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レアル・マドリー:巨人は”スタジアム”で勝負を賭ける

2021年4月にR•マドリードのペレス会長がスーパーリーグ構想を発表した時は驚きでした。ユベントスやバルセロナに比べれば財務には余裕があり、欧州の舞台で成績をしっかり残していることを踏まえると、敢えてリスクを冒す理由が見えなかったからです。そして今でもスーパーリーグの旗を降ろしていません。

一体全体、スペインが誇る白い巨人は何がしたかったのか?そして今何をビジネスとして仕掛けようとしているのか?今回はスペインの巨人を率いるペレス会長の次なる狙いについて、例によって妄想を繰り広げていきます。本日のお品書きはこちら!


移籍金抑制と成績向上を同時実現!

スーパーリーグの発表は、コロナ禍による売上の急激な落ち込みが引き金になったとは思います。しかし、これだけ大規模な構想となると、数年前から準備を進めていたとしか考えられません。数年前からペレス会長を悩ませていたR•マドリードのビジネス上の限界は何だったのでしょうか?

ペレス会長といえば、2000年前後に銀河系軍団と呼ばれ、ジダン、ロナウド、R•カルロス、ベッカム、フィーゴと当時のスター選手を集めたチームを編成したことで一躍名を馳せました。しかし、攻撃に偏り過ぎたチームは欧州で勝てなくなり、高い人件費を賄いきれず瓦解します。

2009年にペレス会長は再登板に際し移籍戦略を転換していきます。登板直後こそ、クリスチャーノ・ロナウド、カカとスター選手をかき集めたのですが、その後10年間は移籍市場における売却額と獲得額がほぼ均衡する移籍金抑制策を敷いたのです。それにも関わらず、チームは3連覇を含む4回のCL制覇を成し遂げるなど、大成功したのです。

限界を迎えた移籍金抑制策

しかし、迎えた18-19シーズンはCLがベスト16で早々に敗退、ロペテギ監督は更迭されジダンが再登板で盛り返しましたが、国内リーグ3位で終わりました。無冠では許されないR・マドリードは19/20シーズンに再び超大型投資をするのですが、この時の目玉が大しくじり(アザールとヨビッチ)となってしまいます

※transfermarketよりフットボール経営分析マン作成

この反省もあってか超有望な若手と、ユース上がりの出戻り組という2軸に今のスカッドは切り替わりつつあります。前者の代表格が何かとお騒がせのヴィニシウス、後者の代表格がナチョです。

ただ、この戦略でも人件費は目立って抑制できていません。ペレス第二次政権当初は40%程度で抑えられていた人件費(対売上高)は、15/16シーズンから上昇に転じ21/22シーズン終了時点では70%と銀河系軍団後期とほぼ同じ人件費の水準になってしまっています。

アザールの契約打ち切りにより、23/24の人件費はやや下げ止まると思われますが、代わりに超有望な若手の獲得競争は熾烈を極めています。今季にベリンガムに支払った金額は1億ユーロと、ロドリゴやヴィニシウスの倍となっています。ちなみにカマビンガも8,000万ユーロと高額な獲得額となっています。以上を踏まえると、ペレス第二次政権の前半に実現した移籍コストを抑制して戦う手法は限界を迎えた可能性が高いと考えます。

王者ゆえに売上の伸びしろがない

コストを下げれないのであれば、売上を伸ばすという方法があります。しかし、R•マドリードは王者ゆえに競技面で売上を伸ばすことが極めて難しい

R•マドリードはスペイン王者はもちろん、欧州においても栄冠にもっとも輝いているクラブです。2000年以降のチャンピオンズリーグ(CL)制覇数においては、他を寄せ付けない計6回の優勝を誇っています。

国内リーグでは常に優勝争い。CLに出場すれば、当たり前のようにグループリーグを突破して、ベスト8には入ってくる。これ以上、競技面で良くなる余地はあるのでしょうか?

このように既に良い成績ゆえに、競技面で売上を伸ばす余地は小さい、という特殊な事情を抱えているのがR・マドリーなのです。こうしたジレンマが、ペレス会長がスーパーリーグを諦めきれない要因の一つになっていると考えます。

「ベルナベウ」で大勝負!

スーパーリーグ構想は頓挫したものの、そこは数々の困難を切り抜けてきた老獪ペレス会長、既に第二の矢を用意していました。それがホームスタジアムであるサンチャゴベルナベウ(以外、ベルナベウ)の大改修です。

近年、サッカースタジアムは単にサッカーをする場所から、レジャーやホテルも含めた複合商業施設にする動きが相次いでいます。日本国内だと鹿島や長崎が今熱いですよね。

欧州においては、最近の有名な例としてアーセナルのエティハド•スタジアム、トッテナムのトッテナム•ホットスパー•スタジアムが挙げられます。R•マドリードも複合商業施設へ変貌を遂げつつあり、間も無く本格稼働する予定です。

これが実現すれば、1億7500万ユーロの収入が4億ユーロへ大幅に上がると言われていますR•マドリードの売上を約30%ジャンプアップさせる夢のプロジェクトと言えるでしょう。

※21/22シーズンの実績にベルナベウ収益増加分を単純加算したもの

ただ、これは大勝負です。名将ベンゲルはエティハド建設のコスト負担の重さから、移籍市場で上手く立ち回れなくなり退任に追い込まれました。トッテナムは大エースのハリー•ケインをバイエルンに売らざるを得なくなりました。

新サンチャゴベルナベウの建設費用の総額は明らかになっていません。ただ、2019年と2021年のスタジアム用の借入額から8億ユーロを超えていることは確実で、かつ2022年のウクライナ紛争によるインフレ加速を踏まえれば10億ユーロ(1600億円相当)を超える建設費になっている可能性があります。

※wikipedia、各種報道より。トッテナムはレヴィ会長発言からの概算。

さすがのR・マドリードと言えども、全てを借り入れで補うのは財務上危険を伴います。ゆえに、ファンド会社のSixthstreetへスタジアム収入の一部の権利を売却すると引き換えに現金を得て、財務バランスの安定を図る予定のようです。

仮にベルナベウ・プロジェクトが成功すれば、R・マドリードは財務面でも”王者”になっていくでしょう。その時、ラ・リーガは、ブンデスリーグのようにR・マドリード一強 vs. その他挑戦者 という構図に変わっていくのだと妄想しています。放映権料が伸び悩む現在、スタジアムはそれくらい超超超重要なのです。では、本日も良いサッカー生活を!


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