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なのです考。
こんにちは。フォレスト出版の寺崎です。
10月の新刊『誰でも龍とおしゃべりできる龍トレ』(橋爪ゆりあ著)が昨日校了しました。
※校了=すべてデータFIXして印刷・製本へ渡ること
文章を最後の最後まで推敲していて、いつも思うのは「文末表現って、むずかしいなぁ」ということです。
ビジネス書の世界では「ちゃんと言い切る」ということが大事と言われています。そうでないと、読者が不安になってしまうから。
「○は△だと思います」
ではなく
「〇は△です」
と言い切る。
言い切る勇気。
もっと言えば
「〇は△なのです」
がいちばん強い表現。
しかし、この「なのです。」が、いつもひっかかるのです。読者を説得するにはいちばん強い文末表現なのですが。それだけに「なのですの使い過ぎ」には要注意なのです。
だから、著者の原稿を編集していて、いつも注意しているのが「なのです濃度」。
文末表現として「なのです。」が増え過ぎると、なんか偉そうに感じませんか?
わかりやすい例を挙げます。
フォレスト出版はビジネス書を扱う出版社です。
フォレスト出版はビジネス書を扱う出版社なのです。
いかがでしょうか?
「なのです」って言われると、なんか偉そうに感じますよね。
ビジネス書を扱う出版社?んなこと知らねーよ、と。
昔、ある大学教授の著者に現代思想の企画を依頼して本をつくったことがありました。
当時は自己啓発ジャンルの「文末を『なのです。』にすることで読者を説得できる」という手法を疑わない信者だったので、著者が書いてきた文章の末尾「です。」のいくつかを「なのです。」に変更しました。
すると、初校ゲラの段階で著者から連絡がきます。
「文末に『なのです』は絶対にやめてください。私の過去の著作もご覧になっていただければわかると思いますが、強調表現の『なのです』は一切使っていないはずです」
この著者からは「子供」を「子ども」とする言葉狩りについても舌鋒鋭く指摘されました。たいへん勉強になりました。
ところで、文章の文末の違いによる印象ってかなり重要です。
たとえば、「です・ます調」でいくのか、「だ・である調」でいくのかひとつとっても悩ましいところです。
「です・ます調」よりも「だ・である調」のほうがエモい文章になります。
今日、ファミリーマートでファミチキを買いました。考えてみたら、ファミチキを買ったのは離婚した日以来でした。妻の好物であるファミチキは私にとってはジャンクフードですが、食が細い彼女にとっては重要なたんぱく源でした。
これを「だ・である調」に変えてみます。
今日、ファミリーマートでファミチキを買った。考えてみたら、ファミチキを買ったのは離婚した日以来だ。妻の好物であるファミチキは私にとってはジャンクフードだが、食が細い彼女にとっては重要なたんぱく源だった。
ちょっとエモくなりましたよね。
これを自己啓発にします。
今日、ファミリーマートでファミチキを買いました。そのとき気づいたのは、ファミチキを買ったのは離婚した日以来だということです。妻の好物であるファミチキは私にとってはジャンクフード。しかし、食が細い彼女にとっては重要なたんぱく源なのです。
食が細い彼女に対して、ちょっと上から目線な感じがしますね。最後の「なのです」がじわじわ効きます。
ちなみに以前、A級クラスのライターさんに聞いた話では「です・ます調」よりも、「だ・である調」で文章を組み立てる方がずっと難しいという話でした。
では、「なのです考」の最後のまとめとして、「だ・である調」の名サンプルをご紹介しよう。ビジネス書のロングセラー『イシューからはじめよ』(安宅和人著・英治出版)である。
「イシューとは何か」。それについてはこの本を通してじっくり説明していくが、実際のところ、「何に答えを出すべきなのか」についてブレることなく活動に取り組むことがカギなのだ。イシューを知り、それについて答えることでプロジェクトの立ち上がりは圧倒的に速くなり、混乱の発生も予防できる。目的地の見えない活動はつらいが、行き先が見えれば力が湧く。つまり、知的な生産活動の目的地となるものがイシューなのだ。
「だ・である調」の場合は「なのです」が「なのだ」になるわけなのです。「なのだ!」と言われると妙に納得してしまう自分がいます。
ビジネス書においてはやはり「なのです」「なのだ」の文末表現は欠かせませんね。亜流として「なんです」というのも、たまにあります。ちょっとくだけて読者に寄り添う感じです。
メモレベルの記事でした。すいません。
では、また。
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