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JIFPRO フォレストカーボンセミナー視聴報告

 国際緑化推進センター(JIFPRO)主催の「フォレストカーボンセミナー:COP28等報告会」を視聴しました。

日時:2024年1月15日 14:00-16:30
会場:オンライン

 林野庁から2名、森林総研とJICAからそれぞれ1名、計4名の方からの発表がありました。みなさんCOP28 UAEに現地に参加され、その報告がメインでした。プレゼン資料は公開されてますので、以下をチェックしてください。

https://jifpro.or.jp/infomation/21640/

 発表の中身は、COP28の主要な合意内容である第1回GST、適応の世界目標(GGA)、ロス&ダメージ基金の話などが簡単に紹介され、その後、森林分野がどのように扱われたのか、また森林関連のサイドイベントの話が紹介されました。

 注目している市場メカニズム(炭素クレジット)に関しては、パリ協定第6条4項の国連主導メカニズムのRemovalの方法論やセーフガードなどが議論不十分ということで合意に至らなかったとのこと。

林野庁 尾野亜裕美氏 発表資料P15より https://jifpro.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/COP28_Ono.pdf

 当方でもUNFCCCのArticle 6.4 MechanismのwebサイトでSB(監督機関)のミーティングメモをフォローしてきていました。

 COP28直前にSB内でガイダンス案に合意し、COP28への提案書を提出したという話があり、ついにCDM後継の森林系の炭素クレジットの方法論が合意されると期待していたのですが、残念です。

 どの点で合意できなかったのか詳細が不明ですが、これまでの議論から察するに、永続性・耐久性やセーフガードのところで合意できなかったようです。

 森林系クレジットは永続性・耐久性がよく議論になります。森林は火災リスクや伐採リスクなど、比較的永続性のリスクが高いと言われています。そのためCDMではTemporaryクレジットという名の時限クレジットとして発行することで、永続性を担保しようとしました。しかし、時限が切れた場合、クレジットの再発行か再購入が必要になるため、経済的インセンティブがほとんどつかず、価格も低迷することになりました。(価格低迷はそれだけではなく、日本の第二約束期間の離脱や景気低迷が主な理由と言われています。)
 VCSでは100年分の永続性リスク評価により、リスク分をバッファプールにとっておくことで担保しています。VCSという仕組みが担保してくれるため、発行者も購入者も安心して発行・購入しやすいものの、大気中のCO2の長い耐久性(1,000年で20%残存)と比べると100年は非常に短いという意見もあります。

 セーフガードに関しても、SBからはSDGsの貢献の明確化(ツール活用)というルールが提案されたものの、欧州の一部の国から不十分であると意見が出た模様です。

 一部、炭素クレジットに批判的なメディアからは「悪い合意に合意するよりも良かった」と皮肉がありましたが、個人的にはまずは前に進めることが重要であると思うので非常に残念です。

https://carbonmarketwatch.org/2023/12/13/cop28-article-6-failure-avoids-a-worse-outcome/

 話が逸れてしましまいましたが、このセミナーでは森林関連のサイドイベントについても報告がありました。残念なことですが、森林関係のサイドイベントは減少傾向にあるとのこと。UAEという産油国で森林のない国での開催の影響も大きいのかも。2025年のブラジルでのCOP30では森林に注目が集まることが期待されます。
 当方でも期間中いくつかオンラインで視聴しましたが、森林系のイベントは参加者は総じて50名程度と少しこじんまりしているなという印象でした。今回のCOP28には10万人程度が現地参加したという情報からすると、少し寂しい印象です。

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