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『MUSIC BLOOD』ってどんな音楽番組なの?素人なりに考察してみました。

2021年4月2日(金)日本テレビで新しい音楽番組『MUSIC BLOOD』が始まりました。2009年10月から10年以上続いていた『アナザースカイIⅡ』(『アナザースカイ』)を木曜深夜に移動させて始まる番組となります。日本テレビによると、ターゲットはティーンや20代など若い世代で、“バズる” 連動展開などを行っていく、とのことでした。日本テレビが重視している ”個人視聴率”(とりわけ13~49歳を “コアターゲット” として重視)獲得のための番組改編のようです。

『MUSIC BLOOD』のMCは、ともに音楽番組初司会の田中圭氏と千葉雄大氏に決定し、番組がスタートしました。

『MUSIC BLOOD』 初回個人視聴率3.3%!世帯視聴率6.1%で発進!

『MUSIC BLOOD』の初回ゲストは、MC二人が共演した『おっさんずラブ - in the sky』(2019年)の主題歌を手掛けた『sumika』。ゲストとMC二人の人気により、個人視聴率も3.3%(世帯視聴率は6.1%)と、深夜番組としては好調だったという評判を聞きました。

なお、個人視聴率とは4歳以上の個人全体の視聴率です。何世帯がその番組を視ていたのかではなく、何人がその番組を視ていたのかを測る視聴率です。
日本テレビは個人視聴率を主なターゲットにしていますので、当noteでもそれに倣います。

『MUSIC BLOOD』視聴率が週によって変わる⁈

何週間か『MUSIC BLOOD』を見ているうちに、ゲストの人気と視聴率の関係が気になりはじめました。人気のあるアーティストや音楽グループでも思ったより個人視聴率が上がっていない、かと思えばその逆もある。そう思った時に、前番組の『金曜ロードショー』との連動が気になるようになりました。
そこで、『金曜ロードショー』と後番組の視聴率を調べてみることにしました。

また、2020年2月の『アナザースカイIⅡ』の視聴率(おそらく世帯視聴率)が 5.1%~7.2% という過去記事を読み、『MUSIC BLOOD』の視聴率が『アナザースカイⅡ』と比較して高くなったのかどうか、調べてみることにしました。


2021年1月~6月 『金曜ロードショー』と後番組の視聴率一覧

参照元:株式会社ビデオリサーチ『2021年関東地区_視聴率レポート_番組平均世帯/個人 視聴率

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ちょっとこれでは分かりにくいので、グラフにしてみました。まずは、もちろん個人視聴率から!
『金曜ロードショー』の個人視聴率推移は黄色、『アナザースカイⅡ』は灰色、『MUSIC BLOOD』は紫色のグラフとなっております。

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このグラフを見ると、『金曜ロードショー』と後番組の個人視聴率の動きは多少連動しているように見えますが、『金曜ロードショー』の動きの激しさに比べると、後番組は落ち着いています。
『金曜ロードショー』で、2021年前半最高視聴率 8.6% を記録した『ハウルの動く城』放送日、『Music Blood』は初回でしたが、個人視聴率は 3.3% と『アナザースカイⅡ』や『Music Blood』の他回に比べ、突出して高いわけではありませんでした。
従って、『金曜ロードショー』と後番組との視聴率の連動はゼロではないけれどもそれほど大きいものではない、ということがわかりました。

一方このグラフからは、『アナザースカイ』の個人視聴率は 2.6%~3.5% の間で推移 (上下0.9%) しており、12週のうち3.5%を4回出すなど、安定していたことがわかります。
これに比べて『MUSIC BLOOD』は 2.0%~3.6% の間で推移 (上下1.6%) しており、『アナザースカイⅡ』に比べて個人視聴率の動きが激しいということがわかります。
6月18日は世界的人気グループの 『BTS 』がゲストだったこともあり、2021年前半で最高の個人視聴率 3.6 % をたたき出しています。

参考までに世帯視聴率も貼っておきます。

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世帯視聴率のグラフを見ると、『アナザースカイⅡ』は、視聴率の波の形状が『金曜ロードショー』と連動している部分があるように見えますが、『MUSIC BLOOD』になってからは、それほど連動していないように見えます。
そして世帯視聴率においても、後番組と比較して『金曜ロードショー』の動きは激しいようです。

後番組に関して言えば、世帯視聴率でも『アナザースカイⅡ』は 4.9%~6.8% (上下 1.9%) の範囲で推移しておりますが、『MUSIC BLOOD』は 3.9%~6.2% (上下 2.3%)の範囲で推移しており、こちらも『MUSIC BLOOD』の方が『アナザースカイⅡ』よりも視聴率の上下が激しい、ということになります。

『アナザースカイⅡ』 VS 『MUSIC BLOOD』平均個人視聴率

さて、ここまでまとめてきた所で、皆さんもお気づきの通り、『アナザースカイⅡ』は非常に視聴率の安定した優秀な番組であったことがわかりました。
『MUSIC BLOOD』は、思いのほか視聴率が伸びていないのです。そこで、思い切って『アナザースカイⅡ』と『MUSIC BLOOD』の平均視聴率を比べてみることにしました。

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今年前半を3か月ごとに分けて考えた場合、『金曜ロードショー』の個人視聴率は 前半に比べて後半1.1%上昇したにも関わらず、後番組は『アナザースカイⅡ』から『MUSIC BLOOD』に変更され、個人視聴率は 0.33 %ダウンという結果になりました。

参考までに世帯視聴率でも比較してみました。こちらも『MUSIC BLOOD』の方が『アナザースカイⅡ』よりも視聴率が下がっていることがわかります。しかし、個人視聴率の落ち込みの方が少ないので、「個人視聴率の方がダウン幅は少ない」と言えると思います。

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『MUSIC BLOOD』への番組変更は吉だったのか?

ここまでの結果から判断すると、日本テレビが『アナザースカイⅡ』から『MUSIC BLOOD』に番組変更したことが成功だったのか、疑問になります。個人視聴率の推移だけで判断した場合、『アナザースカイⅡ』から『MUSIC BLOOD』への番組変更は今のところ成功とは言いかねると思います。
しかし、日本テレビが重視する層(13~49歳の “コアターゲット” )の個人視聴率がどう変わったのかを確認しないと、成否についてははっきり言えないと思います。今回はそこまで調べることができなかったので、余力があればやりたいなと思います。

『MUSIC BLOOD』には他の思惑が…?

こうして、個人視聴率の推移だけを見てみると、日テレの戦略は大正解とは言えません。しかし、もしかしたら『アナザースカイⅡ』の視聴者は日テレが重視しない層(50歳以上の男女であるM3/F3層)が主だったのか?そのために番組変更したのか?と考えていたところ、面白い記事を読みました。
複数のトーク番組の視聴者傾向を分析した下記の記事です。
これによると、『アナザースカイⅡ』の視聴者は実はコアターゲットに近かった?と読めます。ん?ではなぜ???

『MUSIC BLOOD』は、コアターゲットの中で最も若い層である T層(13歳~19歳)やM1 / F1 層(20歳~34歳の男女)をターゲットにしているようなので、視聴者のより若返りを計った可能性もあります。しかし、個人視聴率も安定している『アナザースカイⅡ』を強引に移動させるほどの理由としては、弱いなと感じました。
もしかすると、日本テレビには『MUSIC BLOOD』を始めたい、ほかの思惑があったのかもしれないと思うようになりました。


バーティカルシアターアプリ『smash.』との連動

ここで考えられるのが、『MUSIC BLOOD』が初めから『smash.』というアプリとセットで考えられた番組ということです。
『MUSIC BLOOD』の放送が発表された時の番組紹介コメントを引用します。

『”新しい時代に新しい手法で新しい音楽番組を生み出したい“-smash.と日本テレビのこのような想いが一致し、誕生したのが本番組です。
smash.では、地上波放送直後より、出演ゲストのライブパフォーマンスを1カメラ&ノーカットで収録する”UNCUT”映像を独占配信。手のひらサイズで、”縦“に特化したシアターアプリの特性をいかし、ゲストをより近距離で撮影。ド迫力パフォーマンスで、アーティストの「BLOOD」をさらに深堀。バーティカルシアターアプリならではの没入感を視聴者の皆さんへ提供してまいります。』

『smash.』とは、スマートフォンで短尺の動画を視聴できるアプリで、音楽、ドラマ、アニメ、バラエティなど幅広いジャンルの映像が用意されています。価格は月額550円と有料になっています。
ちなみに『smash.』は音楽プロデューサーの秋元康氏が協力していることでも知られています。

また、『smash.』を運営するSHOWROOMは、ストリーミングサービス『SHOWROOM』を運営している会社で、先日BTSやENHYPENらが所属する韓国の芸能プロダクション HYBEと資本業務提携することが発表されました。

『MUSIC BLOOD』では『smash.』ともう1社がスポンサーになることがほとんどです。7月9日放送回(ゲストは『ENHYPEN』)では、『smash.』と『Sony Music』の2社の提供でした。

このように、『MUSIC BLOOD』は『smash.』で番組内の未公開映像をノーカットで放送することによって『smash.』の有料配信売上に貢献し、『smash.』はスポンサーとして『MUSIC BLOOD』を支える、という構造になっているわけです。

従って、『アナザースカイⅡ』と比べて『MUSIC BLOOD』の個人視聴率が下がろうと、スポンサーである『smash.』の有料配信が売れていけば問題はないのだと思います。
新しいビジネスモデル
ですね。

さらに『smash.』への誘導を裏付ける情報になりますが、『MUSIC BLOOD』のゲストは『当日の朝、smash.内の番組視聴ページとsmash.公式Twitterで発表』と前述の番組紹介コメントでは書かれておりますが、『BTS』は放送1週間前の6月11日に出演が発表されました。
もちろんその事前お知らせに伴い『smash.』での限定配信についてのお知らせもツイートされていました。(ちゃっかりしてますね!)

いいねの数が桁外れで、『BTS』の凄まじい人気がうかがえます。そして『MUSIC BLOOD』公式ツイッターでは、6月18日の放送後、2週間以上経った7月になった後も『smash.』でのUNCUT映像配信のツイートが発信されました。

視聴者や『BTS』ファンが『MUSIC BLOOD』から勧められて『smash.』での有料配信に加入すると『smash.』が利益を得ます。そして『MUSIC BLOOD』は『smash.』というスポンサーを掴み続けることができる、という構造です。
『アナザースカイⅡ』は2016年3月までJTの一社提供でしたが、その後は複数スポンサーによる提供でしたから、日本テレビにとっては『smash.』という固定スポンサーを得られることは安定した収入になる、ということなのです。

この先の『MUSIC BLOOD』は …

ではこの先、『MUSIC BLOOD』はどうなっていくのでしょうか。目的が『smash.』での有料配信客獲得だとすると、『BTS』のような人気アーティスト、且つファンが有料でも未公開映像を見たい、と思うようなゲストを呼び続ける必要があります。
既に『日向坂46』『乃木坂46』はゲストとして登場済みです。残るはジャニーズとLDHグループになりますでしょうか。
有料配信へファンを誘導できるようなゲストが一巡したときにこの番組がどういう手を打つのか、それも楽しみです。


もう一つ『MUSIC BLOOD』が売りにしているのが司会者二人の関係です。公式ツイッターでも #圭アンド雄大というハッシュタグを付け、二人の関係を強調するようなツイートをしています。

この田中圭さんと千葉雄大さん二人を見たいというファンも多いのでしょう。公式ツイッターが『MUSIC BLOOD』視聴者向けに 未公開情報で何が見たいかを尋ねたアンケートでも、アーティストのオフショットを抑え、 ”MC二人の楽屋ツアー” がダントツで1位となっていました。

したがって、『smash.』でMC二人の未公開シーンをUNCUT映像として公開するようになれば、MC二人のファンが『smash.』に加入(購入する)と思われます。

では、有料配信に加入してくれるようなファンを持つアーティストの出演が一巡し、MC二人のファンが有料配信に加入した後、この番組はどういう戦略で行くのか?
私にはわかりませんが、言い方は悪いですが ”獲れる客” を取ったあとは、再び『アナザースカイ』に戻る気がします。
なぜなら、"獲れる客” を獲り尽くしてしまえば『smash.』は番組提供をする必要はなくなるからです。

なおかつ、『アナザースカイ』は番組放送時間移動後も一定の視聴率をキープしており、根強いファンのいる優良コンテンツです。超深夜に移動した後でも、他番組と比べて高い視聴率を取っています。
そのうえ個人視聴率で言えば、『MUSIC BLOOD』よりも『アナザースカイⅡ』の方が高かったのですから、元の時間に戻ってもスポンサーが付くことは間違いないでしょう。

以上、『MUSIC BLOOD』について色々と書き連ねてきました。
時々この番組を見るのですが、個人的には「もう少しアーティストの歌を聞かせて欲しい。」と思います。せっかく1番組で1ゲストという贅沢な作りなのですから、現在の2曲ではなく3曲披露してくれたらありがたいなと思います。
それと、こっそり言いますが、ゲストにもっとフォーカスを当てて欲しい、と思います …。20代に人気のアーティストを新たに知ることができたりするのは、とても楽しいことなのです。

さて、ここまで素人の分析をお読みいただき、ありがとうございました。素人が何を言ってる、と思われた方、ごめんなさい。勝手に書いてますので、お許しください。
さて今日は金曜日、『MUSIC BLOOD』の日です。今日はどんな番組になるか?楽しみに見たいと思います。有料アプリには入りませんが。

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