表紙

勝ち点推移から見たJ1自動昇格の条件(一部修正して再投稿)

はじめに
~この投稿のきっかけ~


*元記事は開幕戦前に投稿しています。Jリーグ再開に伴い、一部加筆修正しています。
今季は昇格プレーオフが無くなりましたので、そこら辺は無視してご覧ください。

「J2は3戦2勝のペースでいかないと勝ち点80には届かない。シーズンの3分の1が終わった段階で、このままでいいのかどうかしっかり見極める」

上記は、ジュビロ磐田小野社長のコメントである。

この発言を聞いて、ジュビロがクラブとしてJ1自動昇格を至上命題に掲げていることを感じるとともに、以下の2つの疑問がふと湧いた。

疑問①そもそも自動昇格圏内には勝ち点がどれくらい必要なのか?
疑問②判断時期はシーズンの1/3経過時で妥当なのか?

J2の試合数は42。獲得可能な勝ち点は42×3 = 126であり、3戦2勝ペースで獲得できる勝ち点は126×2/3=84となる。

たしかに勝ち点80を目指すならば、3戦2勝のペースが必要となりそうだ。

では、上記の疑問を解消すべく、過去5年間 (2015~2019)の最終順位1~6位クラブ(全30クラブ)の勝ち点推移を調べてみた。

個人的結論
①自動昇格には勝ち点80が目安になりそう。

②シーズン1/3辺りは1つ目の分岐点になりそう。ただしこの段階での勝ち点として、3戦2勝ペースの28 は必須ではない。

以下では①②の根拠と、より詳細なデータによる
③昇格チームの勝ち点推移傾向をまとめてみた。

④では、リモートマッチの影響として懸念されるホームゲームの戦績と自動昇格についてまとめてみた。

⑤その他では、
5-1昇格クラブは最大何連勝しているのか?
5-2昇格にはスタートダッシュが必須か?
についてまとめている。

①最終順位と平均勝ち点


疑問① そもそも自動昇格には勝ち点がどれくらい必要なのか?

以下は、過去5年間 (2015~2019年)の最終順位と平均勝ち点を示した表である。

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2位の平均勝ち点が80.2であることから、自動昇格圏内を目指すならば勝ち点80が目途になりそうである。

気になったのは、2位と3位の勝ち点差がわずかに2であるということ。自動昇格圏内に入ることが一筋縄ではいかないことが分かる。実際に、2位と3位の勝ち点が同じだった年が過去5年間で3度もある。(2015年、2016年、2018年)。

昇格プレーオフに目を移すと、6位の平均勝ち点は66.8。1試合1.6ペースで勝ち点を積み上げる必要があることが窺える。



②勝ち点積み上げペース


疑問② 判断時期はシーズンの1/3経過時で妥当なのか?

チームの調子には波がある。1試合を勝ち点2ペースで積み上げることができれば自動昇格圏内とはいえ、一定のペースで積み上げることは現実的に難しいことが予想される。

そこで、過去の昇格クラブが積み上げた勝ち点の推移をまとめてみた。

こちらは過去5年間、最終順位1〜6位のクラブが、各節終了時点で獲得していた勝ち点を示した表とグラフである。

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画像3

シーズンの1/3にあたる14節終了時点(表:青色)では、最終順位1~6位クラブの勝ち点差が少なく、1試合でひっくり返せるわずかな差であることが分かる。

30節終了時点(表:赤色)では1位クラブが頭一つ抜けているが、2~6位クラブはまだ団子状態である。

当初の疑問②判断時期はシーズンの1/3で妥当なのか?に戻る。
チームの調子が今一つで再建が必要な場合、20-30節で1位とその他の差が大きく開いていることを考えると、その前には立て直したい。

つまり、14節辺りは1回目の分岐点になりうると感じる。ただし、14節終了時点での平均勝ち点は最終順位2位クラブが24であることから、勝ち点28が必要ではない。

*直近5年間、シーズン1/3時点 (第14節まで)で勝ち点28を獲得している最終順位1〜6位のクラブは5クラブしかない。その内、最終順位1, 2位クラブは4クラブ。

以上より個人的結論をまとめると以下のようになった。

①自動昇格には勝ち点80が目安になりそう。
②シーズン1/3辺りは1つ目の分岐点になりそう。ただし勝ち点としては、28が必須ではない。


ひとまず当初の疑問は解決した。しかしこれらをまとめる中で、最終順位と勝ち点の推移には傾向があるのではないかと思い、③昇格チームの勝ち点推移傾向にてまとめた。

よろしければ続きもどうぞ!


③昇格チームの勝ち点推移傾向


昇格クラブの傾向を見るうえで注目したのは、どの時期にどのくらいのペースで勝ち点を獲得したのかである。

②で示した表は5年間の平均だったが、今回は各クラブに焦点を当てている。

その方法は、

1.シーズンを10節ごとに区切る(1~10, 11~20, 21~30, 31~42)。

2.上記の4分画した期間において、各クラブが獲得した勝ち点を求める

3.1試合あたりの平均獲得勝ち点2以上の時期と、1.6 未満の時期をまとめる。

ここでは特徴的だった点についてまとめた。



〇平均勝ち点2以上の期間について


以下は、平均勝ち点2以上の期間と最終順位を示している。
※の棒グラフであれば、過去5年間、最終順位が1位となったクラブのうち2クラブが、1~10節の期間で勝ち点を2.0以上のペースで積み重ねたことを意味する。

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注目したのは2点。

①最終順位1位:5年間、全てのクラブが21~30節で平均勝ち点2以上を獲得。そのうち3クラブは、11~20節でも平均勝ち点2以上である。一方で31~42節に平均勝ち点2以上を獲得したクラブはない。

②最終順位2位:5年間、全てのクラブが31~42節で平均勝ち点2以上を獲得。11~20節、21~30節で平均勝ち点2以上を獲得したクラブは、それぞれ1クラブずつしかない。

これらの結果は以下のことを示唆しているのかもしれない。

21~30節は6月下旬~9月上旬(2020シーズン)に該当し、夏場安定した成績を出せるクラブが優勝しやすいのかもしれない。また、終盤のラストスパートを勝ち抜いたクラブが2位になっている。


〇平均勝ち点1.6未満の期間について


*1.6はプレーオフ圏内となる、6位の平均勝ち点である66.7に必要なペース

次の図は、平均勝ち点1.6未満の期間と最終順位を示している。
※の棒グラフであれば、最終順位が3位となったクラブのうち、勝ち点1.6未満のペースで積み重ねた期間が0回だったクラブが3クラブあったことを意味する。

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注目したのは3点

①1位クラブは5クラブ全て、平均勝ち点1.6未満の期間が1つある。

②1~3位クラブで平均勝ち点1.6未満の期間が2つ以上あったクラブは、わずか1クラブ(2位クラブが1度だけ2回)。

③4~6位クラブは、平均勝ち点1.6未満の期間を2つ以上持つ割合が半数以上。

これらをまとめると、

1位のクラブでも平均勝ち点1.6未満の期間はあることから、1シーズンを安定して勝ち抜くことは難しい。しかし、3位以上になるためにはその期間を1つに抑える必要がありそう。

この結果より、常にハイペースで勝ち点を積み上げることがいかに難しいかが再確認できた。

また、昇格するクラブの勝ち点積み重ねの傾向として、夏場で抜け出す(1位クラブに多い)、もしくはラストスパートで2位に滑り込むという大きく分けて2パターンがあることが分かった。

*過去5年間、25節終了時点で首位のクラブが最終的に1位。2位となった5クラブ中3クラブが39節時点で3位以下。

(追記)勝負の分かれ目に差し掛かると思われた夏場(6月下旬~)からの再開を余儀なくされたJリーグ。試合間隔も短く、一度調子を崩すと立て直すことが難しくなりそう。最終手段として使われる”監督交代”を判断することが躊躇われるかもしれませんね。


④昇格クラブはホームゲームに強いのか(追記)


〇リモートマッチの影響

待ちに待ったJリーグの再開。しかしながら過密日程や当面のリモートマッチ等、不安な面も。

スタジアムで観戦をすることは、”観る・応援する”だけでなく、サポーター1人1人が各々の物語(思い出)を作りに行くという点で、画面越しの応援とは全くの別物。少しでも早い現地応援の解禁が待たれる。

そんなサポーター目線の心情とは別に、リモートマッチは結果にどのような影響を与えるのか。ブンデスリーガでは、こんな衝撃的な影響が出ている模様。

記事によれば中断前のデータでは、ホームチームの勝利が43.3%、引き分けが21.9%、アウェーチームの勝利が34.8%となっている(昨季はホーム勝利45.1%、引き分け23.9%、アウェー勝利31%)。

 その一方で、シーズン再開後最初の5試合ではホームチームの勝利が21.7%、引き分けが30.4%、アウェーチームの勝利が47.8%。当然サンプル数がまだ少ないことは留意点としてあるが、勝率に関してはホームとアウェーで逆転現象が起きている。


〇ホームゲームと順位

そこで、過去5年間の昇格クラブの、ホームゲーム(以下、Hゲーム)とアウェイゲーム(以下、Aゲーム)の戦績をまとめてみた。
*ここでいう順位とは、勝ち点のみにもとづいており得失点等は考慮していない。

大前提として、プレーオフ圏内に入ることができるクラブはHゲーム, Aゲーム問わず安定した成績を示している。

過去5年間、プレーオフ圏内(6位以内)に入った全30クラブの内、Hゲーム順位が6位以内ではないクラブは5クラブ、Aゲームの順位が6位以内ではないクラブは7クラブしかいない。

Hゲーム順位、Aゲーム順位がいずれも7位以下であるにもかかわらず、最終的にプレーオフ圏内に進出できたクラブは、2015年のV・ファーレン長崎のみである(Hゲーム順位、Aゲーム順位ともに7位で、最終順位が6位)。

自動昇格クラブとそうでないクラブとの差は何か。そこで、過去5年間における最終順位と、HゲームAゲームそれぞれの平均獲得勝ち点をまとめてみた。

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驚いたことに、最終順位1位~4位クラブの平均A勝ち点に差はほとんどなかった。一方、Hでの勝ち点は最終順位と関係がありそうである。1シーズンを通して安定した成績を残しつつ、Hゲームでどれだけ勝ち点を上積みできるか、これが自動昇格の条件の1つであるように思われる。

ちなみに、2020シーズンの開幕戦はHチームの6勝1分4敗だった。

誤解を招きかねないので念のため強調しておくが、Hゲームに強いクラブが必ずしも強いというわけではない。Hゲームがめっぽう強くても、Aゲームが弱ければもちろん最終順位は高くならない。

その典型例は2018年シーズンのアビスパ福岡である。このシーズンの福岡は、H順位が1位ながらA順位は11位であり、最終順位7位とプレーオフ出場権を逃している。

無観客試合によって、ブンデスリーガのようにホーム戦成績への悪影響がJリーグにも起こるかは分からない。しかしながら、仮に同様の現象が起きるのだとすれば、2020シーズンの昇格争いは過去5年間の昇格争いとは異なる様相を呈するかもしれない。


ここからはオマケ。

⑤その他


5-1昇格クラブは何連勝しているのか?


記憶に新しい、2019シーズンの柏レイソル11連勝。昇格に連勝が必要であることは予想できるが、11連勝もしなきゃいけないの?それは無理だよ。ということで、過去5年間における連勝記録をまとめてみた。

2015年(1位大宮:8連勝、2位磐田:4連勝、3位福岡:8連勝)
2016年(1位札幌:6連勝、2位清水:9連勝、3位松本:5連勝)
2017年(1位湘南:4連勝、2位長崎:5連勝、3位名古屋:5連勝)
2018年(1位松本:5連勝、2位大分:5連勝、3位横浜FC:4連勝)
2019年(1位柏:11連勝、2位横浜FC:7連勝、3位大宮:5連勝)
*ここでいう順位は最終順位です
**最長の連勝記録のみを記載しています。

やはり柏の11連勝は飛びぬけた数字であり、多くのクラブが5連勝前後であった。



5-2昇格にスタートダッシュは必須か?


スタートダッシュはどのクラブも目指していると思うけれど、昇格を至上命題に掲げているジュビロとしては開幕から出遅れたらやばいよね…という不安もあり、スタートダッシュについても簡単にまとめてみた。

スタートダッシュの定義が難しいが、ここでは5節時点で勝ち点10を獲得していることをスタートダッシュと定義した。

ちなみに、②勝ち点積み上げペースで示したように、5節終了時点での平均勝ち点は下表の通り。

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過去5年間で最終順位6位以上のクラブ(計30クラブ)の内、スタートダッシュに成功したクラブはちょうど半数の15クラブ。

また、最終的に自動昇格圏内に入ったクラブ(計10クラブ)の内、スタートダッシュに成功したクラブも半数の5クラブであった。

昇格プレーオフ圏内に必要な1試合平均1.6ペースで勝ち点を積み重ねた場合、5節終了時点での勝ち点は8となるため、勝ち点8に達したクラブについてもまとめてみた。

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過去5年間の最終順位6位以上のクラブの内、20クラブが勝ち点8に到達していた。逆に言えば残りの10クラブは、5節終了時点で勝ち点8にも到達していないことになる。

最終的に自動昇格圏内に入ったクラブの内、勝ち点8に到達していたクラブは8クラブだった。自動昇格するには5節時点で勝ち点8は必要になりそう。



個人的総括(直近5年間)


昇格するクラブの勝ち点について長々と記載してきたが、最後にまとめると以下のようになる。

①最終順位2位の平均勝ち点が80.2であり、自動昇格には勝ち点80が目安になりそう。

②14節終了時点では、最終順位1~6位のチームの勝ち点差は1試合でひっくり返せるわずかな差である。その後、勝ち点差が開く傾向にあることから、シーズン1/3辺りが1つの分岐点になりそう。ただしこの時点で勝ち点28は必須ではない。

③昇格するクラブの勝ち点積み重ねの傾向として、夏場で抜け出す(1位クラブに多い)か、ラストスパートで2位に滑り込むという大きく分けて2パターンがある。

④自動昇格圏内に入るためにスタートダッシュは必須ではないが、5節終了時に勝ち点8は欲しい。


終わりに


ふとした疑問から、調べた結果をせっかくだからまとめてようと思い立ったら、思ったよりも長文になってしまいました。
ここまでご覧いただいている方がいらっしゃったら感謝しかありません。

夏場にどれだけ勝ち点を積み重ねられるかが重要であることが分かりました。地力ということですね。

ジュビロが自動昇格しますように!!

(追記)いきなり夏場からの再開となるJリーグ。昇格争いも例年とは異なる様相を呈することが予想され、よりいっそうクラブの総合力が問われそうです。

なにはともあれ、どのクラブも大きな怪我人が出ることなくシーズンが終わりますように!!