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KPIマネジメントは「ネックレス」でたとえると腹落ちする。

突然ですが、あなたが携わる商品やサービスにおいて、次のような悩みを抱えていませんか。

「売上がなかなか上向かない」
「いい人材が定着しない」
「集客がうまくいかない」
「顧客クレームに悩まされている」

おそらく最初の「売上向上の伸び悩み」はどんな業種であっても、永遠の課題、永遠のテーマかと思います。出版サービス業に携わる弊社とて例外ではありません。

今日はそんなビジネスの悩みを解決する「制約条件理論による問題解決」の手法をご紹介します。参考テキストは「日本でいちばん売れてるKPIの本」と銘打たれた累計8万部突破最高の結果を出すKPIマネジメントの姉妹書最高の結果を出すKPI実践ノートです。

 各論に入る前に、CSF (Critical Success Factor)なを見つける時に重要な考え方を紹介します。
 それは「制約条件理論(TOC = Theory of Constraints)」です。
 制約条件理論という言葉は知らなくても、エリヤフ・ゴールドラット教授の著書『ザ・ゴール』シリーズを読まれた方は多いかもしれません。
 制約条件理論はさまざまな場面で役立つ考え方です。
 もちろんKPI マネジメントにも有効です。プロジェクトマネジメントでもそうです。予算管理や時間管理でも役立つ応用範囲の広い理論ですから、ぜひポイントを確認しておきましょう。
「制約条件理論」を理解してもらうために、私は2つのたとえ話をよくします。1 つは「ネックレス」の話。もう1 つは「工場の組立ライン」の話です。

中尾隆一郎『最高の結果を出すKPI実践ノート』より

制約条件理論は「ネックレス」で説明できる

 図8 のようなネックレスを引っ張ると、どこが切れるでしょうか?
 典型的な回答が「留め金の部分」と「ペンダントトップの部分」というものです。
 実際はどうかというと、どちらもそうかもしれませんが、そうでないかもしれません。スッキリした回答ではなくて申し訳ないです。
 正しい回答は「一番弱い部分」です。
 ですので、一番弱い部分が「留め金の部分」あるいは「ペンダントトップの部分」であれば、これらが回答になります。
 なーんだって思うかもしれません。しかし、この「一番弱い部分が切れる」というのが最適な回答です。
 当たり前の話ですが、ネックレスは切れてしまったら使い物になりません。ですので、ネックレスを使うためには、この「一番弱い部分」を強化しなければいけません。弱い部分を強化して、引っ張ってもその箇所が切れないようにします。
 その後、このネックレスを引っ張るとどこが切れるでしょうか?
 もう分かりますよね。
 「次に弱いところ」です。
 そして、順番に弱いところを発見し、次々に強化していき、引っ張る力より全ての箇所が強くなれば、ネックレスはどんなに引っ張っても切れなくなります。
 最も弱いところを順番に強化していけば、ネックレスは強くなる。
 これが、最もシンプルな制約条件理論を理解するためのメタファー(たとえ話)です。
 そして、この弱い部分こそがCSF(Critical Success Factor)なのです。

中尾隆一郎『最高の結果を出すKPI実践ノート』より

ちょっと抽象的な説明に感じるかもしれませんが、「売上を伸ばす」ために考えるべきは、この「弱い部分」がどこなのかを特定するのが最初の重要なポイントです。

たとえば、「営業成績を上げる」という課題に対してどうアプローチするかというと、まずは営業プロセスを分解します。

①営業先リストアップ
②アプローチ
③ヒアリング
④プレゼンテーション
⑤クロージング
⑥納品

①~⑥のどの箇所が一番弱いのか?
弱いところが特定されたら、上記の「制約条件理論」に基づいて、弱い部分から強化していけば全体が強くなるというわけです。

あるいは一般的な事業会社であれば、①集客、②ナーチャリング、③営業、④カスタマーサクセス(CS)という流れがあるかと思いますが、これらのどこが一番弱いのかを探る作業となります。

組立ラインの「制約条件」はどこか

 もう1 つのたとえ話。今度は工場の組立機械です。

 図9 のように組立ラインの左側から部品を組立機械A → B → C と順番に通します。すると右側に完成品ができます。組立機械の生産能力は、それぞれ1 時間当たりA:50 台、B:20 台、C:40 台とします。
 講演やワークショップでは、この図を見せながら、こんな質問をします。

「この条件下で、この組立ラインは1 時間当たり何台の完成品を作ることができるでしょうか?」

 回答は、「1 時間当たり20台の完成品ができる」です。
 いかに組立機械AとCが1時間当たりにそれぞれ50台、40台の生産能力があったとしても、組立機械Bの生産能力が1 時間当たり20台なので、結果として製品は20台しか製造できません。
 組立機械Bが「制約条件」になり、全体の生産性を決定します。つまり、この組立機械Bが、プロセスの中で一番弱い箇所であり、CSF(Critical Success Factor)にあたります。

中尾隆一郎『最高の結果を出すKPI実践ノート』より

この場合、生産台数という明確な基準があるため、いちばん弱いところの特定は容易ですね。では、全体の生産性を上げるためにはどうすればよいのでしょうか?

生産能力が一番低いところがCSF

 では、この組立ラインの生産性を1 時間当たり35台にするには、どうすればよいでしょう?
 これもいろいろな方法があります。しかし重要なポイントは1つです。
 それは、組立機械B の生産能力を現在の1 時間当たり20台から35台に引き上げる必要があるということです。
 具体的には、もし組立機械B の旧型(生産能力1 時間あたり15 台)が倉庫に眠っていれば、その旧型機械B を引っ張り出してきて、並行稼働(新型の組立機械B に加えて倉庫にあった旧型の組立機械B も両方とも稼働)させればよいのです。
 これで、次の図10 のように1 時間当たり、35 台の完成品が作れる可能性が出てきました。

中尾隆一郎『最高の結果を出すKPI実践ノート』より

 では、新旧の組立機械Bを扱うオペレータをどう配置すればよいでしょうか? あなたが工場長だったら、どのような判断をしますか?
 以下の選択肢から選んでください。
 
 ①新規採用する
 ②組立機械Bの作業員に頑張ってもらう
 ③組立機械A・組立機械Cの作業員から異動してもらう
 
 これも前提条件によって違いますが、③の組立機械A・C の作業員から異動してもらうが妥当解です。
 一般的に生産ラインは、組立機械の生産能力に合わせて人員を配置していることが多いですね。ですので、組立機械AやCは、それぞれ50台、40台組み立てられる作業員がいる可能性が高いのです。つまり余剰人員がいるのです。
 ①の「新規採用」は、採用コストもかかりますし、人件費も増えます。人材育成のコストやパワーもかかります。
 コストをかけないために、②の組立機械Bの人に頑張ってもらうという話もよく聞きます。短期間であれば、そのような選択肢もあるのかもしれません。しかし、無理をし続けると、組立機械Bの作業員が体調を壊したり、辞めたりします。このような無理な施策は長続きしないものです。

中尾隆一郎『最高の結果を出すKPI実践ノート』より

いかがでしょうか。

組立ラインによる解説は、制約条件理論のわかりやすいメタファーですので、いささか単純化してはいますが、いちばん生産能力の低いところを特定することの重要性は伝わったのではないでしょうか。

CSF(最重要ファクター)が特定されれば、あとはゴールから逆算して「KPI」を設定することが可能です。組立ラインの事例であれば、必要な作業員の数などがそれにあたります。

KPIマネジメントは現場のプロフェッショナルである著者・中尾さんの手にかかると、めちゃめちゃシンプル。あらゆるビジネスに応用できるので、激しくおすすめします。

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(フォレスト出版編集部・寺崎翼)

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