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#303【他社本研究】『暮らしを変える書く力』

このnoteは2022年1月7日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

渡部:フォレスト出版チャンネル、パーソナリティの渡部洋平です。今日は「出版の裏側」、フォレスト出版チャンネルの大人気シリーズですが、第4回目、他社本研究をお届けしてまいりたいと思います。それでは森上さん、寺崎さん、よろしくお願いします。

森上・寺崎:よろしくお願いします。

渡部:今日は、寺崎さんの回ということになるんでしょうか?

寺崎:はい。ちなみに大人気コーナーとか言わない方がいいよ。寒いから(笑)。

渡部:ハードル上げちゃいますかね(笑)。

寺崎:ちょっとやめてほしいな・・・(笑)。

渡部:(笑)。

寺崎:今日は『暮らしを変える書く力』っていう、一田憲子さんっていう方が書いた本なんですけど、この方は編集者・ライターで、「暮らしのおへそ」とか、「暮らしのまんなか」という雑誌の編集長をやられている方で、僕も全然存じ上げなかった方なんですけど、たまたま本屋で見て、帯がいいんですよ。“会えないときこそ、必要なのは「言葉」だ。“って。今しびれるじゃないですか。緊急事態宣言で、なかなか人に会えないと。そういう時にもやっぱり会いたい人っているんだけど、会えないので。そこで必要になるのが言葉。だから、その言葉の大事さみたいなことを書かれているんですけど、内容がなかなか色々と勉強になったので、ここに挙げた次第です。

森上:これは2021年、去年の4月の刊行だよね?

寺崎:そうですね。

森上:時代に本当にマッチした帯コピーという。このキャッチはいいコピーだよね。

寺崎:そうですね。出版社はKADOKAWAさんで、僕の手元にある本は5月で3刷になっていますね。

森上:この『暮らしを変える書く力』という本は、帯コピー自体はもちろん時代に即しているけど、それを外したとして考えた時に、書く力ってやっぱりこの時代、昔以上に増えていると思いますよ。

寺崎:そうなんですよね。昔、電話が発明されて、ポケベルの時代があって、携帯電話の時代があって、スマホがあってみたいな感じで、今はメールやメッセンジャーがメインで、会議もzoomとかだったりするんですけど、かえってメールとかがなかった時代に比べて、書く行為ってすごく増えましたよね。書いて誰かと意思疎通を図るっていう。コミュニケーション手段が豊かになったんだけど、実はそんなに変わってないっていうか。大昔の平安時代と変わってないっていうか。実際の人間の声としては。

森上:本当にそうだと思うね。だって、我々が学生時代にポケベルが出て、あれで文字でコミュニケーションっていうのをまた取るようになって、その前までは文字のコミュニケーションなんて、ほとんど取らなかった。手紙、それこそラブレター、それぐらいだよね。置手紙とか。

寺崎:基本電話だったよね。

森上:そう。そうなると、今の時代になればなるほど書くことがすごく増えているし。

寺崎:「電話をかけてくる人とは仕事をするな」っていう、堀江貴文さん、ホリエモンとかいるでしょう。電話は相手の時間を奪うっていう。そういう人、今は多いですけどね。

森上:まあ、言わんとすることはわかるけどね。だからこそ、やっぱり書くっていう力は求められるね。

寺崎:そうなんですよ。

森上:そういう意味では、書くことが増えた今、どういう言葉遣いで自分の想いを伝えていくか。意図を伝えていくか。言いたいことを伝えていくか。そこを本当に求められていると思います。

寺崎:この著者の人は、想いは言葉にしないと届かないっていうことを言っていて、お母さんとの話が出てくるんですよ。元々お母さんって手紙を書いたりするような人じゃなかったらしくて、だけど卒業式に学校側が保護者にサプライズとして頼んだらしくて、その手紙をお母さんが読むわけですよ。その時に、自分が愛されて育てられたっていうことを文字という形で読んで、激しく心を揺さぶられたっていう。それでやっぱり言葉にしないと想いは伝わらないっていうのが・・・。僕も、家族にちゃんとありがとうとかほとんど言ったことはないんですけど(笑)、本当はちゃんと言わなきゃいけない。そんなことを思い起こさせる内容でした。

森上:それは書くというよりも、言葉で伝えるっていう。

寺崎:そうですね。

森上:それはあるよね。

寺崎:あと著者さんは編集者の方なので、書くことを依頼する、執筆を依頼することが、日常茶飯事だと思うんだけど、絶対にここぞっていう時には手紙を書くって書いてありますね。

森上:これはそうですよね。未だに俺もたーまにそれ、やるけどね。やっぱりメールよりも手紙っていう方が届くことっていうのがあるなあっていうのは思いますね。ここぞという時ね。ここぞという言い方だと、そこに差があるような感じがするんですけど、逆にメールとかも見てくれなそうな人って言った方が正しいのかな。

渡部:森上さんのここぞとは、どこぞと思ったんですけど(笑)。なるほど。

森上:そうそう。ちゃんと噛み砕いて言うと、そういうことかな。メールも見てくれなそうな人は逆に封書だと届くっていう。見てもらえる確率が高いっていうのはありますね。

寺崎:手紙のエピソードで面白かったのが、この著者の人が「暮しの手帖」って、あるじゃないですか。あの雑誌で、やかんの特集があったらしいんですよ。で、著者が使っているやかんを撮影して、インタビューをお願いしたい、と。そのお願いが便箋3枚に手書きの丁寧な文字で綴られていたらしいんですね。それを手にした時に、結局取材先って一人だけじゃなくて、複数人いるわけなんだけど、その全員にこんな丁寧な手紙を送ってくれるっていうことは、すごく自分が大切に扱われているんだなということを感じたらしいんですよ。手紙を書くっていうことは、すごく相手を大切にしていることを伝えられる。そういう手段だというふうに書いていますね。

森上:本当に。もらった方はやっぱり特別感を感じますよね。実際、そこに時間というものを相当使っているからね、便利な時代なほど。ちょっとこれスピリチュアル的になっちゃうんですけど、文字ってやっぱり念が入っているような。

寺崎:あるね。ある。

森上:あるじゃないですか。まだ読者カードをちゃんと書いて送ってくださる方とか。あと、意見を封書で送ってくださる読者の方とかいらっしゃるじゃないですか、著者宛とかで。やっぱりそこの文字には何かエネルギーを感じるよね。

寺崎:感じます。だから、〇〇ご担当者様って、著者名で、自分の担当の著者宛に封書でくるじゃないですか。あれを、開ける時がいつも怖いんだよね。

森上:すごくわかる。ドキドキするんだよな。文字にその人のエネルギーを感じるよね。怖いと思わせるのか、すごく気持ちよくさせるのかって。やっぱり書き文字一つとっても、その雰囲気を人間って察知するんだなって、改めて思いますね。

寺崎:だから逆に僕は手書きの手紙とかもそうだし、メールもそうなんですけど、さっき森上さんが言った念が届くっていうことを信じた上で言うと、なるべく相手のことを「大好き、大好き」って思いながら書いている。

森上:大事だよね。

渡部:ラブレターですか。

寺崎:ラブレターですね。そういったメールのやり方も具体的なたたき上げの方法論が色々と書かれていて、例えば、お礼のメールだとするじゃない。そこに血を通わせる方法っていうのが、自分と相手にしか分からないことを書くんだって。誰にでも書けるお礼のメールだと、やっぱりスルーされちゃうと言うか、心に残らないので、例えば「あの時にいただいたキャンディ、疲れた体に染みました」とかね。たった1個のキャンディなんだけど、そのキャンディのエピソードは私とその人しか知らないこと。だから、その2人にしか通じない何かがそこに立ち上がると書いてあります。

森上:やっぱり何でもコピペができちゃう、フォーマット化されている時代だからこそ、2人だけで共有できる情報っていうのは価値を持つっていうことだよね。本当にそれは感じますよね。俺もできるだけ意識しようと思うんだけど、やっぱり忙しい時はパパッと事務的にやっちゃう時も結構あるんですけど、そこは気をつけたいですよね。いかにオリジナリティを出すか。

寺崎:一言あるだけで違いますよね、受け取り方が。

森上:わかる、わかる。

寺崎:僕も、結構お付き合いが長いライターさんで、メールの最後に必ず入れてくれるのが「今日もよい一日でありますように」って。そういうのを毎回入れてくれるんですよ。

森上:毎回、同じ言葉なの?毎回、違う言葉なの?

寺崎:毎回、だいたい同じなんだけど、「今日も寺崎さんにとってよい一日でありますように」みたいな感じなんだよ。あとね、渡部さんも使えると思うんだけど、メールの表現、言葉の使い方なんだけど、メールでは自分の出し方をコントロールするって言うんですよ。どういうことかと言うと、まず思わせぶりな表現は避ける。で、著者さんがメールを書く時に1番気を使っているのが、返事を期待した終わり方にしないっていうことなんだって。相手が「すごいですね」とか、「素敵ですね」と言わざるを得ない状態にしない。

渡部:あー。なるほど。

寺崎:例えば、季節の挨拶と一緒に「私は先日、お豆を煮てぜんざいを作りました。やっぱり自分で作ると美味しいですよね。」といった具合に、自分のことを書くことがあるけど、その“私”の言葉のオーラが出過ぎるのには注意と。人は自分のことを書くのは楽しいから、つい書きすぎてしまうものだけど、相手にとっては豆を煮たなんていうことは、たいして興味がないと。

森上:なるほど。そうかもしれないな。答えに困る時ね。反応に困るよね、確かに。

渡部:おじさん構文じゃないですけど、自分語りみたいな。そういう感じにならないように。つまるところ、どういう文章を書けばいいんですか?

寺崎:つまるところ、事例で言うと、まず相手の返事を期待した思わせぶりな文章を書かないっていうことなんですけど、悪い例を言いますね。「私はそれがあまり好きではありません。でも、皆さんがいいと思うのなら、私の意見なんて取るに足りませんよね。」これが悪い例。

渡部:なるほど(笑)。例えばですけど、「私の意見は無視して進めてください。」とかだったら、いいんですか?

寺崎:そう。まさに。回答としては、「もしそっちの意見になっても私は納得できるので、皆さんで決めてください。」と。

森上:なるほど。出ちゃっているよね、さっきの悪い例だと。自分のやつを泣く泣く下げるみたいな。そんな感じの香りが出ちゃっているよね。自分の意見に対して、しがみついている感じが出ちゃっている。

渡部:今のポイントっていうのは、ビジネス文書とか仕事っていう意味合いですか?

寺崎:そうです。ビジネス文書です。

渡部:じゃあ、例えば1対1で好きなようにやればいい時は、好きなようにやれって話ですか(笑)?

寺崎:そうそう。プライベートは全然いいんですけどね。それとか、相手のために使った時間が行間から溢れ出るとか、相手にムダな時間を使わせないメールの形とかね。結構、繊細な言葉の世界のことを書かれているんですよ、この本。

渡部:仕事っていう意味合いだと、すごく分かる気がしますね。自分のためにみたいになってしまって、それを文章ににじませてしまうみたいなのは確かにあるかもしれませんね。気をつけなきゃいけませんね、それは。

森上:でも、相手との関係性にもよりますよね。相手との関係性によっての使い分けみたいなものとか、相手の性格とかにもよるんだろうし、色々考えちゃいましたね。逆に距離を縮めた方がいい時は、あえて笑えるような、近づけるようなものを・・・。でも、相手はそれを望んでない可能性もあるって言うか。相手によって変わってくるっていう。

寺崎:そうですね。著者さんによっては、ものすごく言葉のムダを省きたがる人とかもいるしね。やり取りのムダをね。「お世話になっております。」とかもいらないっていう人も多いからね。

森上:でも、そういうのがないと「失礼だ」って思う人もいる。

寺崎:いるんだよね。

森上:だから、その相手に対しての想像力をどれだけ働かせられるか、そこが問われるような感じがしますよね。改めてその辺りは注意しようかなと思いましたね。

渡部:では、最後に寺崎さんのお勧め本・・・。お勧め本の回なんですかね?

寺崎:基本的にはそうです。

渡部:では、寺崎さんが今日紹介してくださいました『暮らしを変える書く力』、一田憲子さんですね。最後に一文をリスナーの皆さんに紹介して終わりたいと思います。「言葉を見つけるということはわかったつもりだったのに、実はわかっていないことに輪郭をつけて誰かに渡すこと。そして誰かの見つけた真実と交換し合うこと。」ということですね。奥深いですね。読み方によって意味が変わっちゃいそうなんですけど、そのぐらい繊細な文章な気が逆にしたんですけど、そんなことないですか?

寺崎:いや、奥深いですよね。実は自分がわかっていなかったことに輪郭をつけて、それを誰かに手渡す。で、相手が見つけた真実と交換しあうっていうのが、めちゃめちゃ深いなって。

渡部:ということでした。では、今日は「出版の裏側」寺崎さんの他社本研究ということで、お届けしました。森上さん、寺崎さん、ありがとうございました。

森上・寺崎:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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