍根(ばんらんこん)」。アブラナ科のホソバタイセイという植物の根です。

板藍根

ホソバタイセイ

写真:上から板藍根、ホソバタイセイ

これを煎じて飲むのが「板藍根茶」で、筆者は発熱時にはマグボトルにいれた板藍根茶を枕元に置いてこまめに飲むようにしています。そうすると、他に薬を飲まなくても早い場合翌日には熱が下がることもしばしばです(あくまで個人の体験です)。
板藍根の生薬自体は一般には手に入りづらいですが、いくつかのメーカーから「板藍根茶」が販売されていますので、急な発熱に備えて常備されてはいかがでしょうか。
お手軽に取り入れやすい「板藍根のど飴」などもあります。

ただし、注意点があります。
板藍根はあくまで「余分な熱を取り去るもの」ですので、予防としては適していません。
発熱前から飲んでいると身体を冷やしてしまいますので、体調不良を引き起こす可能性もあり逆効果です。必ず、「熱が出たときに」飲むようにして下さい。

その他、熱をとる作用があるものとして下記があります。

山梔子(くちなし):おせち料理のきんとんやたくあんを作る際に用いられることでも有名ですが、漢方では「さんしし」という名で、漢方薬の材料にもなっています。
スーパーマーケットの中華食材のコーナーでも手に入ります。
お茶と一緒に煮出して摂るのが、取り入れやすい方法かと思います。

緑茶:喉の渇きをいやし、水分代謝もたすけます。ただ、カフェインも含まれていますので、寝つきの良くない方は夕方以降に摂るのは避けるようにしましょう。

タンポポ:「蒲公英(ぼこうえい)」といって根の部分を乾燥させたものが漢方の生薬としても用いられています。タンポポ茶として販売されているのを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
血を補い、水分代謝を助ける作用もあります。授乳中の方には乳腺炎対策としても有用なことが知られ、「タンポポコーヒー」というものも一般的に売られています。

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これから熱が出そうな場合には

一方、まだ熱は出ていないが、これから来そうだな……と思われる、悪寒や関節の痛みなどが起こった時には、身体を温めて汗をかき、まだ体表にあって身体の中に入り込んでいない邪気(体調不良の原因となるもの)を発散させることが大切になります。
このことを漢方では「辛温解表(しんおんげひょう)」といいます。
辛温とあるように、辛味のある食材には温めて発汗させる作用があるものが多いです。

代表的なものとしては

生姜:発汗作用を求める場合は生のものが良いです。また吐き気止めとしても有効です。すりおろしたり刻んでお茶やスープに加えましょう。一方、乾燥生姜はじんわりと中から温める作用が強いので、上手に使い分けてください。

紫蘇:漢方では「蘇葉(そよう)」といい赤紫蘇を乾燥させたものが用いられますが、赤紫蘇は一般的に手に入る時期が限られますので、手軽に購入できる青紫蘇で大丈夫です。
解毒作用もあり、お刺身に紫蘇が添えられているのはここからきているとされています。

ねぎ:白い部分を用います。生姜と同様ですが、ねぎにはまた気の巡りを良くする作用もあります。

これらの発汗作用のある食材の重要な注意点として、「すでに汗をかいているときの使用は禁忌」ということがあります。
汗をかくということは毛穴からすでに「気(エネルギー)」が漏れ出ているということですので、この状態でさらに汗をかかせる作用のあるものを摂ると、回復するどころかかえって弱ってしまう可能性がありますので、くれぐれも、「ぞくぞくする」「まだ汗をかいていない」「かぜの初期」に用いるようにしてください。

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この記事を書いてくれた人:古橋 智子(漢方・薬膳・保存食講師)
漢方上級スタイリスト、養生薬膳アドバイザー、中国茶アドバイザー、かんぶつマエストロ。薬日本堂漢方スクール、長谷園 東京店 igamonoなどで講座を担当。20代より保存食作りに親しみ、数々のレシピを考案。素材の旬だけでなく、一人ひとりの体質や体調に合った保存食を提案したいという思いから漢方、薬膳を学ぶ。

インスタグラム
https://www.instagram.com/yakuzen_everyday/

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