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「思いつきで進むのは、もうやめた。」と思わせる先の見えない時代のロングセラー

2020年1月、今からだと4年近く前に刊行された羽田康祐 k_bird『問題解決力を高める「推論」の技術』は個人的に思い入れがあります。

当時、著者の羽田さんはまだ商業出版の経験がない新人だったのですが、私の

「誰もが名前を知っているけど使う機会があまりない帰納法や演繹法をテーマにしたビジネスに使えるロジカルシンキングの本を書けないでしょうか」

と無茶振りしたところ、期待以上の原稿が送られてきました。「これは絶対に良い本になる! 素晴らしい著者を見つけた!」と、それを読んだときの興奮は今でも覚えています。
事実、つい先日も増刷し、8刷3万7000部のロングセラーになっています。
そして、今月から帯をリニューアルすることにしました。帯といっても、ほとんどカバーと同じ高さの通称「全帯」と呼ばれる仕様です。
オリジナル版は、比較的アッパー層向けの装幀だったのですが(内容はわかりやすい事例があってとても平易です)、リニューアル版では、そうした本に気後れしてしまうような層にも手にとっていただきたいというコンセプトでデザインしていただきました。
そのデザインがコチラです。

クリックするとアマゾンのページに飛びます。
アマゾンで購入した場合、オリジナル版、リニューアル版の装幀を選ぶことはできませんので、ご注意ください。

イラストが素敵です。イラストレーターはあきさんです。
Twitter:@Aki_a0623
Instagram:aki_a0623

先の見えない時代を流されるように歩むのではなく、自分の頭を使って進もうというメッセージを込めるため、ストーリー性も出るようにイラストを選び、キャッチコピーを考えました。

まだ本書の存在を知らないという方へ、以下、本書のまえがきを転載させていただきます。4年近く前の本ですが、むしろ今、必読の本です。気になった方はぜひ手にとってみてくださいね。


まえがき 「正解」から「可能性」へ

❖VUCAの時代に必要な「推論力」

 本書を手に取ったあなたなら、何らかの理由で「問題解決力を高めたい」あるいは「推論力を身につける方法が知りたい」と考えていることだろう。
 21世紀に入ってから約20年の月日が流れ、多くの市場は成熟化し、簡単には利益を上げにくい状況だ。人々のライフスタイルは多様化し、商品やサービスのライフサイクルは年々短縮化している。インターネットの浸透によってあらゆる商品・サービスはスペックと価格で同列比較され、価格下落の圧力は深刻さを増している。
 さらに追い打ちをかけるように、世の中にはビッグデータがあふれ、デジタル技術やIoT(モノのインターネット)は加速度的に進化している。多くの企業・ビジネスパーソンは、これまでに経験したことのない未曽有の変化に晒されている。
 現在は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)を略して「VUCAの時代」といわれるように、「企業の行く末」はもちろん「組織の在り方」「あなた自身のキャリア」……、一寸先の未来すら読みにくい時代だ。
 こうした時代には「今、目の前に見えるもの」から物事を考えるのではなく、「その背景には何があって」「どのような法則が働いて」「どのような未来になりうるのか?」を見抜く必要が生じてくる。
 そうである以上、今あなたに必要なのは、不確実性の高い環境変化を読み解いた上で確実性の高い結論を生み出す「推論力」だ。そして、推論力を元にPDCAを愚直に回すことによって初めて、さまざまな問題を解決できるようになる。
 筆者はこれまで、外資系コンサルティングファームと広告代理店でキャリアを積んできたが、その経験からも、これからの時代に必要な能力は左脳と右脳を自由自在に駆使しながら、未来の可能性を見いだす「推論力」であると断言できる。

❖「正解」から「推論」へ

 かつて筆者は「この世の中には、どこかに正解があるはず」と信じて疑わなかった時期がある。

  • この世界には、どこかに「絶対的な正解」があるはずだ……。

  • 物事には正解があり、自分は単に「正解」を知らないだけ……。

  • 「正解」を知りさえすれば、自分はもっとできるのに……。

 当時思い描いていた「正解がある世界」で重要だったのは「自分が正解を知っているかどうか」であり、「正解を知らないこと」は「恥ずかしいこと」とイコールになる。
 このようなメンタルモデルが回りだすと「正解」はおのずと「探すもの」「与えられるもの」になっていき、問題に対する態度は受け身なものになっていく。その結果、何かわからないことがあると、すぐにインターネットで検索し始めたり、詳しい人を捕まえて話を聞いたり、ひたすら本を読んで知識を学ぶという行動に出るようになる。
 しかし、そこに「正解」などあるはずもなく「情報」や「知識」が断片的に散在しているだけだ。やがて、情報や知識の裏側にある「見えない前提」や「関連性」、あるいは「法則」に気づきにくくなり、自分の頭で考えることをしなくなる。結果、常に周囲の顔色を窺い、主体性を失っていく……。
 人は、主体性を失うと自信と誇りを失っていく。なぜなら主体性がないということは、自分の人生を他人任せにすることであり、自分の人生を放棄することと等しいからだ。
 そんな筆者に転機が訪れたのは「この世の中に、教科書や百科事典のような正解は存在しない」という当たり前の事実に気がついたときだ。
 社会も、ビジネスも、そしてこれを読んでいるあなたも、常に未来に向けて進んでいる。そして、未来を正確に予言できる人間など存在しない以上、この世の中には「絶対的な正解」など存在しない。あるのは未来に向けたさまざまな「可能性」だけであり、その「可能性」は能動的なアクションを通して変えたり、つくったりしていけるものだ。
 未来とは、万人にとって「未知のもの」である以上、「正解」や「不正解」という概念自体が存在せず、自らの推論力と実行力で切り拓いていけるものだ。
「正解」を探し続けるメンタルモデルは「本来、ないはずのもの」を追いかけることになる。その結果、常に「自分は正解に至っていない」という自己否定の感情を生み、その感情が、自分に対する自信を削り取っていく。
 しかし、もしあなたが「正解がある世界」の幻想から解き放たれ、未知のものに対する「推論力」を身につけることができれば、問題解決はもちろん、自分自身の在り方自体も変えていくことができる。ないはずの「正解」から逸脱することを恐れ、何も行動しない自分を変えることができる。
 その先にあるのは、環境の変化からさまざまな可能性を見いだし、適切な推論を立て、能動的に問題解決をしていこうとする自分だ。

❖「根性論」から「方法論」へ

 筆者がこれまで身を置いてきたコンサルティング業界や広告業界は「決まった売り物」が存在しない。そのため「推論力」を総動員して論理や発想を導き出し、常に高いレベルの問題解決策を提供し続けなければ報酬を得られない。つまり、一人一人が「なるべく早く」「なるべく高いレベルで」推論力を鍛えることが生命線となるビジネスだ。
 こう書いてしまうと、あなたは「推論力と言われても、自分には敷居が高い」と感じるかもしれない。しかし、コンサルティング業界と広告業界の両方の業界に身を置いた者として、「実はそうではない」と断言できる。なぜなら推論力とは「根性論」ではなく「方法論」で身につけていけるものだからだ。
 推論力は「頭の良し悪し」という能力の問題ではなく、「頭の使い方の上手い下手」という「方法論」の問題だ。そして推論力が方法論の問題である以上、そこには再現性が存在する。つまり「頭の使い方」や「その手順」を理解し、地道に習慣化すれば「誰でも」「頭の良し悪しとは関係なく」身につけることが可能だ。
 重要なことなので繰り返すが、この世の中のどこかに「正解がある」と考えるのは幻想にすぎない。今、あなたの目の前にあるのは、多くの「可能性」だけだ。巷にあふれる「正解」とされる知識は、過去の先人たちが生み出した「知恵」ではあるが、あなたから見れば「単なる先人からの借り物」に過ぎない。しかし、もしあなたが「推論力」を身につけることができれば「先人からの借り物」を「未来に向けた知恵」に変えていくことができる。

❖本書の構成

 本書は、これまで筆者がコンサルティングファーム及び広告代理店で学んだ「推論力」について、理論だけでなく「頭の使い方の手順」や「実践の勘所」、あるいは「ビジネスへの活かし方」も含めて解説する書籍だ。

 第一章では、本書における「推論力とは何か?」を定義し、推論力を身につけるべき5つの理由について解説する。この章をお読みになれば「推論力」はビジネスパーソンに必須となるさまざまなスキルの「中核」に存在し、かつ、これからの時代に求められる希少性の高いスキルであることがご理解いただけるはずだ。

 第二章では「優れた洞察を生み出す推論法」である帰納法について解説する。
 帰納法といえばロジカルシンキングを学ぶ上で必須の論理展開とされるが、巷の解説の多くは「論理展開の方法」にしか触れられていない。しかし、真の意味で帰納法をマスターするなら「論理展開の方法」だけでなく、「頭の使い方の手順」や「どのような局面で実務に活かせるのか?」を理解し、習慣化することが極めて重要になる。
 よって本書では「帰納法の頭の使い方」を丁寧にひもとく。また、帰納法の限界を逆手にとって応用することで、これまでの常識とは異なる新しい可能性を見いだす方法についても解説する。

 第三章では「予測と検証を可能にする推論法」である演繹法について解説する。
 演繹法は極めて厳密性の高い推論法であるため、「ビジネスでは扱いにくい」と評価されることが多い。しかしそれは誤解であり、演繹法を別の視点で捉えれば、ビジネスでの活用局面は大きく広がる。
 よって、本書では演繹法の「頭の使い方の手順」を解説しつつも、さまざまな事例を用いて「ビジネスに活用しやすい5つの方法」について解説する。
 また、あなたは演繹法といえば「ガチガチの三段論法」という印象を受けるかもしれないが、頭の使い方を工夫することで「常識を覆す発想」を生み出すことも可能になる。その方法論についても解説する。

 第四章では「仮説を生み出す推論法」であるアブダクションについて解説する。アブダクションは、近年脚光を浴びつつある推論法であり「仮説思考」には欠かせない推論法だ。また、あなたの成長を加速させる「入口」ともなりうる推論法でもある。
 よって、こちらも「頭の使い方の手順」や「ビジネスへの活かし方」について丁寧にひもとこう。

 第五章では「成果を倍増させる推論力の合わせ技」について解説する。
 本書を手に取った方ならおわかりだと思うが、推論力は、ビジネスに活かせなければ成果はゼロだ。そして、ビジネスに活かすためには「個々の推論法の頭の使い方を知る」だけでなく「組み合わせて運用する頭の使い方」も試される。
 よって、第五章ではビジネスの現場で「帰納法」「演繹法」「アブダクション」の合わせ技を使い倒す方法について解説する。

 もし、本書を最後までお読みいただき「帰納法」「演繹法」「アブダクション」を日々の習慣にすることができれば、あなたは「推論力」という武器を手に入れ、自分に自信を持ち、新たな可能性を切り拓いていくことができるようになるはずだ。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 いしくろ)




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