インサイドキックの考察(イニエスタ)

イニエスタって最強じゃないですか。
そのイニエスタのトレーニング映像を見て感じたことを置いておきます。

その映像のリンクはこちら

まずこの映像を見て考えたこと1つ目。
やっぱりインサイドキックは2種類ある。

ここでいう2種類とは、所謂「パター型」と「膝下型」ではありません。それについては『蹴球計画 正しいインサイドキックとは」や『インサイドキックのトレーニングに必要な知識 理論編10000字』をみて頂ければいいと思います。

さて今回感じた2種類は、「インパクトポイントの違い」です。

普通インサイドキックというと、足の土踏まずの辺りでインパクトするイメージがあると思います。(参考:中村憲剛のトラップのこだわり)

イニエスタの映像を見ても、土踏まずあたりをインパクトポイントにして蹴ってますね。

でもそれだけじゃないんですよ。よく観察してみると、親指の下の出っ張っている部分(画像の「種子骨」部分)をインパクトポイントにして蹴っている場合もあるんですね。左右拘らずです。

このキックを行うために共通しているのは、止めた場所に対して対角線上にボールを蹴る時に、このキックを使っているという事です。

この種子骨をインパクトポイントにしたキックは「インフロントキック」として、カーブをかける時や無回転のボールを蹴る時など、主に浮いたボールを蹴る時に使われます。しかしながらこのインパクトポイントはインサイドキックにも用いられます。(FK時に壁下を通す時のキックに似ているかもしれません)海外の選手を見てみるとこのキックを使って攻撃のスイッチとなる縦パスを通していることが多い印象です。人によっては今回の主張を「グラウンダーのボールを蹴る時にもインフロントキックは使われる」と捉えるかもしれません。そこら辺はお任せします。

個人的にはこの2種類のキックは良し悪しではなく、パスの方向によって蹴り分けられていると考えられます。そのため、ここではメリット・デメリットの比較はしません。

2つ目が「インサイドキック(土踏まず)」の際の踏み込みが強くないということです。初心者や中級者のキックの特徴として、「強く蹴るために強く踏み込む」というのがあると思います。しかし、イニエスタを見てみると「踏み込む」というより「移動」に近いことがわかります。その証拠にキック前の助走段階と踏み込みで歩幅が変わらず、跳躍が見られません。
そのかわり軸足の膝の折りたたみを利用して、軸足と蹴り足の距離感を調整しているように見えます。

また、フォロースルーを見てみるとつま先が地面と平行な状態から、上に上がっています。その証拠にキック後の着地は踵から付いて、つま先は上がったままです。ここら辺についても、初心者だとインサイドキックのフォロースルーを「押し出す」と教えられた弊害で、平行移動になってしまいボールに力が上手く伝わっていないことが多々あるのではないかと考えられます。日本人と海外の選手を比較してみると、圧倒的に日本の選手の方がパススピードが遅く感じるのは、筋肉量や骨格だけでなく、このようなバイオメカニクス的なものが関係している可能性があるのではないでしょうか。

ちなみに中村憲剛のキックを見てもつま先は上がっていますね。

さて、最後にこれらを踏まえてトレーニングに落とし込んで考えます。まず思い浮かぶのは、対面での短距離のパス練習だけでは不十分であるということです。対面短距離のパス練習では「土踏まず型のインサイドキック」は練習できても「種子骨型インサイドキック」は練習できないためです。

次に、とりわけ初心者レベルにおいては対面短距離のパス練習が弊害をもたらす可能性があるということです。対面パスでは止める・蹴るの徹底のために、止めてから1ステップで蹴ることが要求されます。それが成功の条件だからです。しかし、初心者レベルだとトラップが伸びてしまうことが多々あります。そうなった際に、1ステップで蹴ろうとしてキック前の跳躍距離が伸び、結果的に強く踏み込む癖がつくことが考えられます。

これらのことを総合的に考えると、とりわけ初心者レベルの短距離対面パスは望ましくないのではないかと考えられます。対面ではなく角度をつけたトレーニングを行ったり、止まった状態ではなく動きながらのトレーニングが好ましいのではないかという事です。

正解はわかりません。現場で身をもって体験していくしかないです。

実際スペインなどではどうなのでしょうか。パスが上手いイメージがありますが、対面パスをやっているイメージよりも動きながら角度をつけたパス練習をしているイメージの方が強いのです。ただ、真実はわかりません。もし経験のある方がいれば教えて貰いたいです。

実際、世界と戦っていく上で日本の対面パスの文化が功を奏す時が必ず来ると個人的には思っています。どんなものでも武器は武器です。ただ対面パスだけじゃダメなんだという、当たり前のことを強く感じた今回でした。

では。

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