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#11 「失敗を活かせば、失敗ではなくなる。」不動産業界での経験を経て、20代で起業した山野晃弘さんが20代に向けて語る言葉。「インプット量を増やし、突破力を養ってほしい」

for 20's第11回目のインタビューのお相手はゼップエンターテイメント株式会社代表取締役の山野晃弘さんです!不動産会社に入社後、20代で起業され、現在は木更津にておむすび専門店『1分おむすび』の経営をはじめ、スマート農業の実現に向けた様々な取り組みをされています。

そんな20代で起業を経験した山野さんに、20代の羅針盤となるような経験談やマインドセットを伺ってきました。

【山野晃弘さん】
自身の子供の食育を機に木更津市へ移住し、農薬不使用米の自家栽培に挑戦。自家栽培のお米と地域のオーガニック食材を使用した”おむすび”専門店『1分おむすび』の経営をはじめ、スマート農業の実現に向けた鳥獣被害対策、除草ロボットの開発、再生可能エネルギーの積極的な導入、古民家リノベーション等、SDGsを意識した循環型事業を幅広く展開している。

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<聞き手・ライター:桝井孝一・金子圭介>



1. 20代前半の経歴

失敗を次に活かせば、それは失敗ではなくなる


for20's第11回目の取材のお相手はゼップエンターテイメント株式会社代表取締役の山野晃弘さんです!本日はどうぞよろしくお願いします!(インタビュワー・桝井)

ありがとうございます!よろしくお願いします!(山野晃弘さん)

早速ですが、山野さんは20代前半の頃どのように過ごされていましたか?

元々、高校生の頃にテレビ番組のディレクターになりたいと思い、早稲田大学に入学して放送研究会に入りたいと思っていました。しかし、うまくいかず一浪し、法政大学に入学することを決めましたね。在学時にIVSテレビという制作会社でアルバイトをして、とんねるずさんなど人気番組のアシスタントディレクターをしていたのですが、このままでは単位を落としてしまい、卒業も危うい可能性が出てきたので、一度テレビ業界を諦めました。その後は大学生活を謳歌しながらも、やっぱりテレビは好きだったので、映画やテレビに関する情報は常にインプットしていましたね。しかし、明確に"この業界に入りたい"というイメージは湧いていませんでした。

テレビ業界に興味をお持ちだったのですね。当時は、"将来こんな人になりたい"という考えはあったのですか?

一度テレビ業界でアルバイトをしたことで、5分ほどのテレビ番組の広告枠をお金を出せば、購入できることがわかったので、その中で自分の好きな番組を作りたいと思いましたね。そこで大学生の時に僕が出した結論が「お金持ちになりたい」でした。学生時代はバブル全盛期で、当時のお金持ちといえば「東京に土地を持っている人」だと思い、不動産業界への就職を決めました。

東京で土地を持っている人はわかりやすくお金持ちだというイメージがありますね。就職された後は、どのような業務に取り組まれたのですか?

入社後、サブリース事業部という部署に配属されました。簡単に言うと、土地を持っているけれど、現在の事業があまり軌道に乗っていない方のところへ伺い、"その土地にビルを建てませんか"といった営業をしていました。いわゆる飛び込み営業ですね。当時はサブリース会社の中でのトップは、三井不動産でしたが、私の所属していた会社は業界三番手くらいのポジションでした。業務を続ける中で、学んだことは「1000万円の物件も30億円の物件も、仲介業務に関してはやっていることはそこまで変わらない」ということでした。その経験から、会社の大小はあまり関係ないなと感じましたね。

身をもって体感されたのですね。その頃もまだテレビ業界への想いは持ち続けていたのでしょうか?

やはり、自分がテレビを作りたいという想いは持ち続けていました。25歳までは不動産会社にいたのですが、入社二年目には起業する準備をしていましたね。ただ、すぐにテレビ業界に入るのではなく、まずは「お金持ちになる」という目標から逆算して、起業を考えていましたね。若い頃は、家庭もないしリスクも少ないと考えていたので、とにかく早めに起業しようとは考えていました。若いうちに失敗したことは、反省して、その後また活かせば良い。失敗で終わらせるのではなく、それを次に活かすことで失敗ではなくなると考えていました。

失敗を活かすことで失敗ではなくなる、本当にそうだと思います。結局、どのような業務内容で起業されたんでしょうか?

個人事業主で不動産情報のデータサービスを扱う会社を立ち上げました。賃貸でどこに入居して、この建物は入居率が何%だとか、この建物は徒歩何分であるなど、あらゆる情報を一覧化した情報サイトのような形でしたね。

2. 20代後半の経歴

起業をし、業績を着々と伸ばす


その後、20代後半はどのように過ごされていましたか?

先に独立した先輩の事務所の机一つを間借りして自分の事務所として構えました業務内容としては、事務所ビルの移転情報を売っていましたね。お客様は運送会社や、電話工事の会社さんなどでしたね。ビル内の引越しや解約が出た際に、その情報は不動産会社には一斉に回るのですが、その他の会社は知らないんですよね。そこで、いち早く情報を提供することで、引越し業者などは「うちを使って引越ししてください」とすぐに営業をかけられるんですよね。そういった短いタイムラグの情報を提供していました。今でいうサブスクのような形で"月額いくら"といった形態で各社と契約していましたね。

まさにサブスクの先駆けですね。当時では新聞を買ってもらうような感覚に近かったのかもしれませんね。

そういった形です。新聞と違うのは、毎月や毎日情報を送るのではなくて、情報が入ったら自分で内見に行き、その日のうちに情報をタイムリーに流すんですよね。ただ、同じ業界の複数の会社に情報を流しすぎると、業界内でバッティングしてしまう可能性が出てきます。なので、同じ業種は2社までと契約する形で進めていました。その後、業績も上がってきたので、30歳前には間借りしていたオフィスを出て、事務所を構えるようになりました。

3.大切にしている価値観や考え方

約束を守ること/お客様の空間を作ること


20代で起業されたりと様々なご経験をされてきた中で、山野さんが大切にしている価値観や考え方はありますか?

約束を守ることを大切にしています。世の中正しいことばかりではなかったり、期日まで公表できないことも多いと思うんです。そういった"言っても良いこととダメなこと"の境界線を大切にしていますね。時間についても同じで、渋滞にハマってしまったり、寝坊をしたりなどは仕方ないと思うのですが、テレビ業界も時間に厳しかったので、その頃から約束の時間の10分前に現場に行くようにしています。また、不動産会社に在籍していた頃、営業の打ち合わせの際の座る位置、上座下座を上司に教えていただき、全てのこと一つ一つに意味があるんだなと思うようになりました。

時間を守ることは、些細なことかもしれないですが、本当に大切なことですよね。

商談においても、先に自分が打ち合わせの場に行って、空間を作ってしまってからお客様を呼び込んだ方が良いですよね。時間ギリギリで、慌てて行って契約をくださいと言っても、決まるものも決まらないと思うんですよ。良い打ち合わせだったなと思ってもらうためには、お客様が楽しめる空間を作ることが大切だと考えています。

お客様のために空間を作るんですね。何事も「準備が8割」と聞いたことがあります。

本当にそうだと思います。この前、市長と一対一で打ち合わせをする機会があったのですが、プレゼン資料や写真など、最大限の準備をした上で臨んだのですが、全てを提示してしまうと相手が疲れてしまうので、それらはカバンの中にしまった状態で打ち合わせをしました。そういった準備をすることで、相手が断りやすい空気をこちらが作ることも大切なことだと考えています。

4.困難な壁にあたったときの対処法

自分が良いと思った方向に舵を切る


これまで困難な壁にあたったときに、山野さんはどのようにそれを乗り越えてきましたか?

自分自身で判断することを大切にしてきました。自分の好きなことだったら、やり続けることが大事なのではないかと思っています。壁に当たった時は、たくさんの人が最高の答えをアドバイスとしてかけてくれると思うんですが、"その全てが自分に当てはまる"とは限らない。最後に責任を取るのは自分なので、自分が良いと思った方向に舵を切っていくしかないと思っています。

自分で決めることで、より責任を持つことができますね。

その方が、傷が深くなりにくいと思うんですよね。また、傷が深くなる前に様々な対処をしていることも大きいと思います。先ほどの起業時の話もそうですが、同じ情報を引越し業社3社以上に渡してしまうことで、見積もりも営業をかけるタイミングも同じなので、どこかの会社が溢れてしまうんですね。その結果、うちの会社の情報が有益なものではなくなってしまうと考えていました。なので、その辺りのリスクマネジメントも大切だと思っています。今はおむすび屋さんも経営しているのですが、同業他社をリサーチすることが予防線になっていて、大きな失敗にならないようにしています。

リサーチすることは、リスクを事前に察知することにもつながっていそうですね。

やはり世の中は常に変わっていくものなので、それに柔軟に対応していくことが大切だと思います。お金持ちの人は、昔は人力車で移動していたと思うのですが、それがタクシーに変わり、ライドシェアに変わりと、時代と共に形態が変わっていっていると思うんです。なので、常に世の中を見て、どういったことができるかのアンテナを張るように意識しています。

5.20代の頃の自分に伝えたいこと・生きる上でのアドバイス

やりたいことをやり続ける


山野さんが20代の頃の自分に伝えたいことや、生きる上でのアドバイスを伝えるなら、どんな言葉を伝えますか?

やりたいことをやり続けてほしい、といったことですね。もっと突っ込んでいけばよかったなと思う場面も、今考えると多かったですね。昔は30歳までやってみて、ダメだったら他の道を探そうと考えていましたが、今は30歳でも同じことをやれば良いと考えるようになりました。一つひとつの経験が糧になっていることで、同じ失敗を繰り返すことがなくなると思うんですよね。そうした積み重ねで、いずれは成功すると思います。あとは、お金の勉強をもっとすればよかったなとも思います。今はスマホ一つでお金を稼げる時代なので、勉強して経験を積み、お金の運用の仕方を学ぶことで、様々な仕事にも活かされると思います。

お金の勉強、大事ですよね。起業を経験されたことで、より実感するのではないでしょうか?

そうですね、不動産についてはたくさん勉強をしたのですが、今はスマホ一つで資産運用もできる時代ですもんね。もちろん、それだけではつまらないこともあるとは思うんですが。簡単にいうと、長期的に物事を見ることができるマネジメント力が必要だと思いますね。

6.今の20代のメリット

スマホ一つで、あらゆる情報を得ることができる

山野さんが思う「今の20代のメリット」ってなんだと思いますか?

スマホ一つで世界中の"自分が掴みたい情報"を得ることができることですかね。世界中どこに行ってもスマホで翻訳もできるし、決済もできるし、PayPayを通してタイムリーに送金ができる時代というのはメリットだと思います。ただ、情報も多く入手できるあまりに、他人のキラキラした世界を多く目にすることがあると思うんですよね。そうした時に、自分と環境が違うことで不必要に落ち込んでしまうことも多いのではないかと思います。

確かに、情報が溢れている時代ですもんね。

とはいえ、自分と同じ考えや悩み、趣味の方などとコミュニティは形成しやすいですよね。本来であれば交わることのなかった人と簡単に交わることができ、マッチングの不具合が減っているのは良いなと思います。あとは、"有名になること"ひとつとっても、昔は芸能界に入ったり、モデルになったりなど間口が狭かったと思うのですが、今は動画一つ投稿することでバズる可能性もあることから、あらゆる可能性が広がりましたよね。

自分をバズらせることができるのもそうですし、情報を得ることも含めて、YouTubeをはじめとした動画コンテンツは今の時代に欠かせないですよね。

自分がこの領域を学びたいと思った時に、YouTubeで探せば専門家がたくさん解説してくれているんですよね。私もプレゼン資料を作る時に一度YouTubeで調べたことがあったのですが、非常に多くの動画が上がっていました。とはいえ、無料で公開することが当たり前な時代であるからこそ、どこでマネタイズするかの判断が難しくなっているように感じますね。

7.今の20代のデメリット

インプット量不足により、突破力が足りていない


山野さんが思う「今の20代のデメリット」ってなんだと思いますか?

インプット量が足りないことにより、突破力が不足していることではないでしょうか。インプットが足りていないと、自分の中で生まれるアイデアが不足し、選択肢が少なくなると思うんですよね。例えばこれは極論ですが、お金がなくて未来が見えない人がいたとしても、氷に囲まれた地域で、魚が大量に取れる場所だったら、年間5万円で暮らせる可能性もあるわけですよね。いずれにしても、究極の状況に追い込まれたとしても、自死を選択するのではなく、様々なことをインプットすることで、選択肢は増えるのではないかと思います。

今は情報も溢れていて、インプットができる環境は整っている状況ですよね。情報だけ得て、頭でっかちになっているような気もしますね。

それこそ、私が環境コンサルタントという仕事をしており、「天ぷら油の廃油で走る車」に乗っていたこともあったのですが、ガソリンが取れない状況になったとしても、天ぷら油で動く車があることを知らない人が多く、車に乗ることを諦めてしまうかもしれないですよね。そういったインプットの積み重ねが、生きる力であり、突破力でもあると思うと思うんですよね。

娯楽に関するインプットの機会は多いですが、生きる力を養うインプットはあまりしていないかもしれません。

例えば動画編集も同じことだと思うのですが、昔はYouTubeの動画も、編集レベルが今の私たちから見たら素人レベルだったと思うのですが、今はスマホやiPadひとつでプロレベルの動画が作れるようになっていますよね。作業そのものを解説したり、再生回数が取れるような作り方にすればそれが収入になる時代。つまり、人生の中で突破力を養う方法はたくさんあると思います。また、「あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ」など規制が多いような気がしますね。もちろんダメなことはダメなのですが、昔に比べて何事もグレーゾーンが大幅に減ったことで、工夫が生まれない環境になっているなとも感じます。

8.ご自身が影響を受けた人やモノ・コト

分析力・戦略家


いよいよ最後の質問なのですが、ご自身が影響を受けた人やモノ・コトなどありますか?

自分が起業した時に、事務所を間借りさせていただいた先輩に影響を受けましたね。その人は欲しいと思ったものをまず購入し、返済の日に間に合わせるような形で自分を追い込む人でした。私は今でも逆の考え方で、目標を作ってそこに向かって行動するタイプなのですが、自分とは異なる考え方に触れることで、勉強になることが多かったですね。また、とても分析が上手な方でした。例えば赤い車に乗っている人は勝手な人が多いと言っていて、なぜそうなのかを聞いたときに、赤い車に乗る人の分析を細かく教えてもらったんですよね。そういった分析力というのは、不動産屋が入居者を見極める際に必要不可欠だったこともあり、非常に勉強になりました。

確かに、仕事柄かもしれませんが、短時間で相手を判断しなければならないことが多そうですね。

入居者が悪い人だったり、家賃が払われなかったりすることで、その建物の価値が下がってしまうんですよね。なので、不動産屋は短時間で入居者のことを見極めないといけないことが多いんですよね。そういった際に、すぐに相手を分類することを学びました。あとは、島田紳助さんですかね。芸能界に対しての考え方や、何から何まで影響を受けました。お笑い芸人なのに、政治的な番組の司会をされたりなど、当時では異例な存在でした。

私は小さい頃テレビで見ていたのですが、すごい人気がありましたよね。

当時は、お笑い芸人はお笑い番組だけに出演することが当たり前だった時代に、お笑いだけではなく様々な業界を切り開いていったのが印象的でした。戦略的な方なのですが、やはり不動産も経営においても戦略が必要なので、影響を受けることが多かったです。

学生時代のお話から起業された時の状況、そして20代へのアドバイスやマインドセットなど、20代にとって勉強になる情報をいくつも教えてくれた山野さん。

個人的には、「自分が良いと思った方向に舵を切って歩いていく」という考え方に感銘を受けました。責任の所在についての考え方はそれぞれあると思うのですが、自分が全ての選択肢に対しての責任を負うことで迷いがなくなると感じたので、この考え方を大切にしていきたいなと思います。


〈取材・文・編集・写真=桝井孝一・金子圭介〉

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