何もかもうまくいかない1日を送った俺と君たちは、どう生きるか。
朝起きた瞬間に異変に気付いた。
体と心がうまく働いていない。
村上春樹風に言うなら、「頭の中にレタスが詰まった感じ」。ミスチル風に言うなら、「うまく心が開けないんだ。ぎこちなくて。」
ぼうっとした頭で、ルーティンのバナナとヨーグルトを流し込み、死んだ目でyoutubeを流し見し、朝の割には、うだるような暑さに辟易しながら一歩踏み出した。
俺の愛車(チャリ)の異変に気付いた。
・・・前輪パンクしてやがる。
最悪の気分で、自転車屋まで自転車を押した。帰りにそのまま修理できるようにするためだ。
職場までは4km程度あるため、40分くらい歩きと走りを繰り返し、汗ダラダラで到着した。
そして職場では、
予想外のトラブル
に見舞われ、さらに生気を奪われた。
あの新人ちゃんに「大丈夫ですか?顔死んでますよwww」と指摘されるほどだった。俺は典型的な日本人じゃないので、素直に「大丈夫じゃない。」と返しといた。
時は過ぎ夕方。ふと、限界が来て、空き部屋で仮眠をとることにした。5分経った頃だろうか。もやもやとした夢だったが、自分が深海を彷徨う夢だった。
コンコン、ちょっといいですか?
ぼやけたあたまで、なにごとかとあたりを見渡した。ん・・・ここは地上?
副社長が、居眠り中に、なんかの案件で話しかけていた。
上の空で返事したような、してないような。多分会話はしていたとは思う。
(くそ・・・・!)
ちなみに、この(くそ・・・!)は、寝ていることがバレたことではなく、良質な睡眠中に起こされたことに対する苛立ちである。そう、俺は典型的なゆとりなのだ。
デスクに戻ると、新人ちゃんが「よく眠れましたか?www」と話しかけてきた。「あ・・うーん、うん。」と煮え切らない返事をした。
早めに仕事を切り上げ帰ることにした。さっさとチャリ屋に預けて、ネトフリでも見よう。
職場を出ようとすると、足に冷たいものが当たる。
上からかな?とみてみたが異常はない。異常があったのは、俺のバッグだった。そう、
水筒のふたが外れていて、中のものがびしょびしょになっていた。
とくにひどかったのが、3日前に買った小説だ。最悪の気分はピークだった。
そもそも、一番の原因は、アプリで出会った子とデートしたのだが、割と好感触だと思っていたのだが、「シフト分かったら連絡しますね!」と来て、ウキウキしながら待っていたら、結局連絡が来てないからだ。なんなんまじで。一生シフト調整してろ。
「あれ、源さーん!」
この世界を呪いながら歩いていると、顧客が手を振ってきた。
すぐさま営業スマイルになり、「どうもどうも」と話しかけに行った。
「いやー、パンクしちゃったんですよ。おかげで4km歩くことになっちゃいました。」
「それは、大変ですね。電車使えばいいのに。」
「いや、自転車の修理もあるし、走るのが大好きなんで、走って帰ろうと思います。それじゃ!」
50mくらい、角を曲がるまで走り続け、そこから歩き始めた。
(ああ、しんど・・・)
でも、不思議と少しだけ心は晴れやかになっていた。
チャリ屋についた。
「1時間後にできるんで、また来てください!」
よし、適当に夜飯食いながら、あとはyoutubeでも見て時間つぶす・・・
スマホの電池が切れていた。
・・・じゃあ、チョコザップに行く・・・
あそこ、スマホのQRコードないと入れないやん。
どうしょうもないので、適当にお店入って、時間つぶすしかない。
歩いていると、沖縄料理屋さんを見つけた。
play back 沖縄旅行。
ここに決めた!
どうやら、居酒屋のようだったが、飯だけでもOKになった。
ゴーヤチャンプルーとジューシーください。
そう、ジューシーはマジ上手いのだ。炊き込みご飯みたいなやつ。
しばらくすると、若い男の店員さんが戻ってきて言った。
「あー、ちょうど今ジューシーというか、ご飯もの出せないんですよ。」
なん・・だと・・・?
じゃあ、沖縄そば(半)で・・・。
昼もうどんだったので、できれば麺類は食いたくなかった。
しっとりと濡れた小説のページを、優しくめくっていると、ゴーヤチャンプルーが運ばれてきた。20分後の出来事である。
ん、、、しょっぱい?
無理もない。普段は酒と一緒につまむものなのだから。
富士山特集的なテレビを見ながら、ちびちび食べていると、
若い男女の3人組が入ってくるなり、
「おばあちゃん!」
と叫ぶと、おばあちゃんと3人は抱き合い、再開を噛みしめていた。
おばあちゃんは涙ぐんでいた。
関係性的には、血縁ではないが特別な関係なようだ。話に花を咲かせている傍ら、サイコパスの俺はこう考えていた。
俺の沖縄そば・・・
その20分後に運ばれてきた。約束のチャリの時間はとうにすぎているが、まあ、特にいそいでいるわけでもなかったので、気にしなかった。半分の量にしては、一人前くらい入っていた気がする。
ゆっくり食べ、会計のため若いおにいちゃんを呼ぶと、おばあちゃんが出てきた。
「ごめんなさいね、作るの遅くなっちゃって。」
「いやー、ゆっくりでなんかちょうどよかったです。」なんだそりゃ。
そして、おばあちゃんは語り始めた。
「実はね、さっき会った3人はね。大事な人の子供たちなのよ。その大事な人は、3年前に亡くなっちゃって・・・」
「ああ・・・そうだったんですね。」
若人「実は、そのなくなった方は僕と同年代で、すごい悲しかったんです。同じ年齢だからこそ、なんでこんなに早くにって・・・」
「それは、辛かったですね・・・」
ん?
え、その方めっちゃ若くね?え、子供産んでたの?え?
おばあちゃん「その子は、5人の子を女手一人で立派に育てあげてね。ほんとにすごいよ。でも、3年前に急になくなって、お葬式があったんだけど、コロナで行けなくて・・・・。だから、3年間私の心の中にずっともやもやが残っていて、、、。でも今日元気な子供たちに会えて、少しだけ胸の中が晴れた気がしたのよ・・・」
子どもたちと言っても、見た目は立派な成人だった。なんなら同世代かと思ったくらいだ。
そのあとも、おばあちゃんの本職はダンサーだったが、腰が痛くなり沖縄料理屋を始めたこと、息子もそれを手伝っていることなどの話を聞いた。
なんか、初対面の男がいろいろ自己開示されてるのも悪いので、自分も台風が来てる時期に、波照間島に旅行に行って、船酔いして20回ゲロを吐いた話をした。
そのあと、波照間島にしかない酒の話などで盛り上がった。俺は飲めないけど、価値があるから、つい買っちゃった話など。
若人「じゃあ、今回は特別にこれ差し上げます。次回もまた来てください!」
お得なクーポンだった。しかしよく見ると、
泡盛とオリオンビール
俺、どっちも飲めないんだよなあwww
月が朧げに光る帰り道。
自分の足で歩きながら、ふと思った。
ここ最近(てか、今日)の出来事、かすり傷じゃね?てか、かすってすらいなくね?
おばあちゃんのように3年間、モヤモヤした心と戦いながら生きた人。
今は亡き、女で一つで5人を立派に育て上げた、逞しい女性。
生きたかったのに、生きれなかった人もたくさんいる。
不慮の事故で悲しみのどん底に落ちたり、命を失ったり。
そう、俺の大学時代の友人のように。もしかしたら救えたかもしれない命。
思い通りならない世界を呪って過去に生きるか、思い通りにならない世界に抗って、未来を変えるか。
アラサーよ。もう答えは決まっただろう?