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欧州スーパーリーグ考察~敗れた米国スタイル導入~

明けましておめでとうございます。2024年もサッカービジネスに関するトピックを配信して、皆様の深夜の観戦のネタを提供していきたいと思います。

2024年の最初に取り上げるのは、昨年末に欧州を騒がせた「スーパリーグ構想」の再燃です。欧州裁判所はFIFAやUEFAによるスーパーリーグ参加阻止は権限の過大行使の恐れがあることを指摘しました。しかしながら、イタリアサッカー連盟(FIGC)、プレミアリーグ、フランスプロリーグ(LFP)など各国リーグがFIFAやUEFAに代わってスーパーリーグへの参加に対して厳罰をもって臨む声明を出しており、実質的に実現は不可能と言えます。

2021年の突然の登場と退場、今でも燻り続ける再開の火種。一体全体、欧州のサッカー界で何が起こっているのでしょうか。


試合数を増やして稼ぐスタイルに疲弊感

2021年4月にR・マドリーを中心に12のビッククラブがスーパーリーグ創設を発表しました。直接的なきっかけはコロナ禍(2020年)による売上の急激な落ち込みだったと考えられます。

ただ、それ以前からビッククラブにはUEFAやFIFAへの不満がたまっていました。過去の記事で分析で指摘した通り、所属選手の負担が大きくなる割には、売上が伸びていなかったためです。

”頭打ち”の予感漂うUEFAの売上高、禁断の中東融合も否定できない|FootBall経営分析マン (note.com)

特にUEFAは代表戦の収益増強を企図して18/19シーズンにUEFAネーションズ・リーグをスタートさせました。そうなると、欧州各国の代表に召集された選手たちは真剣勝負の舞台により多く駆り出されることになります。当然ながら、代表選手はビッククラブ所属であることが多いため、ビッククラブほど代表選後のけがの離脱や疲労回復に悩まされることになります。

だったら、試合数を制限しつつ、出場クラブも制限することでビッククラブの利益を挙げようとしたのが、スーパーリーグ構想だと考えています。結局、ビッククラブ以外への配慮が大幅に欠けていたため、総スカンを喰らって敢え無く2日間で退場となりました。

旧スーパーリーグは米国直輸入型

ただ、構想自体は欧州にとって奇天烈(きてれつ)でしたが、米国では一般的なクローズド・リーグというシステムでした。降格・昇格がないクローズド・リーグでは、チーム同士の力関係が均衡しやすいため、一試合一試合の展開が読みにくくなり、試合を見る興奮感が大きくなります。何より降格による売上急減がないため、業績の見通しが立ちやすく、チームへの投資がしやすくなります

弱点はドラフト制度など、戦力の均衡を図るシステムを入れておかないと徐々に戦力の偏りが広がっていってしまうことにあります。一方、オープン・リーグの欧州型では昇格・降格でチームが入れ替わるため、自ずと力のあるチームが新規参入するので、その必要はありません。

米国型のクローズド・リーグは、投資のしやすさから、「新規オーナーが来る→チームへ投資増→リーグが魅力的になりTV放映権料UP!→新たなオーナーが来る→・・」の好循環が一因となり市場価値の大幅な上昇に成功しました。下図はFIGCがForbesを基にまとめた2012年と2022年の市場価値が最も高いスポーツクラブTOP10です。2012年はサッカークラブが4つランクインしていましたが、2022年は1つもなし。特にNBAに後塵を拝す結果となっています。

(出所)FIGC Report Calcio 2023

米国での成功を考えると、ビジネス的にはあり得る発想だったのですが、ビッククラブ以外のチームの旨味が全くないため、反発だけ招いてとん挫しました。

新フォーマットは欧州型

現在、スーパーリーグはA22 sports managementが構想実現に向けて各種プランを発表しています。現在の構想はかなり欧州型に近いものとなっています。新スーパーリーグは、64チームが参加。BLUEに32チーム、STARとGOLDに各々16チームが参加します。各リーグの最下位2チームは降格、逆に上位2チームは昇格します。

https://a22sports.com/en/competition/

BLUEリーグは、国内リーグの結果によって入れ替わります。最初にSTARリーグに振り分けられるビッククラブに優位ではありますが、BLUEリーグからの逆転の余地は十分に残されているシステムです。

実現出来たら観戦コスト大幅減、、、だが

イメージ的にはCL+ヨーロッパリーグ(EL)+ヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)を一挙にリーグ戦形式でやってしまおう、といったものに近いと思います。

ゆえに観客側から見ると、放映権料がコンペティションごとに分断されないため、一つのチャンネルで欧州の舞台が見れるというメリットがあります。しかも、スーパーリーグは無料放送(但し広告あり)を基本としているため、財布に滅茶滅茶優しいフォーマットになっています。

https://a22sports.com/en/competition/

もっとも、無料放送、すなわち広告収入だけで高収益を維持できるのかは不確実性が高いと言わざるを得ません。現在、UEFAの収入は8割以上が放映権料となっています。これを広告収入に置き換えるには、相当数の企業と事前に合意してなければ不可能です。

UEFA Budget 2022/23

2021年のとん挫の時に、スポンサー企業はイメージダウンの憂き目にあい相次いで撤退しました。例えば、資金面でバックアップをしていたJPモルガンは集中非難を浴び、撤回を余儀なくされています。かかる状況を踏まえると、スーパーリーグ実現の可能性は現時点で低いと言っていいでしょう。


さて、スーパーリーグを巡るいざこざを要点を絞って振り返ってみました。ただ、このリーグの首謀者であるR・マドリーのペレス会長に焦点を当ててみると、この騒動の背後には様々な断絶を抱えていたことが分かります。次稿では、そのあたりについても触れたいと思います。

では、2024年も良いサッカー生活を!あけましておめでとう!

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