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Jubilo Diary 〜5-3-2はジュビロ対策となりうるのか〜【J2 第2節 ジュビロ磐田 対 京都サンガF.C.】


待ちわびた再開、スタジアムに足を運べないもどかしさ、ワクワク、ドキドキ、緊張、不安。様々な感情を抱きながら迎えたJ2再開。。。


約4ヵ月ぶりのリーグ戦にジュビロは敗れた。

0-2のスコアもさることながら、ボール支配率62%にも関わらずシュート数は 8 対 13。ペナルティーエリア内からのシュートに限れば 2 対 8 であった。


再開初戦を落としたジュビロ磐田のサポーター中にはこう感じた人がいるのではないだろうか。
「全然攻めることができなかった」
「同じように守られたら同じ結果を繰り返してしまうのではないだろうか」

かく言う僕もその1人だ。たった1試合の敗戦。されど、何もできなかったと思わされる内容に一抹の不安を覚えた。


今回はその漠然とした不安を打ち消すべく、京都の守り方に着目し、なぜジュビロはシュートを打つまでに至らなかったのか、なぜ京都の守備が機能したのかについて考察を行ってみた。





スタメン

ジュビロ磐田

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ジュビロはお馴染みの4-4-2。メンバーは2週間ほど前に行われたアスルクラロ沼津とのTMとほぼ同じメンバーで、開幕戦からは2人の変更。

京都サンガ

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京都は中断期間中のTMがすべて非公開であるが、開幕戦からは3人の変更。加えてシステムも3-4-2-1から3-5-2に変更。

昨季も3-5-2を採用した試合はあるようだが、3バック採用時は3-4-2-1がメインであった。3-5-2は対ジュビロに向けて用意したと思われる。





保持のジュビロ/非保持のサンガ


京都の守り方について述べるにあたり、まずは配置に着目する。

この試合の多くの時間帯においてジュビロがボールを保持した。その時の配置は以下のように。

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ジュビロは中盤の1人が最終ラインに下りて組み立てに参加、そして両SHは内側に移動するお決まりのパターン。京都は5-3-2の並びで待ち構えた。


この構図からジュビロが真っ先に狙うポイントとして以下の2つが考えられる。


① 相手の2トップ脇
② 5-3-2の中盤3人の脇


① 相手の2トップ脇
ジュビロの最終ラインは相手の2トップに対して数的優位をもつため、前進が可能。

② 5-3-2の中盤3人の脇
ピッチの横幅を3人で守ることは不可能であり、サイドに揺さぶることで前進ルートを確保できる。


そうは言っても易々と通してくれるわけもなく、京都はしっかりと準備をして臨んでいた。 ① 2トップ脇、② 5-3-2の中盤3人の脇の守り方をまとめていく。


① 2トップ脇

サイドに開いたジュビロのCBにボールが渡ると、京都は中盤の選手がアプローチに出て前進を妨害。

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これにより、ジュビロはCB ⇒ SBのパスが増加した。


② 5-3-2の3人の脇

サイドに展開されると、スライドが間に合うときこそ中盤の選手が対応するが、間に合わないときには最終ラインのWBが前に出て対応。

下図 サイドチェンジを例に

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WBが対応することで中盤の3人がスライドする距離が短くて済み、サイドチェンジに対しても3人の脇が空くことなく対応が可能だった。

この対応方法は、サイドへの揺さぶりに対抗する意味で5バックを採用するメリットを生かしているように思える。しかし、それならば開幕戦と同じ5-4-1でも良いはずだ。わざわざ3の脇という隙を作らなくて済むのだから。



では、5-4-1ではなく5-3-2を採用した理由はどこにあるのか、どこにメリットがあったのか。

5-4-1 (3-4-2-1)を採用した山形との開幕戦では、もっと容易に前進することができたにもかかわらず、なぜ京都に対しては前進することさえも困難であったのか。

それには5-3-2の2、すなわち前線に2人を配置することが大きく関係していたのではないかと推察する。





この試合の重要ポイント 2トップ


考察を進める前にまずはこちらを見てほしい。

この試合のジュビロのパス方向と距離を示したパスソナーである(前半のみ)。色はパスの距離を示しており、青色が濃くなるほどパスの距離が遠いことを意味する(赤色はミスパス)。

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これだけを見るとなんのこっちゃと思うかもしれないが、開幕戦と比べると違いは一目瞭然である(下図)。
※short passの色が異なります。ごめんなさい。

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京都戦では相手陣内のパス、特に中央でのパスが少なく、全体としてU字型を描いていることが分かる。

試合をご覧になった皆さんはご存知の通り、サイドから後ろに下げて逆サイドに展開するも、また後ろに下げるという一連の流れを繰り返した結果を表している。


この大きな要因となったのが京都の2トップの存在である。




ここでいったんジュビロの狙いを振り返ってみる。

フベロ監督が目指すのは、「ボールを速く動かして相手を揺さぶり、縦に速く攻めるサッカー」である。これは監督の口からも何度か聞かれているし、試合の前日に公式youtubeにアップされた練習の様子からもうかがえた。



相手を横に揺さぶるために最も効果的な方法の1つは、中央を経由してサイドへ展開することである。

なぜならば中央に運ぶことで、相手は中央を閉じることを余儀なくされるからである。

中盤を3人で守る京都は、できるだけ中央を経由したサイドへの揺さぶりを抑えたい。そこで京都は、2トップが力也へのパスコースを遮断することでジュビロがバックパスをするように仕向けた。

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その結果、逆サイドへの展開には時間を要することとなり、京都のスライドは容易に間に合ってしまった。そして相手を揺さぶり縦へ速く攻めたいというジュビロの思惑が実現されることは少なかった。





話を2トップに戻すと、この中盤封じを行うためにはサイドへの展開に合わせてFWもスライドする必要がある。これを1人で行うのは、カバーしなければならない範囲が広すぎて到底不可能であるが、2人ならば可能である。だからこそトップの枚数が重要だったと考える。






サイドを崩せなかった要因はジュビロ側にもある。

中央を経由できないジュビロは、大外から大外へのサイドチェンジを幾度となく繰り返した。相手のスライドがいくら速いとはいえ、サイドチェンジ後に瞬間的な数的優位を作ることができればそこから突破することは可能である。

しかしジュビロのSHは内側に絞る。そのため、逆サイドのSBに展開した際に味方のサポートが相手のスライドに対して間に合わない場面が多かった。

これはジュビロの目指す形の中でのデメリットであり、許容しなければならないデメリットである。SHもサイドに張れ!というつもりは毛頭ないが、この試合において相手を崩せなかった要因の1つだと思われる。




さて、ここまで述べたように京都の2トップはこの試合の大きなポイントだったと個人的に考えている。そしてそれは、守備面だけではなく攻撃面でも当てはまる。



改めて、ジュビロのボール保持時の構図を以下に示す。

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ジュビロがこの形でビルドアップを行う以上、こちらも許容しなければならないウィークポイントになるが、ボールを失ったその瞬間、ジュビロの中央には力也1人になってしまう。

相手から見ると、ボールを奪った瞬間ジュビロのディフェンスラインの前に起点を作りやすいと言い換えることができる。


例えば、相手がボールを奪って前線にロングパスを蹴ったとする。

ジュビロの最終ラインは競り合いに強く跳ね返されるかもしれないが、そのセカンドボールが落ちるであろう位置に味方(2トップの片方)を置くことで、セカンドボールの回収確率は大きく上がる。

つまり、この試合における京都の2トップはジュビロの起点を潰すだけでなく、自分たちの起点にもなっていた。




5-3-2はジュビロ対策となりうるのか


ここまではジュビロが攻めあぐねた要因について、京都の守り方に着目して考察してきた。これだけで終わってしまうと、ジュビロには5-3-2!となってしまうので対応策について考えてみた。

5-3-2がジュビロ対策となりうるのかに対する個人的見解としては、大声で否と言いたい(個人的願望は大いにあるが)。



まず京都のやり方を模倣する場合、ジュビロのボール保持率は高まるため、対戦相手は長い間さぼらずに守備対応を行う必要がある。それも2トップのプレスバックが必須となる。

加えて、ボールを保持した際に自分たちの時間を作れないと、ますます防戦一方となってしまう。


その意味で京都はボール保持に自信を持っているチームであり、プレスを苦にせず繋げられるメンバーを揃えながらも、さぼらずスライドし続けたのには敵ながらすごいの一言である。


ただし、ジュビロ側にも改善しなければならない点がある。

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この試合、力也を監視するために京都の中盤は少し高めの位置を取っていた。これを利用して、京都の最終ラインを下げさせて中盤と最終ラインの間(ライン間)を広げることができたはずである。しかし、裏抜けを試みる選手はルキアンだけだったように見えた。

この点はフベロ監督も分かっていたと思われる。三木選手投入の意図をこう語っている。

三木は、非常にフレッシュで攻撃が期待できると、なんとかオフェンシブにという理由です。三木の特徴として、相手の裏に出て、そのスペースを使うことができる、ゴールの近くで仕事ができる、そういう期待を持って三木を入れました。
(ジュビロ公式HPより)

彼のように相手の最終ラインを押し下げる役割を担う選手がもっと必要だったと考える。

この点に関して、ジュビロには中野誠也選手もいる。彼は動き出しに特徴のある選手であり、航基やルキアンにはない強みがある。彼の復調はきっと大きな貢献をもたらしてくれるはずだ。


また、ライン間を使うという意味では針谷選手の投入も効果的だった。彼のパスセンス、特に体の向きとは異なる方向へのパスの精度とその選択をする決断力は彼の大きな特徴であり、チームの中でも際立っている。今後の重要なオプションとなって欲しい。



5-3-2はジュビロ対策となりうるのか。


他サポさんには申し訳ないが、この問いには改めて否定させてもらう。


この試合はチームとして明確化されたやり方(ボールを速く動かして相手を揺さぶり、縦に速く攻めるサッカー)に拘り過ぎている印象も受けた。しかし、裏に抜けだす動きなどはこれまでの試合でできており、特に心配する必要はないと思われる。

何もやらせてもらえなかったと感じた前半においても、相手の背後を取れた時や中央を経由してサイドへ展開できたときには、相手ゴール前まで迫ることができていた。


今回の敗戦を糧にして、同じような戦い方で挑んできたチームがあった場合には思いっきり蹴散らしてほしい!




終わりに


京都さんの思い描いていたであろう通りに試合が進み、悔しさが募る一方ですが、それ以上に「面白かった。レビューを書きたい!」と強く思える試合でした。

本当はまだまだ書きたいことがあるんですけどね。失点シーンとかルリーニャ選手投入によるシステム変更は悪手だったのではないか、とかとか。


それにしてもやっぱりサッカーって楽しいですね。サッカーのことばかり考えてしまうせいで、自粛中に頑張って始めた勉強とか筋トレとか一瞬にしてやらなくなってしまいました。

今回は「京都の守り方と攻めあぐねた理由」についてつらつらと考察を重ねてみたわけですが、他のジュビロサポーターさん、サンガサポーターさんにはどう映ったのかな。少しでもいいなと思ってもらえたら拡散していただけると嬉しいです!



このレビューで1番伝えたいのはこの一言
渾身のパスソナーを見て!


公式ハイライトはこちら


タイムリーなことに、中野選手が「抜け出し」についてのブログを更新されていたので以下に貼っておきます。