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復活した満員電車で痴漢リスクを減らす方法

GW後、新型コロナが5類へ移行したことで、これまでの出社制限が撤廃されて出社回帰に移行する会社が増えています(弊社もご多分に漏れず、私は週2日出社から3日出社になってしまいました)。

そうした社会の動きを肌で実感するのが通勤電車です。GW前と比較して、あきらかに乗車率が上がっていることにうんざりした人は多かったことでしょう。
しかし、中には喜んでいる卑劣な人もいると想像します。そう、痴漢です。
先週はGW明けに10代の子が悪い大人に騙されて加害者になる可能性について触れました。

今回は逆に被害者――より正確にいえば痴漢被害者にならないために覚えておいておきたいことを、犯罪学教室のかなえ先生『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』から関連箇所を本記事用に一部抜粋・改編したうえでお届けします。

やはり混雑した時間帯に発生しやすい

 性犯罪の代表格としてあげられることもある「痴漢」(迷惑防止条例違反)。発生場所の約半数が「駅構内・電車」です。続いて、発生時間も午前6時から急激に増加して午前8時にピークを迎え、午前9時から急激に減少し、午後0時から午後3時にかけて再び増え始め、午後6時に第2のピークを迎えます。
 このことから痴漢は、子どもたちの「登下校時」や、社会人の「出社時・帰宅時」に集中して発生していることがわかります。この時間帯は、通勤ラッシュによる駅や電車内が混雑する時間でもあります。
 特に「登校時・出社時」は、被害者が急いでいたり、大切な試験や会議などで遅刻できない用事があったりなど、被害申告によって時間を取られることを恐れて、被害者が被害を申告することをとまどってしまうことがあります。
 実際、「駅構内・電車」の混雑や被害申告が難しい時間的状況を利用して、計画的に痴漢におよぶ者もいます。
 そのため対策としては、混雑する場所では1人にならないことや時間に余裕を持って移動することがあげられるわけですが、ここで痴漢が多く発生する環境(場所)的要因にも着目してみましょう。

 グラフ等から、駅構内や電車内が混雑する時間帯に発生していることが多いように推測することができます。
 このことから、電車の混雑を解消することや車内に監視カメラを設置すること、鉄道警察の警戒強化、その他被害申告の心理的ハードルを下げる取り組みを行うことも、痴漢行為の未然防止策として有効だろうと考えることができるはずです。
 一方、性犯罪は一般的に被害申告が難しい場合が多く、今回の統計の中に含まれない隠れた被害も相当数存在していることも頭に入れておく必要があるでしょう。

痴漢に反撃することの2つのリスク

 さて、ここで痴漢を取り扱うと多く寄せられる質問に回答しようと思います。
 少し前に、SNSで痴漢撃退法として「安全ピン」で刺すことが有効であるという投稿がされて話題になりました。
 個人的に「黙ったままじゃ終われない」「やり返したい!」という気持ちは理解できないわけではありません。しかし、この方法には2つのリスクがあります。
 1つが、さらなる被害にあうリスクです。
 わかりやすく説明すると、安全ピンで刺されたことによって犯人が逆上した結果、暴行を受けたり、傷害を負うことになったり、相手が凶器を所持していたという最悪の場合には殺されてしまう可能性もあります。
 つまり、こちらの反撃が不用意に相手を刺激してしまうことがあるということです。
 相手の素性や正体もわからないまま、下手に自分だけで対応することは非常にリスクの高い行為であることは理解しておいてください。
 もう1つのリスクは、被害者が加害者になってしまうリスクです。
 安全ピンで刺す行為は、傷害罪の要件に該当する可能性がある行為です。
 一方で、違法性が否定される代表的なケースとして、「正当防衛」があります。しかし、実際に正当防衛を主張したとしても、安全ピンを刺す方法以外で痴漢行為を制止することができたと認められれば、正当防衛は認められず、罪に問われる可能性があります。
 よって、安全ピンを使った痴漢への反撃は実行しないことが賢明です。

被害申告が難しいために

 一般に性犯罪は被害申告の難しい犯罪ではありますが、「加害者に反撃する勇気」を「周囲に助けを求める勇気」に変えて適切に対応してもらえればと思います。
 しかし、突然見ず知らずの相手からわけのわからないことをされ、怖くて声が出ないこともあるでしょう。
 ここで安心してほしいのは、怖くて声が出ないことは「変なこと」「ダメなこと」ではなく、普通のことです。恐怖で体が緊張してしまうのは誰にでもある反応です。そのため、被害申告ができなくとも、自分を責める必要はありません。悪いのは痴漢です。
 最近では、警視庁が「Digi Police(デジポリス)」と呼ばれるアプリを開発しました。
 アプリ内には痴漢撃退ブザー等が搭載されており、2022(令和4)年の4月には痴漢被害にあった女性が、このアプリを使用したことで周囲の乗客の力を借りて、被疑者を確保することに成功しています。
 駅員に被疑者を引き渡したり、被害申告をすると、警察や駅員さんから事情を聞かれることになると思います。どうしても被害にあった直後は感情がたかぶってしまい冷静ではいられないことがあると思うので、話せる範囲で話してください。無理に思い出そうとすると、より強い精神的ダメージを受けてしまう可能性があるからです。

痴漢からの被害防止法は?

 さて、ここからは痴漢被害にあってからの話ではなく、痴漢被害を未然に防ぐ方法について考えてみようと思います。
 完璧な痴漢被害防止法があるのでしょうか?
 結論だけ言えば、ありません。
 理由は後述しますが、ターゲットとなるのは「性犯罪者の好みの人」であり、長いスカートを履いている人が好きな者もいれば、ロングパンツが好きな者もいますし、他にも服装ではなく、髪型でターゲットを決めている者もいるため、一概に被害にあいそうな人物像を特定してお伝えすることはできないのです。
 そのため、今から話す内容はあくまでも、個人でできる痴漢被害にあうリスクを低減する方法だと思っていただければ幸いです。

①通学・通勤時間を変えること。
 まず、通学・通勤時間を変えるという方法があります。
 電車やバスの混雑する時間を避け、比較的空いている時間に利用し、痴漢が困難な状況をつくり出すことでリスクを低減させることができます。

②できるだけ露出の多い服装を避けること。
 先ほど服装などは関係ない旨の説明をしましたが、やはり露出をひかえるだけでも多少はリスクをおさえることになります。また、短いスカートなどは痴漢以外にも盗撮等の被害にもあいやすいものです。
 しかし、そもそもの話ですが、痴漢のために服装を考慮しなければならないのは非常に理不尽ですし、痴漢などのせいで自分らしい服装で外を歩けないのも非常に息苦しいですよね。

③複数人で通学・通勤したうえで防犯ブザー等を所持すること。

 これがおそらく一番効果のある方法ではないかと思います。複数人で移動されることは、痴漢等の単独で犯行を行う犯罪者にとっては最もされたくないことです。
 お互いに監視の目を持つわけですし、仮に被害にあったとしてもすぐに友人に助けを求めることができるため、1人で通学・通勤することが不安な方にとってはおすすめです。
 また、防犯ブザーや先ほど紹介した防犯アプリ等を起動した状態で、周囲を警戒している様子をアピールすることもいいかもしれません。

④女性専用車両に乗車する。
 これがおそらく一番簡単な方法だと思います。少なくとも女性が被害にあうことの多い痴漢被害を防ぐのに、女性専用車両への乗車は最適です。
 しかし、こちらの対策はあくまでも電車に乗っている間だけであり、駅構内やバスの中などでの対策はやはり③の対策を併用することが望ましいと思われます。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 い し ぐ ろ)


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