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イングランドのポイントはく奪列伝

さてはて、エバートンの勝ち点はく奪が発表され、次はマンチェスターシティだ!チェルシーだ!と騒がしくなってしますね。

サッカー=エバートンに勝ち点10はく奪処分、財政規則に違反 (msn.com)

しかし、イングランドの歴史を紐解けば、今回のことがどうってことない位に大きなペナルティを喰らいながら、プレミアリーグやプロリーグを堂々と戦っているクラブがあります。そんなクラブを紹介してきましょう。


奇跡のルートン、逆手のボーンマス

イングランドでポイントはく奪、と言えばルートン・タウンの悲劇と奇跡を語らないわけにはいかないでしょう。08/09シーズンのルートンは、当時のオーナー(デイビット・ピンクニー)が債務を増加させ過ぎた結果、経営危機に陥り、しかもシーズンが終わるまでに債務者との返済計画見直しの合意をとりつけることに失敗。

これにより2部以下のリーグを管轄するEFLより20点の勝ち点はく奪、さらに移籍に関してFAを定めるルール以外のルートでエージェントに支払を行ったとの理由で、イングランド全体を統括するFAから別途10点の勝ち点はく奪が宣告されました。FA(全体統括)とEFL(リーグ統括)の勝ち点はく奪のタイミングが重なってしまうという不運により、当時は3部にいたルートンは生き残りをかけてブライトンと対決したものの敢え無く敗戦。4部に降格します。なお、FAの公式声明文では「タイミングが悪かったのは申し訳ないが・」との文言があったようで、FAも気を使うほどの不運だったようです。

その後ノンリーグまで降格し5シーズンを過ごすことになるですが、ここからが奇跡の始まりです。2014/15シーズンからはリーグ2(4部)に復帰すると、2018/19はリーグ1(3部)へ昇格。そのシーズンに優勝して、チャンピオンシップ(2部)へ復帰。そしてそしてそして、23/24シーズンはプレミアリーグに挑戦!この奇跡を現地の人と体感し、公式ファンクラブの一員となった日本人の方がいるので、是非ルートン(hatters)に興味を持った、という方は下記のサイトを訪れてみてください。
ルートン・タウンFC~5部からプレミアリーグへ。その歴史と旅路を辿る~ | ディ アハト (theletter.jp)

2008年と言えば、米金融大手リーマンブラザーズの破綻を機に世界が金融危機に陥り、経済が大きく落ち込んだ時期です。財務状況がよろしくなかったサッカーチームは次々と経営が困難になり、ボーンマスも例外ではありませんでした。

08/09シーズンのリーグ2(4部)前に、クラブは破綻寸前。2008年末に地元のビジネスマンであるアダム・マリーが買収に名乗りを上げるも、資金を集めることに失敗。しかし、当時31歳という最年少監督だったエディ・ハウのもとチームは奮戦し、リーグ残留に必要な勝ち点を確保。2009年6月には、マリー氏がコンソーシアムを組んで最終的にクラブの救出に成功します。

エディ・ハウはバーンリーに引き抜かれてしまい、チームはしばらく低迷します。しかし、12/13シーズンにハウ氏が復帰。15/16シーズンからはプレミアリーグへ昇格し、今日に至るのです。

このチームがすごいところは、この-17ポイントはく奪を長編ドキュメンタリーにしてクラブのPRとしているところです。このふてぶてしさ、粘り強さが何ともボーンマスらしいですね。


名門リーズ、古豪復活なるかダービー

2008年の金融危機と言えば、かつては、ヴィドゥカ、マンチェスター・Uの守備の要となったファーディナントや長らく日本代表を苦しめた豪州代表キューウェル(個人的に超イケメン)が所属し、チャンピオンズリーグはベスト4まで入った名門リーズも財政危機に陥り破綻

オーナーが、ケン・ベイツ(2005年)→ドバイのGFHキャピタル(2012年)→イタリア人のマッシモ・チェリーノ(2014年)と転々とし、2017年にアンドレア・ラドリッァーニ氏の手に渡ったところで経営がようやっと安定。今季はチャンピオンシップでしたが、それまではプレミアで奇人ビエルサ監督の元で挑戦的なフットボールを見せていました。
ところが今年の6月に、ラドリッァーニ氏は米国のNFLフランチャイズ49ersへ株式の大半を売却すると発表18年の間にオーナーが5回変わるという落ち着かないクラブとなっています。なお、ラドリッァーニ氏はセリエBのサンプドリアの方へ経営の注力先を変えています。米国資本が入り、再びプレミアに向けて冬の移籍市場でテコ入れが入るのか注目手です。

それ以外だと、元マンチェスター・Uのルーニー氏が監督になったことで有名になったダービー・カウンティも破産状態に陥り勝ち点の大幅なはく奪を宣告されました。今季はリーグ1(3部)参戦となり、かつ地元の不動産会社Clowes Developmentの元、立て直しを図っています。80~90年代はトップリーグに所属することが多かった古豪ダービーの復活に期待です。

次なる奇跡となるかベリーAFC

最後にプレミアにたどり着いたら、ルートンを超える史上最大の奇跡となるであろうクラブについてご紹介したいと思います。

その名はベリーAFC。現在は9部に当たるノース・ウェスト・カントリーリーグに所属しています。元はベリーFCであり、第一次世界大戦前はトップリーグの一角を担っていました。もっとも、第二次世界大戦後は2部生活が長くなり、60年代以降は3部生活が定着していました。

そんなベリーFCは2018年に破綻寸前に陥ります。そこでスティーブ・デイルというビジネスマンがクラブを1ポンドで買収し、高値で売り抜けようと画策します(この手の1ポンド・ディールは債務が多い下位クラブでよく見受けられます)。ところがどっこい。デイル氏が予想していた以上に未払い給与や負債が多く、数か月で買収先を見つけないと即破綻となることが発覚します。

地元政府の懇願もあり、ベリーFCのリーグ不参加の判定は伸びに伸びて8月まで粘ったのですが、デイル氏は買収に失敗。どうやら同氏が高値で売ることにこだわり、初期に届いたオファーを断っていた模様です。残念ながら熱意のない短期売却目的のオーナーの下に入ったベリーFCは2019年に134年の歴史に幕を閉じました

が、が、が、そんなことで諦めるイングランドっ子はいません。新たに系譜を引き継ぐベリーズAFCが誕生し、ノンリーグから再スタートを切っています。最速でも10年後になりますが、プレミアリーグへたどり着いた暁にはイングランド史上最大の逆転劇として記録されるでしょう

このように下位チームは下位チームで転落と再建というドラマがあります。是非、プレミアムに昇格したてのチームや、下位常連チームを見るときは、試合の面白さのみならず、過去の経緯も踏まえるとより楽しめます。
では、本日も良いサッカー生活を!

【参考URL】Everton: What other big points deductions have there been? - BBC Sport

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