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【フォレスト出版チャンネル #42】ゲスト|流行りの「ASMR」は、心にどう影響する?

このnoteは2021年1月12日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

「音」が人に与える影響を研究する音響心理学

渡部:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティ渡部洋平です。今日から2日間にわたって素敵なゲストに来ていただきました。まずは京都精華大学教授・音響心理学者の小松正史先生です。小松先生、よろしくお願いいたします。

小松:よろしくお願いします。

渡部:また、弊社から初登場の編集者ですね。石黒さんにも来てもらっています。石黒さんもよろしくお願いします。

石黒:よろしくお願いします。

渡部:では、小松先生と石黒さんでお届けしていきたいと思います。早速なんですけれども、小松先生にはフォレスト出版から心の不調が消える聞くだけ音トレ!』という本を2021年11月に出版していただいています。まずは簡単なプロフィールをリスナーの皆さんにお話ししていただいてもよろしいでしょうか。

小松:はい。京都精華大学というところのポピュラーカルチャー学部の音楽コースの教授をしております。それとは別に環境音楽という、曲を作曲したりとか、ピアニストであったりとか、あとは音響心理学っていうジャンルの学者であったり。あと、背景の音を色々活かしていこうということで日本に1人しかいないんですけど、背景音プロデューサーということもさせていただいております。

渡部:ありがとうございます。音楽の先生であると同時に環境音楽なんていうものも研究されているんですね。

小松:そうですね。研究もしていますし、自分自身でも作ったりしているので、両方の側面があるかなと思います。

渡部:先生の肩書を聞いて音響心理学っていう言葉自体も初めてお伺いしたんですけれども、これは一体どんな研究をされているんですか。

小松:心理学の一種になりまして、音が身の回りにたくさんあって、我々は意識的、無意識的に聞いていますよね。その音をテーマにその音たちが人に与える影響とか効果を数値的に研究したり実証したりする学問で、一応実験心理学の立場で研究をしております。

子どものころから「音」が大好きだった

石黒:そういう先生だからこそ、今回の『心の不調が消える聞くだけ音トレ!』っていう本をお書きいただけたのかなと思っているんですけど、先生は自らを音フェチとおっしゃっているんですが、子供の頃から今までどんなふうに音と接してきたんでしょうか?

小松:生まれた頃から音が妙に好きでして、生活の中で聞こえている音に全般的に興味があってですね。特に雷の音がすごく好きで、ゴーンとなる轟音とか爆音みたいなものに心が惹かれるところがあって、今に至るところがあります。で、生まれた時から一番昔の記憶を辿った時に、隣の家が火事になったんですよ。そこでパチパチとかメラメラみたいな音を多分1歳半から2歳ぐらいの記憶はまだ定かじゃない時の頃なんですけど、音は鮮明に感じていまして、その影響が結構あるのかなと思ったりしています。そんな感じですね。

石黒:小さい頃から今もピアノをされていますけど、ピアノは習ったりとかされていたんですか。

小松:そうですね。電子オルガンを小学校2年の頃から始めた感じで趣味みたいな感じでずっと今までやってきている状態ですね。

石黒:音大に行こうとかそういう方向は考えなかったんですか。

小松:そうですね。遊びでずっと音とか音楽をやりたいっていうのがあって、専門家になるとつまんないじゃないですか。それだけっていう狭さを感じたりしたので、趣味に留めておこうという気持ちで、音大は行かなかったです。

渡部:幼少の頃から音楽とか音にものすごい興味があって、それで今に至ってらっしゃるんですね。

小松:そうですね。

「咀嚼音」に惹かれる心理とは?

渡部:最近だとよくASMR、アスマって読むんですかね?ASMRが流行っているなという気がしていて、耳を掻く音とか咀嚼音とかを聞いてゾクゾクするというか、人によってはそういうのが心地いいって感じるみたいで動画サイトとか流行っていますよね。素朴な疑問なんですが、ASMRと言われる音は、リラックス効果みたいなものがあったりするんですか。専門家の先生から教えてもらいたいなと思いました。

小松:そうですね。ASMRを英語で言うと、Autonomous Sensory Meridian Responseですが、聴覚とか視覚の刺激によって心地よくなるっていうような感覚状態のことを言うんですけれども、自分の気持ちと関係なく音が聞こえたらゾクゾクするような反応なので、どちらかというと、リラックスとは反対の傾向があると思うんですね。なので、リラックスするためには、その真逆のアプローチというか、ASMRみたいなものよりもまた違う感覚とか心理的な特徴を使う必要があるのかなって思います。

石黒:と言う事は、リラックス効果はないってことなんですか。

小松:そうですね。ゾクゾクするっていう気持ちは、リラックスというよりも、もうちょっとアグレッシブというか、割と活動に近いところの感覚になるので、逆の方向がリラックスでは必要となるので、ASMRを聞くばっかりではあまりリラックスにならないような感じだなと思います。

石黒:じゃあ、このASMRに惹かれる心っていうのはなんなんでしょうね(笑)。

小松:そうですね。ゾクゾク感とか刺激を求めるっていうような気持ちじゃないですかね。

渡部:リラックスとは逆ですけど、楽しいとかプラスの効果を感じている人もいるということなんですかね。

小松:そうですね。興味を持ってドンドン聞いちゃいたいみたいな。イヤホンで聴かれている方が多いと思うので、のめり込んでしまうという傾向があると思うんですよ。で、そういうのとは逆にちょっとボーッと聞くとか、なんとなく聞くっていうところが多分リラックスに近いところがあるのかなと思います。

渡部:もし今、Voicyを聴いてくださっている方で、ASMRって知らないって方がいたら、このへんの音源なんかはちょっと調べるとありそうなので聞いてみてほしいですね。

石黒:YouTubeにいっぱい出ていますよね。

聴きたくない音をシャットアウトするテクニックも解説

渡部:すごく音の奥深い話が聞けましたが、石黒さん、今回先生に書いていただいた本っていうのはこういうようなことも書かれているんですか?

石黒:こういうことは書いていないですね。こういうことは書いてなくて、心の不調、鬱っぽいとか、耳鳴り、不眠、騒音、緊張、聴覚過敏だったりとか、心の不調に対してどういうふうにその不調を寛解させていくか、その方法を2つのメソッドで解説しています。あとはダウンロードできる15の音源があるんですが、その音源を使って不調を治していこうというような内容になっています。

渡部:編集者の石黒さんから今、お話がありましたけど、小松先生からはどうでしょうか。どういう方にこの本を読んでもらうといいかなというのがあったりされますか。

小松:そうですね。心の不調がある人にももちろん読んでいただきたいんですけれども、普段生活していて、現代社会に生きている多くの人にぜひ読んでほしいなって思います。というのは、音の聞き方っていうことをキャッチフレーズにこの本を書いたんですけども、そもそも音の聞き方ってあまり意識しないじゃないですか。自然と音が勝手に耳の中に入ってきているわけですからね。でも、その音の聞き方っていうのが実は人の心を幸福にもするし、不調にもさせるというような両側面があって、要は注意の向け方なのですが、ある音があったら、そこに注意を向けるのか向けないのかみたいな。そういう感覚っていうのは意外と意識している人って少ないと思うんで、その辺りをうまくコントロールしていくと普段の生活の質が高まるのかなっていう、そういう願いで書かせてもらいました。

渡部:ありがとうございます。ちなみに、音って言うと、例えば今これVoicyって言う音声を聴くメディアになるんですが、普段こういうラジオみたいなのを聴く時に聴き方のコツみたなものってあったりするんですか。

小松:そうですね。やっぱりあると思いますね。ラジオでも、ちょっと周りの音があったとしたら聞こえづらくなったりしますよね。でもその聞こえづらくなるっていうのは、音があって、絶対に音そのものがあるので、聞き方とか聞きわけがやっぱり大事だと思うんですよね。それをあえて意識的にどうやっていったらいいのかって言うのはなかなか口では伝えづらいんですが、音の聞こえ方を変えていく意識を段階的に変化させていくと普段のラジオの音とか他の音とか聞き分けられる耳が育つとか、そういうところにもつながってくると思うので、ぜひともラジオをお聞きの方も音トレやってほしいなあと思います。

石黒:私は最初、先生に聞いて驚いたのが、色々な音が混ざっている中で、自分が意識的に聞く音、意識的に聞かないようにする音というのが自分で作れるというか、そういうふうに音を取捨選択出来るっていうのはすごく驚きでした。で、そのメソッドが今回の本にも紹介されていて、不快音を出来るだけ遠ざけて意識に入らないようにする方法なんかも書かれていて、これは本当に新しいメソッドだなと感じている次第です。

渡部:ありがとうございます。では、明日も小松先生には来ていただきますので、その辺をもう少し具体的にお伺いできると思っていいんでしょうか。

小松:はい。是非ともお伝えします。

渡部:ありがとうございます。では今日はここまでということで、また明日小松先生と石黒さんとお届けしていきたいと思います。今日話してもらった、聞きたい音を聞き、聞きたくない音を遠ざけるというような方法ですね。具体的なメソッドについて語っていただきます。アテンションメソッドとマスキングメソッドという面白い名前がついています。ぜひ明日も聞いていただきたいと思います。それでは小松先生、石黒さんありがとうございました。

小松・石黒:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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