前話を読む「赤い熾火(おきび)はめらめらと」
https://note.com/footedamame/n/nf1764ab17a9d
結局、ぼくは12時に届いた焚き火台をすぐに河原に持ち出して、夕方までに動画を撮り、その日のうちにそれを公開した。
カヲリさんには、なにも告げずに。
動画をあげた後にはどんな反応がきたものか怖くて見られなかったコメント欄を、じっくりと2日分確認する。自分で想像していたよりもずっと好意的なコメントが、かなり数多く寄せられていた。
そのどれもに対して、いままでとは違って「あなたはそうなんだね」と前向きに受け入れている自分がいるような気がする。
悪い気持ちや反発、「なんだコレ?(何がしたいんだ?)」という困惑や恐怖みたいなものもほぼ感じない。自分の動画なのに、どこか映画をみた感想を対等に伝え合っているような、そんな不思議な感じだ。
自分に対して、どこか恥ずかしさは残しつつ、吹っ切れたような、そんな気持ちになった。きっとまた、数日、数週間、数か月経ったらこのコメント欄に帰ってきそうな気がする。
動画のコメント欄には、kawoさんのコメントは無かった。
SNSアプリを開く。万が一、彼女の目にとまる前に自分から謝らなければ。
「ごめんなさい、動画投稿をしているんだけど、自分の過去について話していて、出さなくてもいいのにカヲリさんの名前を出してしまいました。」
送ろうとする直前、彼女のアイコンの写真が変わっていることに気付く。
と
ひとことが更新されていた。
明日の動画のために、充電器にバッテリを差し込む。こんなに用意周到に、そして明日動画を撮ることを確信しているのはいつぶりだろう。
熱めのお湯に浸かりたくなった。久しぶりにバスタブに多めのお湯を張って、2年くらい前に買った高めの入浴剤を入れた。
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「スキをひいて、生きていく」
https://note.com/footedamame/n/nef7a48f0acba