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【書評】エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する

前著「エッセンシャル思考」が世界中で大ベストセラーとなったシリコンバレーの経営コンサルタントであるグレッグ・マキューン氏の最新作である。「エフォートレス思考」という最小限の努力で最大限の成果をあげる考え方を紹介しています。

まず、人間が地球上でここまで繁栄できたのは、下記の本能があったからだと著者は言う。

もっとも少ない努力で成果を出そうとする傾向が、ヒトという種の生存を可能にしてきたのだ。

この少ない努力で成果を出そうとする傾向は100年後も200年後も変わらない人間の本能であろう。人間は楽をしたい生き物である。投資の神様と呼ばれているウォーレン・バフェットも次のように述べている。

世界最強の投資家ウォーレン・バフェットは、投資の秘訣を「怠惰なくらい楽をすること」だと述べている

本書の中で紹介されているエフォートレスに結果を出したエピソードをいくつか紹介する。

はじめの一歩を身軽に踏みだす

Netflixの創業者であるリード・ヘイスティングは、既に1990年代に現在の動画配信サービスを予見していたが、彼が一番初めにしたことは、自分に一枚のCDを送るということだった。

彼らは壮大なビジョンを持っていた。その完成形は、現在のNetflixのように大量のコンテンツを提供するグローバルなストリーミングサービスだった。 だが複雑で壮大なロードマップを描く代わりに、彼らは考えられるなかでもっともシンプルな一歩を踏みだした。だからこそビジョンの大きさに圧倒されることなく、先に進むことができたのだ。

AirbnbもNetflixと同じようにシンプルな一歩を踏み出すことによりビジネスをスタートさせている。

たとえばAirbnb(エアービーアンドビー)は、なんの飾りもないウェブサイトにアパートメントの写真を数点載せるという、非常にシンプルな方法でサービスを開始した8。するとまもなく3人の顧客がアパートメントをレンタルしてくれた。その顧客のフィードバックはAirbnbに、貴重な「検証による学び」を与えてくれた。

アップル社のエンジニアはジョブズをあっと言わせるDVD作成ソフトを開発したが、ジョブズの反応はいまひとつだったという。

ジョブズはホワイトボードに歩み寄り、四角をひとつ描いた。「これが新しいアプリケーションだ。ウィンドウがひとつ。動画をウィンドウにドラッグする。そして『作成』ボタンをクリックする。以上。そういうものをつくるんだよ」

早く着くために、ゆっくり進む

1911年イギリス人のロバート・スコットとノルウェー人のロアール・アムンセンとの間で南極点到達レースが開催された。スコットは天候が良い日には猛烈な勢いで進み、悪天候の日には休んだ。一方、アムンセンは天候の良し悪しに関わらず、常に一定のペースで進んだ。結果、勝利したのはアムンセンの方だった。

スコットが「凍った日」にだけ隊員を休ませ、天候のいい日には隊員を「非人道的なほどにこき使った」のとは対照的だ。アムンセンは十分な休息を取ることにこだわり、南極点にたどり着くまで一定のペースを保ったのである。 このシンプルな違いのおかげで、アムンセン隊は南極を制覇し、スコット隊は全員が死亡した。

一定のペースを保つ大切さについて18冊ものベストセラー小説を書いたイギリス人女性作家のリサ・ジュエルは言う。

「自分のペースを守りましょう。書くペースを上げすぎると、脱線して道を見失います。たまにしか書かないでいると、勢いがなくなります。1日1000ワード程度がちょうどいいペースだと思います」

不信のコストを削減する

ウォーレン・バフェットはウォルマート傘下にあったマクラーレンという会社を買収するときにたった2時間のミーティングで決断してしまった。通常は何か月もかけて会計士・弁護士がデューデリジェンスをして企業価値を評価するのが一般的なのに。

だからこそ、実際に起こったことが驚異的なのだ。バフェットは、たった2時間のミーティングと握手で買収を実現させた1。そしてわずか29日後には、マクレーン社はバフェットのものになっていた。「我々はデューディリジェンスを省略した」とバフェットは言う。「これまでの経験から、ウォルマートの言うことはそのまま受け止めていいと考えた。実際、そのとおりになった」 ウォルマートを疑う理由がないので、デューディリジェンスは必要ないと判断したのだった。これによってどれほどの時間とお金と労力を節約できたか考えてみてほしい。信頼があったからこそ、わずかな力で累積的な成果を出すことができたのだ。

「はじめの一歩を身軽に踏みだす」「早く着くために、ゆっくり進む」「不信のコストを削減する」など、シンプルであるが効果的な考え方の事例が多く紹介されている、成果を上げることを期待する全ての人におすすめの書である。

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