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文学と貨幣 ①星新一「とんでもないやつ」

私は、いわゆる「文学少年」と言える程読書家でもなかったが、星新一さんの小説は子供の頃から好きであった。
星さんの小説に何となく漂うどこか暗い、不気味な所が好きだったからだろうか。それとも、適度な短さで集中力が続かない私の性分に向いていたからであろうか。子供の時分に星さんのファンになった私であるが、大人になった今でも、時折星さんの小説を手に取って、読む事がある。(NHKで昔、星さんの小説を元に製作されたアニメを楽しんだ記憶もある。もう何年も前の話だったかと思うが。)

参考:こちらの番組。一番好きだったのは「午後の恐竜」。
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010555_00000

そんな星さんの小説の中で、今回取り上げたのは、ちょっとした思い付きで「お金」を世に送り出してしまい、現代に至るまで多くの人々を苦しめている。そんな大罪をしでかした主人公である「グウ」をして、”とんでもないやつ”という物語である。この話の中で、グウは貝殻を削った物を商品を運んできた村人に渡した。その行為に及ぶ前に流石のグウも躊躇いを示す。
「こんな事を言っても、信用されないのではないか。」
案の定、相手の反応は冷たい。そこで、言うのだ。
「世間の連中はみんな使っている。こんな事を知らないなんてお前はよっぽどの田舎者だな」と。
舞台は日本だったのだろうか。今で言う所の同調圧力も手伝った様に思える。

こんなジョークがある。エスニックジョークという物で、これは、国民性を端的に表したジョークの1つ。
アメリカ人に対して・・・「飛び込めばヒーローになれますよ」
イタリア人に対して・・・「海で美女が泳いでいますよ」
といった様な感じである。
そして、日本人は・・
「みなさんはもう飛び込みましたよ」
納得の内容ではないだろうか。

参考:ズバリ! 各国の国民性を的確に表した『沈没船ジョーク』とは?
https://youpouch.com/2011/09/30/121547/


閑話休題。だがやはり、これと同じ様な周りに合わせようとした人たち、時流に乗り遅れることを遅れた人たちが、貨幣の浸透に貢献したのではないだろうか。


グウに担がれたその男はどの様に周りの人たちを説得したのだろうか。
もちろん、最初は苦労しただろう。でも、大丈夫。
みんなが大好きな殺し文句があるのだから。
「みんなそれ(貨幣)使ってますよ」

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