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【書評】失敗を語ろう。「わからないことだらけ」を突き進んだ僕らが学んだこと』 (辻 庸介著)

マネーフォワード創業者辻庸介氏によるマネーフォワード創業記である。

今ではフィンテック業界で飛ぶ鳥を落とす勢いのマネーフォワードであるが、設立当時は鳴かず飛ばずの時代があったようである。

起業家ならずとも、モノやサービスをゼロからつくろうとした経験がある人なら、きっとわかってくれるだろう。「こんなサービスがあったら絶対に便利だし、面白い」と信じて夢中で開発し、思い入れたっぷりのプロダクトがついに完成。「これを世に発表したら、みんなビックリするだろうなぁ!」と興奮がおさまらない。「絶対売れるぞ。問い合わせが殺到してしまうかもしれない」と期待が無限に広がる。 しかし、いざリリースしてみると……。 無情にも世の反応は薄く、薄いどころかほとんど誰も使ってくれずに、そっとクローズする。名も知られぬまま埋没していったプロダクトは、ごまんとあるはずだ。

マネーフォワードも同じような経験があったそうだ。しかし、マネーフォワードは、数々の失敗を経験して、ユーザーを最重視した企業文化へのシフトしていく。

つくづく、答えはユーザーが持っていると思う。 僕も瀧も直前までアメリカでMBA留学をしていたので、油断をするとつい「経営理論ではこうするのが正解」と、頭でっかちの〝理論頭〟や〝提供者目線〟に引っ張られることがある。 もちろんベースとなる知識は不可欠だが、リアルなビジネスで生まれる課題の答えは教科書には載っていない。ユーザーに向き合って、自分たちで探すしかない。 この道を進むことに決めた僕たちは、本当に必死だった──。

マネーフォワードはフィンテックという規制だらけの金融業界で革新的なサービスを打ち出しているが、保守的な業界だけあり数々の苦労があったようだ。しかし、マネーフォワードが実現したい未来を関係各所に一つ一つ説明することにより道を切り開いてきた。

「スピードはもちろん大事だ。だけどユーザーにとって、社会にとって、本当にメリットが大きいサービスをより多くの人に届けたいと思うなら、そのサービスに関係するすべての方々とのコミュニケーションを大切にしたほうがいい。遠回りに見えるかもしれないが、結果的に、それが近道なんだ」

最後に、辻氏からの起業家に向けたメッセージで本記事を締めたいと思う。

皆さんが何かに挑戦していく中では、もしかしたら、僕たちが直面した痛みに勝るとも劣らない何かが、その行く手を阻むことがあるかもしれない。 そのときは、どうか、たった一人で悩み解決しようとしないでほしい。 僕に、手を差し伸べてくれた先輩方や仲間、ユーザーがいたように、信念を持って挑戦している人の周りには、支えてくれる人、見守ってくれる人、導いてくれる人が必ずいるはずだ。 組織も事業も、たった一人の力だけで荒波を越えていくことは難しい。しかし、知恵を絞り、力を合わせて諦めずに立ち向かっていけば、いつかは大きな波も越えていけるのだと、僕は信じている。

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