「言い方がうまい人たち」が使う会話テクニック
フォレスト出版編集部の寺崎です。
先日、「人を動かすズルい会話テクニック」というものを『面白いほど雑談が弾む101の会話テクニック』という新書からご紹介しました。
どこの世界にも「言い方がうまい人」というのがいます。今日はそんな人たちが頻繁に使うトーク術3選をご紹介したいと思います。
思考の枠組みを変える会話術
「モノもいいようで角が立つ」「丸い卵も切り様で四角」などの例えがあります。言い方ひとつで相手に腹を立てさせたり、円満にコトを運ぶことができるわけです。
心理学の「リフレーミングテクニック」を意図的に使うと会話や雑談が盛り上がります。同じことをいうのでも、イメージを変えたり、物事を強調できるからです。
また、思考の枠組みそのものを変えてあげることも可能です。パラダイム転換です。
「この手術は9割の人が助かります」といわれれば受けてみようかと思い、「この手術の死亡率は10%あります」だとやめたくなります。
「就活で100社にエントリーしたけれど就職先が決まらない」と悩んでいてもはじまりませんが、「そうだ、自分で仕事を作って会社を起こせばいいんだ」と考えれば他人と違った発想での希望も手に入れられるでしょう。
本来、物事や出来事そのものに意味はないのです。
意味付けするのは人間の思考です。よって、思考の枠組みを変える習慣をもっていると会話や雑談も弾むのです。
妻「 安心な老後のためにもマイホームを買っておきたいわ。一戸建てとマンションのどっちがいいのかしら?」
夫「30年後にローンを払い終わったら家はボロボロで、将来は人口も減るから、家はいまより安く買えるよ」
妻「 そっかー。借金背負うより借家住まいのほうがトクかもね」
■ポイント
言い方を変えることで思考の枠組みを変える!
リフレーミングテクニックで自説にラクラク誘導する。
■トーク例
「成功する確率は8割もあります」
「途中でやめるから失敗になるのです。成功するまでやめなければ失敗にはなりません」
「転職しても次がよくなる保証はありません。副業で独立のタネを撒くほうが賢明です」
編集者「先生、原稿の進捗はいかがでしょうか?」
著者 「うーん・・・あと2割まだ書けていません」
編集者「そうですか・・・(不安)」
こういう言い方をするよりも――
編集者「先生、原稿の進捗はいかがでしょうか?」
著者 「はい。もう8割がた終えています。あと少しです!」
編集者「そうでしたか!では、お待ちしております!(希望)」
――という風に伝えたほうがいいということですね。
「気の毒な事情」を告げてわがままを通す
前項で思考の枠組みを変える「モノの言い方」について紹介しましたが、同じように思考の枠組みを変え、さらに自分にとって都合のよい方向にコトを運ぶ手法があります。
「すいません、急いでいるものですから」──困った事情を伝えるひとことです。
こう告げると、道を塞いで歩いていた人たちも前を空けてくれたり、コピーを取っていた人も順番を譲ってくれたりするのです。困った事情を伝えると「わがまま」が通る──という事例で、心理学ではよく知られた原理です。
気の毒な事情を抱えている人を目のあたりにすると、人は「援助行動」に及ぶのです。「援助行動」とは、自分に何の関係もないのに、利他的行動を取ってしまうことです。
上司「 きみは、いつも残業を断ってさっさと帰るけど、仕事が好きじゃないのかい?」
部下「 申し訳ありません。実は両親がともに寝たきりで、私には介護の時間がどうしても必要なものですから」
上司「 えっ! そうだったのか、知らなかったよ、すまん。言ってくれればよかったのに……」
一瞬にして相手にパラダイム転換をもたらせるわけです。
A「あたし、母子家庭で母の入院費用のためにキャバ嬢をやってます」
B「えっ? そうなのか。エライなきみ、指名で延長してあげよう」
■ポイント
言い方ひとつで「わがまま」が通ってしまう!
「援助行動」を誘発される人間心理。
■トーク例
「会社をリストラされまして」
「両親が寝たきりなもので」
「きのう泥棒に入られまして」
「実家が火事で全焼したんです」
「うしろのクルマに追突されて」
「10万円落としちゃって」
編集者「先日、あと2割で脱稿するという話でしたが、その後の進捗はいかがでしょうか?」
著者 「申し訳ありません。きのう泥棒に入られまして、これまで書いた原稿のデータが入ったノートパソコンも盗られちゃったんです・・・」
編集者「えええ!マジすか!しょうがないので、1ヶ月刊行伸ばしましょうか……」
・・・なーんてこともあるかもしれません。
そういえば、前にいた会社で完全に朝寝坊してしまったことがあり、上司に正直に報告しようとしたら、奥さんに「寝坊したなんて馬鹿正直に言うのはビジネスマンとしていかがなものか」と止められ、次のような言い訳を使ったことがあります。
「トイレの水が溢れて止まらなくなってしまい、水道屋さんを呼んで修理していて遅れた」
さすがに嘘バレバレなのですが、そこは「嘘も方便」ということで。
「仮定の話」と振って本音を引き出す
雑談を交わしていても、話題がプライベートにおよんだり、ビジネス上のデリケートな部分にさしかかると誰もが言葉を濁します。
どこまで話していいものやら躊躇(ちゅうちょ)して、ガードが固くなるからです。
ストレートに尋ねると、緊張させて、よけいに口を閉ざさせることにもなるでしょう。
そんな時には、「もしかしてなんですが」とか「たとえばの話なんですが」と軽い枕言葉をつけて「仮定形の質問」にすると、ポロッと本音がこぼれ落ちます。
「仮定の話」と錯覚し、ついつい秘密の扉を開けてしまうのです。
A「 もしかしてなんですが、愛妻家の部長でも、浮気の経験とかはありますか?」
B「 そりゃまあ、若い頃はな。お水の女性と少しは……。昔の話だぞ(汗)」
* * *
A「 たとえばの話ですけど、この部品の製造原価って、せいぜい10%ぐらいですよね?」
B「 いやいや、そこまで低くはないよ。まあ20%ぐらいかな……(汗)」
* * *
A「 仮の話だけど、きみぐらいだと、年収は1千万円超えてるよね?」
B「 あのねえ、昔はそれぐらいあったみたいだけど……(汗)、オレは43だけどまだ届かないよ。もう、あと5年ぐらいかな」
■ポイント
相手の「本音」や「秘密」をほじくり出す!
仮定形の質問で本音がポロポロ。
■トーク例
「たとえばの話ですが」
「もしもですよ」
「まあ、大体のところでいいんですが」
「もしかしてなんですが」
「仮の話なんだけど」
「ざっくりの話でいいんですけどね」
編集者「もしかしてなんですが・・・まだ1行も書いていないなんてことはありませんよね?」
著者 「いやいや・・・さすがに(汗)。8000字ぐらいは書けてますよ」
編集者「(8000字!マジか!)」
この「もしかして」「仮の話だけど」「例えばの話ですが」は相手の真実をダダ洩れさせるマジックワードといえるでしょう。
ぜひ、使ってみることをおすすめします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?