Oxford 留学 〜多元的な楽しさ〜
私は、アメリカの Liberal Arts 大学で学部留学をしているのですが、そこの大学と提携しているプログラムを利用してOxford 大学に1学期間留学をしました。政府が用意したホテルで隔離している時間を使って、振り返っていきたいと思います。
Oxford 大学ってどんなところ
ご存知かと思いますが、Oxford 大学は、世界大学ランキングでトップを取るような一流大学で、歴史と権威があります。私は交換留学の身であり、私がすること自体に変化があったわけではないので、あまり意識することはありませんでしたが、それでも、歴史を聞いたり、伝統を経験したりする中で、凄いところにいるんだなー、とたびたび感じました。
Oxford の明確な創立年代は不明ですが、1096年には何らかの形で教育が存在し、1167年以降急速に発展していったとされています。日本で最初に設立されたとされている東京大学の設立年が1877年であることと比較すると、その歴史の深さを感じます。
そもそも、我々が Oxford "University" と呼んでいるものは、財政的に独立し、自治権のある39の Oxford "colleges" の集合体です(私は現地に行くまで知りませんでした…)。したがって、学生はそのうち1つのカレッジに所属して、学生生活を送ります。私は、New College に所属しました。
(ちなみにそういうわけで、"Oxford" と書かれている大学パーカーやジャケットを着ている人は大概観光客で、学生は各カレッジ名が記載されたグッズを所有していることが多いです。)
どのカレッジも高い壁によって囲まれており、中に宿舎やダイニングホール、バーまでも存在します。これは、かつて上流階級の学生をよく思わない町民が、学生を街中で虐待・惨殺することがあったので、学生を守るために娯楽を含めた生活をカレッジ内で完結できるように設計されたようです。理由を知ると、大分恐ろしいのですが、無垢な気持ちで見るとおしゃれな大学だと感嘆します。笑
特に非日常を感じるのが、ダイニングホールです。ハリー・ポッターの中にいるような雰囲気の中で普段の昼食や夕食を食べていると、住んでいる世界が変わったような錯覚に陥ります。実際に、Christ Church College のダイニングホール(下画像)はハリー・ポッターの中で使われており、他にもいろいろなところが撮影地になっています。ただの食事ですら非日常を感じるわけですが、それを超えたフォーマルディナーという更なるオシャレイベントが存在します。カレッジによって異なりますが、ドレスコードはガウンやタキシード/ドレス、値段は1500-3000円ほどと比較的リーズナブルで、3-4品のコース料理をいただくことができます。正直、エリート意識煽りすぎだろって思うところもありますが、非日常として貴重な体験ができたと思います。
独特な教育方法
Oxford と Cambridge に代表される教育方法が、Tutorial system です。日本語に訳すと、個別指導制度でしょうか。このチュートリアルとは、1~3人の学生と指導教官(教授やPhDの学生)が毎週行うミーティングのことで、その週に課されたリーディングや問題に関するレポートを提出し、自分の考えや意見について深く議論することが求められます。講義やセミナーは、このチュートリアルの補助的な立場にあり、必要に応じて指導教官より参加するように言われます。
Oxford は3学期制で、1学期に2つのチュートリアルを取ります。2つしか授業がなくて、ミーティングも週に一回なんて、大分ぬるいんだなあ、と思っていたのですが、課されるリーディングや課題がとても多く、レポート作成にも多大な時間を要したため、楽だなと感じた週はありませんでした。なおかつ、私のチュートリアルはどちらも1対1であったため、口頭諮問を毎週受けているような状況で、「今日も詰められるんだろうなあ…」と半ば諦観しながらチュートリアルに向かっていました。笑
この徹底的な指導システムは、大変でしたが、とても学びになりました。まず、口頭諮問をされることで、自分が理解できている内容とできていない内容が明確になりました。英語が出てこず、日本語なら言えるのに、ともどかしくなる場面もありましたが、「PhD の面接では同じように聞かれるよ!」と指導教官であった PhD 生に何度も言われ、ここは超えなければいけない壁だなと強く意識して頑張りました。次に、週のほとんどが自習だったことで、自習能力が高まりました。特に、興味のある分野(Genomics と AI)でどのようなリソースがあって、どのように活用できるかを学べたことは、より専門的な学習を自分で推し進めていくのに役立っていくと思います。私が4年生であったこともあり、チュートリアルで扱う内容に関してある程度裁量を委ねてもらい、プレ大学院をやっているような感じだったと思います。
課外活動について
Oxford には、さまざまな団体やクラブが存在しており、学業以外も大変充実しています。種類が多いだけでなく、実際に影響力の高い団体が数多く存在しているのは、Oxford ならではだと思います。例えば、UK 大統領の登竜門ともいわれるるような世界最高峰のディベートクラブが存在し、数々の著名人もゲストスピーカーとして訪れています。今学期は、Breaking Bad の主人公を演じたBryan Cranston が招待されてスピーチをしていました。一流企業のCEO/CTOや分野のトップ研究者を招聘したイベントがあちこちで行われていて、若干感覚が麻痺しました。概してよく組織された団体が多いと思います。
学期の初めに Freshers Fair(いわゆる新歓)があり、ここで好きな団体にサインアップできます。(勧誘が激しい日本の大学の新歓と比べると大分マイルドでした笑)結果的には、スポーツ系の活動2つ(テニス・スパイクボール)と Effective Altruism(効果的利他主義) という慈善団体(?)の活動にそれぞれ週一程度で参加しました。
(Effective Altruism Society からはたくさんの学びがあったので別記事で書きたいと思います。)
Oxford Japan Society という日本文化に興味のある人向けの団体の Welcome Party では、正規の学生やPhDの日本人と話す機会があり、また日本語を修士で勉強しているスイス人の子と仲良くなりました。Oxford に限らずですが、日本人であることで恩恵を受ける機会が何度もあり、日本はなんだかんだ(少なくとも現時点では)良い国なんだな、と再確認しました。
スパイクボールは、アメリカ発祥のスポーツということもあり、私と同じように交換留学をしているアメリカ人学生数名と知り合い、仲良くなりました。個人的に、ヨーロッパ人とは仲良くなるのが時間がかかるのですが、アメリカ人は、フレンドリーな雰囲気を醸し出している人が多く、比較的容易に友だちになることができると思います。ただそのことをイギリス人の友人に話すと、「でも、アメリカの人間関係って表面的でしょ?」とつっこまれました。偏見込みの一般的なイメージとして、ヨーロッパ: 築くのが難しい分強固な人間関係 vs. アメリカ: 簡単にできるが希薄な人間関係、といった対比があるように思います。
私は、滞在期間が1学期だけであり大学寮に住んでいなかったので、とりあえず感じの良い人と積極的に時間を過ごすようにしていましたが、そうすると、必然の如く、アメリカ人や、日本に興味のある学生と多くハングアウトするようになりました。もう少しイギリス人と仲良くなる努力をしても良かった気もしますが、期間も短く、寝食を共にしていたわけでもなかったので、仕方なかったと思っています。
街について
Oxford の街は、歴史的な雰囲気がありますが、それでいて、ショッピングモール (Westgate) が中心にあり、商店街もいくつかある(e.g. Cornmarket, Covered Market) ので、バランスがとても良いです。毎週、水木金土に露店が出現するGloucester Green Market では、八百屋、エスニック料理、古着屋、骨董品、ハンドメイド品、といった類のものが日替わりで並んでおり、眺めているだけでも楽しかったです。
Café
大学街ということもあって、ふらっと入りやすいカフェが多く存在します。私は、カレッジまで30分ほどかかる + カレッジの図書館に若干の閉塞感を感じたので、街の中心部に位置していたカフェでよく勉強しました。
毎日カフェに行くとお金嵩むなあと思っていたのですが、Pret というカフェの1日5杯まで飲み物を注文することができる Coffee subscription (月額 £20 = 約3000円 )を発見してからは存分に利用しました(更に初月は無料)。サブスクリプションには、普通のコーヒーから、チャイやスムージーまで含まれており、色々な飲み物を試すのが小さな楽しみでした。
友だちと話したり、一緒に勉強したりするときは、大学よりかは、カフェで会うことが多かったです。私のカレッジに良いコワーキングスペースがあまりなかったのと、カレッジが点在しているので、街の中心部にあるカフェで会うのが定石でした。
ただ、どのカフェもだいたい混んでいて、Pret はほぼいつも満席でした。コンセントがある席が半分くらいあり、争奪戦が勃発していました。
Pub & Nightclub
イギリスでもお酒文化が強く、街の至る所にパブやナイトクラブがあり、平日からよく盛り上がっています。(コロナが流行っていることを何度か忘れそうになりました。)
日本のナイトクラブを知らないので比較はできませんが、音楽がガンガン鳴ってて、バーがあって、という感じなので同じようなものかと思います。入場料は時間によって変わって、£4 - £10 (約600-1500円) 、大して冷えていない Corona ビールが一瓶 £4くらいで売られてました。施設内にいくつかフロアがあるので、転々としながら、好きな雰囲気のところを探すこともできますが、盛り上がって人が密集してくると、容赦のない押し合いになり、疲れます。
グループで数回行きましたが、私はあまり楽しめませんでした。一方で、毎週楽しそうに通っているアメリカ人の友達もいました。個人的には、私がもといるアメリカの大学で行われているような、いる人は全員学生で、ほぼ友だち or 友だちの友だちであるという親密感 & 安心感のあるパーティの方が好きでした。お酒も安上がりで済みますし。(謎のパーティー比較)
そういったわけで、ナイトクラブでわーわー盛り上がるよりも雰囲気の良いパブで飲みながら話す方が私は好きでした。ただ、一杯が安くて£3.2 (約500円)、高いと£6.5 (約1000円) 超えてくるので、こちらも行く頻度はだいぶ抑えました。先に酔っておくために、スーパーで買った安いワインを飲み干してから、ナイトクラブやパブに行く友だちもいました。笑
結局、お酒はどこかで買って、誰かの家 or 部屋で飲んで、ゲームしたり、映画したり、だべったりすることが多かったです。これは、日本でもアメリカでも共通することですね。
イギリス人とあまり仲良くなる機会がなかった、と上述しましたが、実はこのナイトクラブが人間関係を形成するのに重要だった説が私の中で囁かれています。笑 大学の学期が始まる1週間前の Freshers Week において、上級生が新入生をナイトクラブに連れて行って、新入生同志の親睦を深めるのを助けるイベントがあります。毎日、今夜はここに行くよ!、といった投稿がカレッジの Facebook グループに流れていたのですが、あまりナイトクラブが好きではなかったのと、疲れそう… って思って一切行かなかったため、友だちを作る一番大きなチャンスを逃してしまったように思います。笑 普段壁が厚い人ともお酒を通して仲良くなれたりするので、こういうところは意外と大事ですね。(たぶん)
平日でもクラブや課外活動の後に皆んなでパブに行くという話をよく聞き、高頻度で飲んでいるなあ、と感じました。ある時、アメリカ人の友人たちとカレッジで夕食を食べていると、イギリス人に「この後、パブ行こうぜ」と誘われました。まずその日は平日で、なおかつ次の日に授業がある人もいたので、いや無理かなー、って話をしていると、「俺も明日授業あるぜ。アメリカ人は週末しか飲まないのかい?俺らは平日だろうと飲むよ」と謎のアルコールマウントを取られてしまいました。確かにアメリカでは平日はよく勉強して、金曜、土曜に激しくパーティーをする人が多い印象ですが、いや、このアル中イギリス人はいつ勉強してんだよ、って心の中で思っていました。笑 もちろん、全然パブに行かない人や、長時間勉強している学生も多くいるので、一般化はできませんが、日本やアメリカと比べて、高頻度で飲んでいる人が多いな、と感じました。
終わりに: 何でもできる環境
大学は歴史があって壮麗、学習はハイクオリティ、課外活動も豊富で濃密、街も楽しい、ということで環境としては最高だった思います。本当に何でも挑戦できて、何でも楽しめる場所と機会が転がっています。
天気も食事も想定していたより大分良かったです。曇りが多く、日照時間が短かったですが、大雨に振られることはほぼなく、夜の街の雰囲気はそれはそれで味がありました。食事のオプションも(私にとっては)十分にあり、不味くて食べられないなんてことはありませんでした。物価が高いのと、日本食が高級食に変わるので、それが唯一の難点でしょうか。
何はともあれ、たくさんの良い人と出会うことができ、恵まれました。本当に感謝です。来年はアメリカに戻って、最後の学期を迎えます。大学はもう十分だと言えるくらい勉強に(maybe 遊びにも?)勤しむ心意気です。
最後に、この振り返り記事を書くきっかけとなった企画の方を紹介させていただきます。他の方の留学体験記もチェックしてみてください。
それでは🌝🌚