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円安に負けるな!日本サッカー選手の海外移籍金

Xを見ると、欧州に自分の心のチームを応援・観戦に行く方が増えていますね。そんな方々にとって最大の悩みの種になっていると思われるのが、円安です。コロナ前の2019年は1ユーロ=122~3円くらいでしたが、今では170円近く。円はユーロに対して40%近く下げたことになります。

日本経済全般諸々を考えればポジティブな面があるかもしれないのですが、ただ単なる海外サッカー好きの立場からすると渡欧だけでなく、円建てで見た放映権料も上がってしまうので、あまり歓迎はできません。苦しんだ放送局が謎の女子アイドルユニットを作るという迷策も出てくる始末です。

現状を嘆いても仕方がないので、ここは1つ、円安とサッカーのつながりについて妄想力を爆発させてみましょう。その名も「通貨安に負けない、
日本選手の海外移籍
」です。本日のお品書きはこちら。


アルゼンチン 通貨安の大先輩に学ぶ

日本は先進国の中では通貨安が進んでいる国ですが、世界を見渡せば上には上(?)がいくらでもいます。サッカー大国であり通貨安界の中でも最強の一人と言えば、アルゼンチンです。

アルゼンチンの通貨、アルゼンチンペソの下落率は日本円の比ではありません。なんと2012年からの下落率は、いや下落率というレベルではなく、分数で表記すべきレベルですね。対ドルでの価値は1/200になりました。日本円で言うと、一ドル=100円だったものが、20,000円になった換算です。

通貨が1/200になったらアルゼンチンの選手が安くなる?いえいえ全然そんなことはありません。ユーロ建てでしっかり移籍金を獲得するのでペソの値動きとは全く関係なく、アルゼンチンリーグ全体で安定的に移籍金を獲得しています。

 

通貨安に負けない秘訣は「外貨建て価格」

 アルゼンチンリーグが通貨安をものともしない理由に、先ほど書いた「ユーロ建て(外貨建て)」で考えるというものがあります。海外サッカーを嗜んでいる皆さんにとっては視聴料を通じて外貨建てのプライシングを感じていらっしゃると思いますが、世間一般ではまだまだ感覚として受け入れられていません。
 外貨建てプライシングの例として、東京の豊洲新市場における外国人観光客をターゲットとした外食が挙げられます。1食4,000~5,000円という価格に、テレビでは反発や驚きの声が報じられたりします。しかし、アメリカに出張中の私としては、全く驚きの価格ではありません。4,000円、すなわち米ドル換算で25ドル程度は、ファースト・フードチェーン店の外食レベルの価格です。マクドナルドでMサイズポテト注文しようとしたら5ドル(800円)超えるんですよ、これで税金前価格なんすよ。というのが米国の当たり前なので、日本の外食レベルを考えたら10,000円とったって全く罰は当たりません。

アメリカのニュージャーシー州で大き目の玉ねぎが1個1.7ドル(270円!)
自炊しても1食1,000円普通に超える世界。白目向きながら生活してます。
撮影:フットボール経営分析マン

 外貨建てプライシングであれば、通貨が安くなった分だけ自国通貨建ての価格を上げていくので、通貨安に伴うインフレ圧力に屈しない安定的な収入を得ることができます。

Jリーグは選手「輸入国」

 さて、我がJリーグの移籍金収支はどうでしょうか。はい、下図の通りマイナスでございます。なんと、通貨安となっているにもかかわらず、選手獲得が先んじてるんですね。高額獲得を見ると、セレッソ大阪のブエノ選手(ブラジルのアトレティコ、推定5.4億円)、川崎フロンターレのエリソン選手(ブラジルのボタフォゴ、推定5.4億円)、ガンバ大阪のウェリントン選手(ブルガリアのレフスキ・ソフィア、推定5.1億円)と海外からの獲得に高いお金を払っています。

※Transfermarketには一部の日本人選手の海外移籍金が非公開ゆえにデータがなく、収支は実態より下振れている恐れがあります。

 一方で海外への選手売却は、名古屋グランパスのマテウス選手(サウジアラビア1部アル・タワーウンへ、推計5億円)が大きかったものの、次はベルギーのサンジロワーズへ移籍した町田選手(鹿島アントラーズ、推計1.7億円)と、大分レベル感が落ちてしまいます。

まずは周辺リーグのトップへ直接渡欧

 円安によりJリーグの買い手としての力は低下する一方、売り手としては評価が高まっていません。このままだと、リーグの競争力にも影響が響いてきます。
 別の原稿でも書いたのですが、日本人選手の移籍金は百万ユーロ(1.7億円)が相場と非常に低く、2~3倍に上がる余地はあります。少なくとも移籍金の収支をトントンにすることは、今後5年以内に全然可能なはずです。

 そして次は1千万ユーロ級の移籍金を獲得することです。これは全然夢物語ではありません。下図は、23/24シーズンのアルゼンチン国内から海外への移籍高額ランキングです。昨季はE・フェルナンデスというビッグヒット(4430万ユーロ、ベンフィカへ)がありましたが、今季は小粒な移籍が多いシーズンでした。
 移籍先を見ていただければわかる通り、ビッグクラブが青田買い5大リーグの中位周辺リーグのトップクラブ、が買いに来ています。今はその他リーグの中位あたりが、日本人選手の欧州最初のステップですが、そこから一段上がってポルトガル、オランダ、ベルギー辺りのトップクラブが最初の地になると、1千万ユーロは不可思議ではありません。

輸出産業としてのサッカーの位置づけ

 さてはて、日本がアルゼンチンのようにめでたく1千万ユーロ級の海外への売却を継続的にできるサッカー選手輸出大国となったら円安は止めれるのでしょうか?
 日本が超円安となった背景の一つに貿易・サービス収支の赤字があります。海外からモノやサービスを買う金額の方が、海外に売る金額より大きいので、日本円を売る人の方が多くなってしまったわけです。(その他、米国との金利差、新NISAなど他にも円安の要因は諸々あります)

 残念ながら、日本の貿易・サービス収支の赤字額(海外への支払い超)は過去1年で6兆円(23年4月~24年3月)にのぼります。アルゼンチンの年平均の移籍黒字金が120億円程度なので、サッカー一発だけでは打ち返せない金額ではあります。
 しかし、今のように貿易・サービス収支がトントン(均衡)に近付いている時に少しでも黒字を稼ぐことで、円安をマイルドにできるはずです。

 サッカー輸出国としての先輩はアルゼンチンだけではありません。そう、王国ブラジルという更に上の存在もいます(90年代は通貨安の常習犯、今は健全化)。ブラジルの移籍金収支はアルゼンチンを更に上回る259億円相当。ブラジルは日本の倍人口がいるため、ここにたどり着けるか分かりませんが、アルゼンチンの年100億円は狙っていきたいところです。

※ユーロ円は24年5月末のレートで換算。ブラジルとアルゼンチンは12/13~23/24シーズンの平均。

 なお、アルゼンチンは選手移籍の売却額で言えば平均220億円(1億3千万ユーロ)日本の輸出項目で言うと、お菓子(307億円)をやや下回る金額ですね。日本のお菓子と言えば、海外でも人気があり専門輸出業者もでてくるぐらいです。是非、日本の選手も世界に旅立ってブランドを確立してほしいです!では、本日もよいサッカー生活を!

https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/index.html#m1
農林水産省 
 2023年通年の輸出額

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