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【映画】ファーザー

アンソニー・ホプキンスが米アカデミー賞最優秀主演男優賞を獲得したことでも話題の作品である。元々は舞台の作品であるが、舞台の製作を務めたフロリアン・ゼレールが自ら監督となって製作された。フロリアン・ゼレールは、本作が長編監督デビューである。

まず、この作品を頭から見ていくと、わけがわからなくなってくる。時系列がよくわからず、登場人物たちの役割もどんどん変わっていく。そして、次第に、この映画は、アンソニー・ホプキンス演じる認知症のアンソニーの視点で描かれていることがわかってくる。

観客は、認知症の人には世界がこんな風に見えているのかということを疑似的に体感することができる。そして、恐怖心を感じる。本作は、ホラー映画の要素も含まれている。

本作は、時系列も登場人物も支離滅裂であるが、緻密に計算された支離滅裂さであり、最後には一つの出口につながっていく。最後のアンソニー・ホプキンスが崩れ落ちるシーンは圧巻である。

フロリアン・ゼレール監督は祖母が認知症になり、その経験が本作を製作する動機になったということである。認知症の人たちが見えている世界を理解することにより、その人たちが悲しい思いをしない世の中に少しでもなること期待したい。

観てよかったと思わせる素晴らしい映画である。



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