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「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文㊷

「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」(映画/2019)

 ポーランド・イギリス・ウクライナの合作で、原題「Mr. Jones」。USSRのスターリン体制化における、経済政策の闇を暴いた英国人記者ガレス=ジョーンズの伝記映画。事実とは異なる演出が特に残忍さを表現するシーンに散見されることから、批判的な意見もある。



 1929年の暗黒の木曜日に始まった世界恐慌の中で、たった一か国ソ連だけは5か年計画の下で邁進しその影響を受けなかった。そのため主人公ガレス=ジョーンズはソ連の資金源に違和感を感じ、ひとりモスクワに乗り込む。首都に住む人々は変わらず豊かな暮らしをしていたが、現地に住むジャーナリストに聞くと鍵はウクライナ。ウクライナはジョーンズの母が英語教師をした場所であり、豊かな大地だと聞いていた。しかしその大地がソ連を暴く鍵になると考えジョーンズは冬のウクライナを訪れる。





 ソヴィエト連邦を現在のロシアと同じ国として理解することは傲慢だと言わざるを得ないが、ウクライナ人が持つロシア人への嫌悪感がこのホロドモールに始まると言える。
 僕の僅かばかりの世界史のカッコいい事実の中に、「なお、計画経済進行中のソ連は世界恐慌の影響を受けなかった」というのがある。実際これ事実ではあるし、米国では民主主義のチャンピオンが大量の土木工事を行わなければこれを脱することは出来なかったし、英国も戦争がなければこれを乗り切ることが出来なかった。
 しかしそこには闇があったと。ウクライナで行う搾取が、モスクワの豊かさを創出し、結局は農業力に基づく経済であったと分析される。この成功が戦後の東ドイツにおける同様の豊かさの演出に繋がる。
 計画経済の失敗、そして非人道的行為の代表として顧みる具体例として現在は解釈されている。

 ところが私は少々疑問に感じてしまう。
 もちろん資本主義経済の方が今のところはどうやら正解らしいと考えている。しかし、ここ30年間これだけやる気のある人間が日本社会に出続けたにもかからわらず成長が紛争国並みというのは疑問を感じざるを得ない。出る杭が打たれる社会だからか。計画経済でも成長できるのであればそれに則ることはそこまでおかしいことではないように考えてしまう。
 歴史は反省しつつ、それを参考にする教材となってしかるべきである。もしかしてソ連を参考にする点はあるのだろうか、あるいは今ソ連を参考にしている国はどうやらウクライナを責め立てているようだが、それをどう解釈するのか、それは僕たちの世代で答えを出し、いずれ裁かれる課題のような気がする。

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