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GW後、子どもが道を踏み外さないために知っておきたい情報

新年度のはじまりの決意がゆるみはじめるのは、たいていGWが過ぎたあたりから。新しい環境に慣れるのはいいことですが、それまでの張り詰めた緊張感の反動が出てしまうわけです(あるいはまったく逆に環境になじめず、長期休暇後に五月病を発症してしまう人もいます)。
そうした変化がとくに顕著に現れてしまうのが、10代の子どもたち。親としては、心配が尽きないのではないかと想像します。
とくに最近は、10代を中心とした若年層の犯罪のニュースが増えています。

「うちの子に限ってまさか?」と思いますか? 10代にとってSNSが日常になったことで、ちょっとしたバイト感覚で犯罪に手を染めてしまう子もいます。
以下は、10代の子とその保護者向けに書かれた、犯罪学教室のかなえ先生『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』から一部抜粋、本記事用に改編した原稿です。こちらを読めば、子どもの犯罪が想像以上に身近で、私たちの日常と地続きであることを理解できるでしょう。


仲のいい友だちから勧誘された1日10万円のバイト、大丈夫?

 1日で10万円の報酬がもらえる仕事と聞いたら、たいていの人が「ヤバい」と思うでしょう。
 しかも、「コレを指定の住所に行って渡すだけだから」「ここに行って封筒をもらってきて」といった内容のアルバイトだったとしたら。
 常識的にも1日でそんなに稼げるアルバイトは、ほぼ存在しませんし、違法かつ危険な内容である可能性が高いというのは、10代でもピンとくるのではないでしょうか。
 しかし、どうしても買いたいものがあるのにおこづかいが足りない、お金を用意するように誰かからおどされているという状況にあったとしたら、冷静さを失い、「1回くらいだったら……」と思ってしまう人がいるかもしれません。
 しかも、紹介してくれたのが仲のいい友だちで、その人もこのバイトで稼いでいる様子だとしたら、一気にそのヤバそうなバイトへのハードルが下がるように感じませんか?

知らない人からインスタグラムで紹介されたバイト

 2022(令和4)年1月、特殊詐欺の受け子(振り込め詐欺などで、お金をだまし取る相手から直接お金を受け取る人、役割)として高齢女性から現金をだまし取ろうとした詐欺未遂の容疑で、埼玉県に住む14歳の中学3年生を逮捕したことを警視庁が発表しました。
 中学生とはいえ、「知らなかった」「犯罪だとは思わなかった」ではすまされません。
 警視庁の取り調べによると、この少年は「インスタグラムで知り合った人から手伝うように言われた。今までに何回かやって6万円もらった」と供述しているようです。
 驚きなのが、中学生の受け子が高齢者をだますことができていたこと。
 さらに、このような違法な仕事がSNSで紹介されているということ。
 この2つです。
 最近だと、特殊詐欺グループが、認知機能の衰えていると思われる高齢者や認知症の高齢者が居住している住所等の名簿を基に、受け子を向かわせている例があります。また、誰かに相談する余裕を与えずに、電話、金やキャッシュカードの受け取りと振り込みまでを、短時間で終わらせるパターンも多くなっています。
 さらにSNSでは、「受け子」「出し子」「高額バイト」「闇バイト」などの言葉をハッシュタグで追記した投稿をして、堂々とリクルートしているパターンもあるそうです(もちろん警察もネットを巡回して、このような怪しい投稿には警告を出しています)。

みんなやっているから俺も……で、とんでもないことに

 次は高校生が検挙された例です。
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、特に大きな影響を受けている事業者のための給付金である「持続化給付金」をだまし取ったとして、高校生を含む18人が逮捕・書類送検される事件が起きました。
 この事件においては、主犯とされる26歳の指南役の男と、男と共謀して給付金の虚偽申請を行って給付金を不正に受給していた高校生たちが、学校の校舎等で給付金の申請に必要な名前を貸す「協力者」を募集し、虚偽の申請を繰り返していたことがわかっています。
 警察の捜査によると、不正に振り込ませた持続化給付金のうち6割が手数料として指南役に渡っていました。
 まさに、悪い大人が子どもたちを悪の道へ引きずり込んだ形です。また、一時の欲におぼれた少年たちが身近にいる友人や仲間を巻き込んでしまった典型例ともいえるでしょう。
 今回のケースは、いずれも詐欺罪に該当する行為です。詐欺罪とは、他人をだまして金品等を受け取る行為や、不法に代金の支払いを免れる(無銭乗車や無銭飲食など)行為を指しますが、詐欺罪は10年以下の懲役と比較的重い刑罰が定められています。
 遊ぶ金欲しさなどの出来心の代償は、とても大きいのです。

安易に手を出すとやめられなくなる闇バイト

 さて、ここまで紹介してきたバイトやお金稼ぎは、どれも違法なものです。
 たった1回のことであっても、一度でも手を染めてしまえば、逮捕され、相応の処分を受けることになり、一瞬で信頼や地位を失うことになります。
 最悪の場合は学校も退学になり、少年院や、場合によっては刑務所に収容されることになるかもしれません。
 しかし、捕まるほうがまだマシかもしれません。
 なぜなら、いわゆる「闇バイト」に手を出すことによって、反社会的勢力に自分や身の回りの人の個人情報が渡ってしまうというリスクが生まれるからです。
 たとえば、「闇バイト」の多くはSNSで求人活動を行っているのですが、巧みに「違法性はない」と強調して仕事の説明をしてきます。
 そして、「面接」がある程度進んでいよいよ仕事を始めるとなったとき、突然かれらは自分か家族の「顔写真付き身分証」の写真を送ってくるように要求します。
 ここで、個人情報を相手に提供してしまうと、簡単にやめられなくなります。
「闇バイト」を紹介する人物や業者のバックには、「暴力団」や「反グレ」と呼ばれる反社会的勢力がついていることがほとんどです。
 そのため、仕事の直前に「やっぱりやめよう」と決意したとしても、簡単にやめさせてもらえないのです。ひどい場合には、「個人情報をネットにばらまく」「家族や学校に電話をする」といった脅迫や、直接的な暴力を用いることもあります。
 女性に対しては、わいせつな画像や動画を撮影して送ってくるように命令したり、性的行為の強要など、深刻な被害をもたらすこともあるので、特に注意してください。

友だちがあなたを引きずりこむことも

 子どもたちを狙う「悪」は巧みに現代社会に溶け込み、危険な匂いをうまく隠して近づいてきます。
 前述したように、実はそれが友だちだったということも、まったくありえない話ではないのです。突然あまい話を持ちかけられることや一緒にやろうと誘われた場合でも、どうか慎重に考えて断ってください。
 お金が欲しい。
 高いモノを買いたい。
 大半の人間が当たり前のように持っている気持ちです。
 しかし、このような気持ちを逆手にとり、自分たちの犯罪の道具として未熟な10代を利用しようとする人たちの魔の手は、意外にも身近な場所に潜んでいるのです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 いしぐ ろ)

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