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ファッションは、生き方そのもの。環境に配慮した行動をするかっこいい人になって、業界、そして社会を、牽引していく。


より多くの人が、より身近にファッションを楽しむことができるようになった現代。反面、『ファッションロス』という廃棄衣服の問題をはじめ、さまざまな社会問題が起きています。

サステナブルな社会、エシカルな消費を目指す未来に向かう中で、いつまでもファッションを楽しめる世界をつくるために、ファッション業界とファッションを楽しむあらゆる人が集まり、アクションを起こしていく場所として、「For Fashion Future」は生まれました。

プロジェクトのプレ・スタートとして、インナーと関係者向けにトークイベントを開催しました。

イベントは、株式会社CLAVIS HELICE代表取締役・「Fashion Revolution Japan 」プロデューサーの斉藤圭祐さんと、予防医学研究者・医学博士の石川善樹さんをお招きし、トークセッションおよびワークショップを行いました。

こちらの記事で、お二人の濃いトークを一部凝縮して掲載いたします。

斉藤圭祐| KEISUKE SAITO
株式会社CLAVIS HELICE 代表取締役、プロジェクトデザイナー。2011年に博報堂入社、その後独立し複数のベンチャーの立ち上げに従事。2015年に1社目となる会社を起業し、主にオフィスワーカー向けのヘルスケア分野のサービスを軸に、スタートアップから大手企業まで併走型での新規事業開発を手がける。スウェーデンやデンマークなどの北欧と北米、オーストラリアなどへの視察研究を経て、2019年春にサステナビリティ推進における専門のプロジェクトデザイン会社を新たなに立ち上げ、活動中。他、集中に特化したワークスペース「Think Lab」のビジネスプロデューサー、ファッション業界の透明性を目的としたグローバル団体「Fashion Revolution 」のJapanプロデューサー、働く人の健康とアスリートの活躍の場をつくる「オフィスポ」アドバイザーを務める。

石川善樹|YOSHIKI ISHIKAWA
予防医学研究者、博士(医学)。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。(株)Campus for H共同創業者。「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。

ファッション業界は、石油産業に次いで環境負荷をかけている業界?

ーーお二人はこの「ファッションロス」の問題についてどうお考えでしょうか。

石川:
予防医学とファッションって実は結構深い関係があるように僕には見えるんです。ファッションは、農業と関係があります。なぜなら、綿花を作るところから始まるから。綿花を作るには大量の農薬を使う必要があり、綿花農家さんたちがその農薬でガンになってしまうんです。さらに農薬を作っている会社と抗ガン剤を作っている会社が同じ会社だというケースがあって、こんなめちゃくちゃなことが起きているんです。綿花を作る始まりのところから、最後に衣服を焼却するまでにいろんな健康被害が出ている。これをファッション業界全体として、どうしたらいいだろうかというのに注目しています。

斉藤:
「ファッションロス」は昨年のバーバリーの問題などを筆頭に、世界的にも問題意識を生みましたが、これはファッション業界だけの話じゃなく、色んな業界のおもてなしチリツモなんじゃないかと考えています。というのも、僕はおせんべいが好きなんですけど、スーパーに行くとめちゃくちゃ小分けにされていますよね?パン屋さんでもすごく丁寧に一個ずつ袋に入れてくれる。パンが汚れないように、美味しい状態で食べられるように。食の業界も然り、ファッション以外の業界でもこのようにユーザーの為に便利に、おもてなしの気持ちがちり積もっている。ファッションに関しても、ユーザーが安い価格で多くのバリエーションを買えるようにと、そのようなニーズに応えてきた結果が今の「ファッションロス」の現状なんじゃないかなって思っています。

石川:
ファッション業界は「石油産業に次いで環境負荷をかけている業界」と言われているんです。農薬も然り、ポリエステルなんかは、石油から作られているわけですから。食業界の話題も出ましたが、例えばネスレは環境に対する取り組みを進められています。

社会問題を解決していく時は、ビジネスと結びつかないと、上手くいかない。

ーー「ファッションロス」に限らず、ロス問題は無視出来ない流れになっていますね。この流れにどう取り組んでいくかというあたり、斉藤さんが携わられている「ファッションレボリューション」は、どのような取り組みをされていますか?

斉藤:
「ファッションレボリューション」は、2013年4月24日にバングラデシュの首都ダッカ近郊で1,100名以上もの衣料労働者が亡くなった「ラナ・プラザ」ビルの崩落事故が背景にあります。この事故をきっかけに、ファッション業界の透明性をちゃんと正さないといけないという意識が高まり、グローバルキャンペーンとして立ち上がりました。2018年は、50カ国で1000以上のイベントが開催されました。今年、日本でのワンデイイベントは、ケリンググループ、VOGUE JAPAN、ストライプ、H&M、パタゴニア、豊島など、幅広い企業の方に来ていただいて色々と話をしていただきました。また環境省やゼロ・ウェイストアカデミーなどアパレル業界以外の業界も参画し、この活動を応援してくれています。
でも、一般の生活者がこのような活動は、理解するのってなかなか難しいですよね。参加しやすい仕組みとしては、SNSキャンペーンがあります。「#whomademyclothes」(この服誰が作ったの?)をタグラインとして用意し、服のブランドタグと一緒にSNSに投稿することで、一般生活者がブランドに訴えかけることができたり、逆にブランドの工場で働く方が「私が作っています」と発信したりだとか、そういうムーブメントになっています。

ーー「ファッションレボリューション」を続けられてきて、何か感じられる変化はありますか。

斉藤:
実は私自身が、ファッショレボリューションに参画したのは今年からです。これまで、日本のファッションレボリューションは、「ザ・トゥルーコスト」というファッション業界の透明性を訴える映画作品の上映会と交流会、店頭でのキャンペーン啓発を続けてきました。今年のファッションレボリューションのテーマは「Baby steps lead to FASHION REVOLUTION」とし、小さな一歩をたくさん生むことで、大きなムーブメントに繋げていくということをテーマに、イベントとキャンペーンを設計しました。スモールな任意団体で予算もない中で、サプライチェーンに関わる人たちをどれだけ集められるかチャレンジだったのですが、アパレル企業だけではなく、メディア、インフラ、アウトプットを作る印刷会社など、様々な企業が参加してくださり、また平日日中で有料のイベントだったにも関わらず、多くの参加者にお越しいただきました。また、その中でも、学生を含む、20代前半の参加者が多かったことは印象的で、高い関心度と何かアクションしないといけないという危機感を抱いていることを感じました。

石川:
ファッションに限らず、社会問題を解決していく時は、ビジネスと結びつかないと上手くいかないことがよくあります。例えば自動車業界ーートヨタのプリウスは環境に配慮した設計でかつかっこよく、エコロジーに敏感なハリウッドスターが愛用することも話題になりました。現在も電気自動車に変わりつつあり、今やガソリン式自動車に乗るのがダサいというムードを作っています。これは、環境問題の話をしているんじゃなくて、次のビジネスチャンスの話をしているんだって捉えないと、「へぇ、そんな話があるんだね、ところで僕忙しいんですが」と、他人事で終わってしまう。このファッションの問題をビジネスチャンスとして捉えられるかどうか。それが重要だと思います。

斉藤:
そうですね。トヨタが電気自動車を5年前倒しのシフトチェンジしたり、サントリーがペットボトルをリサイクル素材や植物由来にしようとか、セブン&アイがプラスチックのレジ袋をゼロにしようとか。スターバックスが取り組んでいるプラスチックストローの問題とか。グローバルゴールズへのコミットメントの高まりと、特に日本においては来年オリンピックパラリンピックがありますので、サステナビリティを世界に発信する文脈を急いでいる気がします。でも、それを本当にビジネスチャンスと捉えているのか、が大切ですね。

サステナビリティの動きは、一般化のフェーズに入った。

ーーそれに伴って生活者の意識も結構変わってきていますよね。

斉藤:
普段みなさんのSNSに流れてくる情報にも、脱ストローや過剰包装の問題、鎌倉に漂着したクジラの胃の中にプラスチックの破片が入っていたニュースまでなどが、海洋プラスチックに関することが普通に流れてきますよね。サステナビイティに関するたくさんの動きがある中で、ようやく一般化のフェーズに入ってきたと感じています。

ーー各社はどのような取り組みをしていますか?

斉藤:
例えば、GUCCIなどを牽引するケリンググループは、サステナビリティ担当者が全社で50名を超えてきています。また、EP&Lという環境とプロフィットを図る独自の数値を持っています(これは一般公開されおり、アプリをインストールできます)。そして、サステナブル認証を取った生地を開発するラボなども持っています。
また、業界全体の話になりますが、廃棄商品が出てしまった場合の対処は大体6パターンあり、クローズマーケットに回したり、燃料化・リサイクル素材化したり、リユースとか寄付に回すなどの取り組みが行われています。ただ、古着の場合だと、自治体の回収で半分はマレーシアや韓国など海外に渡って、それがまた環境汚染につながってしまうというような問題も出ています。

ーー環境に対する危機感、日本ではどうでしょうか?

石川:
少しずつ、変わり始めていると思います。この数ヶ月で、僕は自動販売機でペットボトルを買えなくなりました。このプラスチックでクジラが死んでしまっていると思うとどうしても。景色が変わるって、こういうことかなと思ったエピソードがありますーーとあるお堅い会議にこの前出たんですが、ちょっと前まではペットボトルのお茶や水が出ていたんだけど、こないだ行ったらお偉いさん方がみんなマイボトルを持って会議に参加されるようになったんです!こうやって目に見える形で行動が変われば当然周りの人も真似するだろうし、結果として世の中全体が変わるだろうなという感じがしましたね。

ファッションは、生き方そのもの。

ーーストローの問題にしても、これまでは気づかなかったことがSNSで発信されるようになって、意識の変化が顕著になった気がします。この危機感が早くアクションをしなきゃという気にさせるのですが、ブランドやメーカーにとって、何か具体的なアクションのアイデアはありますか。

斉藤:
いきなり全ての素材を環境に優しいものに変えることは難しいですが、できることからでいいと思います。例えば:
●電気を変える
実は電気って、環境に優しいものにすぐに変えられるって知っていますか?電気を太陽光や風力などの自然エネルギーに変えることができるんです。自然電力さんの事例ですけれども、1-2分でweb上で料金シミュレーションを取ってくれて、自然エネルギーに切り替えることができます。
●ゴミをゼロに
店舗から出るゴミをゼロにすることもできます。徳島県にゼロ・ウェイストアカデミーというNPO法人があり、そこでは「ゼロ・ウェイスト認証制度」というサービスを作っていて、作る過程、運ぶ過程、お客さんに渡す過程に至る9つの項目で認証を付与します。長くメンテナンスできるサービスがあるとか、リペアのワークショップがあるとか、ゴミをどれだけ減らしてマイバック運動を進めているとか。企業ごと変わろうとするのは時間がかかるけど、一店舗の一人の意志からアクションできるので、最初の足がかりとして取り組みやすいと思います。

ーー最後に、これからのファッションのあり方は、どういう風になっていくのでしょうか。

斉藤:
よく言われることですが、二極化していくではないかと思っています。環境に配慮しているのはアタリマエで、ストーリーや付加価値があり、値段は高くてもブランドを愛し続けたいというものと、大手企業の努力の中で普段の生活の中で、ベーシックでバリエーションを作りたいものの、大きく二つに分かれると思います。

石川:
ファッションは、生き方だと思います。まさにファッション業界で生きているみなさんの生き方がカッコいいかどうか、みなさんがかっこいい生き方を体現できるかどうかだと思います。スポーツでいうと、例えばバルセロナのサッカーチームを見学した時に、ユニフォームの袖に「サッカー選手のように食べよう」と、食品会社のスポンサーが子どもたち向けにメッセージを出していました。自社のロゴなんか出さなくて良いと。これをファッションに当てはめると「ファッション業界で働いている人たちのように生きたい」という風に、世の中の人たちに憧れられるような行動をどれだけされるかが重要だと思います。

ーーありがとうございました。


FFF - For Fashion Futureとは

大量の廃棄在庫を生み出してしまう『ファッションロス』問題を起点に、ファッションのサステナビリティについて考え、オープンイノベーションで解決策を探すプロジェクト。知る、学ぶ、考える、行動する。そして何より楽しむこと。小さなことからでも、少しずつ答えを。ファッションをもっと楽しめる未来のために。

https://www.forfashionfuture.com


編集 / 楊 芊蔚・池内 悠里

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