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あなたの「前意識」はパンク寸前かもしれない

「前意識」という言葉をご存じでしょうか?
「無意識」「潜在意識」なんて言葉は、スピ系とか能力開発系の分野で広く使われていることは知っていたのですが、「前意識」という言葉は、最近まで恥ずかしながら知りませんでした。
いえ、知らないというか、言葉自体はフロイトか何かの本で読んだことがあると思うのですが、私の頭からはスッポリと抜け落ちていたのです。「無意識」と比べると、ややインパクトに欠けるというか、どんな存在なのか、いまいちピンとこなかったんですよね。
さて、そんな私が前意識の重要性に気づいたのが、『心の不調が消える聞くだけ音トレ!』(小松正史著)を編集したことがきっかけでした。
「無意識なんかよりも、前意識のほうが、ずっとヤバいじゃん!」と。

本書では、音響心理学者である著者が、心身の不調を「音」が増幅させていると語っているのですが、そのメカニズムのキーとなるのが「前意識」なのです。
以下、『心の不調が消える聞くだけ音トレ!』(小松正史著)の中から該当箇所を一部抜粋、改編したうえでご紹介します。

●過度の音刺激が聴覚疲労を引き起こす

 現代人は、視覚情報を受け取ることに、1日の多くを使っています。つまり、情報を目から取り込むことに、脳が特化しているのです。
 そこで疎かになっているのが、耳の存在。一度に取り込める文字情報量は、視覚のほうが聴覚よりも圧倒的に多いため、効率を高めるあまり、視覚で外界にある情報の多くを得ています。その間、聴覚には意識は向けられていません。
 街の中を歩くと、BGMや電子音、さまざまな呼び込みの声など、音の洪水の中にいるような場所に遭遇します。
 その結果、過剰な音の刺激が脳に取り込まれるのです。問題は、その状態が「無自覚」であることです。本来人間の脳は、1つのことしか集中できません。新たに入ってくる音があると、無意識のうちに注意が向けられます。すると、音刺激がワーキングメモリ(作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力)を圧迫し、脳が疲労する原因につながるのです。
 知らず知らずのうちに聴覚疲労を引き起す音環境を、人間がつくり出してしまっているのです。

●音は心の3つの領域で知覚される

 聴覚の特性を考えてみると、無自覚に処理されている音の世界が重要になってきます。人が何かを意識するとき、その基盤となるのが「前意識」です。
 前意識とは、知覚された情報を一時的にストックしておくエリアです。音で言えば、耳から入ってきた音の情報が貯蔵されている領域です。この前意識が、聴覚疲労を起こすか起こさないかのカギを握る重要な部分なのです。「前意識」は、意識の周辺部にある心の部分で、脳に入力されている音はあるけれども、あいまいに聞こえてくるような場面です。空調の音や街の喧騒といった、ふだんスルーされやすい音刺激が、前意識で処理されています。努力や何かのきっかけがあれば、意識することが可能です。前意識でとらえられる音を処理するには、「注意の向け方」がカギを握ります。
 前意識で処理される音の情報は、意識で処理される量の数倍以上もあります。注意を向けていない音のほうが、情報量としては多いわけです。
 カクテルパーティー効果という心理用語をご存じでしょうか。
 人の声でザワザワしているパーティー会場などの空間の中で、埋もれているけれどもじぶんに必要な音(たとえば、じぶんの名前が典型)が感知されると、脳が瞬時に前意識から意識に引き上げ、その音に注意が向けられる現象です。
 前意識の領域では、音の情報がダムの水のようにストックされています。必要に応じて意識の領域にピックアップされ、意味がつけられるのです。

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●カギは前意識

 人が「音を聞く」という行為は、たった1つの音の知覚であっても、心の3領域を行きつ戻りつしながら、情報処理に負担のかからない意識のチャンネルを自動的に調節しているのです。
 音の聞き方を磨くうえでカギとなるのは「前意識」です。一見目立たない音の知覚領域であっても、かなりの情報量を自動的に処理しています。
 いわば、音の知覚感度を良好に保つ「緩衝地帯」のような存在。音刺激の決壊を防ぐために、前意識がダムのようなクッションとなって、音が認知される一歩手前で、一時的に貯蔵されているのです。

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 この処理過程の全容は解明されてはいませんが、音のトレーニングを行ううえでは、前意識の過程で処理される音の存在が、重要なのです。

いかがでしたでしょうか?
『心の不調が消える聞くだけ音トレ!』(小松正史著)については、先週「まえがき」を公開しております。
気になった方はぜひご覧ください。

(編集部 石黒)

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