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コラム#③「止めて、蹴る」が結局違いを創り出す

2020年シーズンも佳境。
J1を史上最速で優勝したフロンターレは、天皇杯準決勝にJ3を優勝したブラウブリッツ秋田を等々力に迎えた。

結果は貫禄の2-0。
元旦国立、決勝進出を決めた。
フロンターレの強さは何か。改めて問い直す。

Topic① プレーの精度を高めることこそ、攻撃のスピードを上げる

風間八宏監督が2012年-2016年の4年間にわたり、フロンターレに哲学として持ち込んだ「止めて、蹴る」の徹底は、中村憲剛を中心にフロンターレのサッカーの軸として受け継がれている。

戦いがリーグ戦であっても、一発勝負のトーナメントであっても、スタイルは変わらない。
かつてシルバーコレクターと呼ばれたフロンターレの面影は常勝軍団へと姿を変え、王者としての風格と落ち着きを纏いはじめた。

もともとカウンターの鋭さが売りだった川崎のサックスブルーは、風間八宏監督の就任と同じくしてボールを握り相手を崩すことを特徴とするようになった。

"正確にプレーすることは、結果としてプレーのスピードを上げる"
急いでプレーして一本精度が落ちれば、そのズレが次のズレを生み、ゴール前での大きなズレに繋がっている。
そう当時、風間監督は言っていた。

だからこそ、日々のトレーニングから「止めて、蹴る」を突き詰める。
コントロールの精度が上がれば、必然的に出すパスの質も高まる。
ボールの受け手の能力が上がれば、出すパスのスピードを高められるからだ。

参考までにフロンターレの選手が自主トレで行なっているボールコントロールのトレーニング動画を載せておく。

該当自主トレは2:17付近〜
「止めて、蹴る」自主トレ動画

Topic② スタイルとはチーム戦術の浸透を意味し、戦術の浸透はチームとして共通言語を持つことである。

もちろん、一朝一夕に完成するものではない。
戦い方やコンセプトを明確にし、色に合った監督を招聘しなければならない。
選手がピッチで表現する必要があり、チームカラーやスタイルに合った選手を獲得しなければならない。
日々のリーグはスタイルどうこうに関わらずやってきてしまい、結果とのバランスが必要だ。
負けが続けば、サポーターが黙ってないし、どこまで我慢ができるのか、地域のサポーターの色によっても変わってくる。

他にも要因は色々あるが、様々な条件をクリアし、ようやく勝ち続けるサイクルが出来上がる。
中村憲剛がプロ選手になって、18年。
2020年シーズン、フロンターレはどのクラブも手がつけられないビッククラブとなった。

戦術。
言い換えれば、チームとしての共通理解である。
ある地点にボールがいったら、一斉に動き出そう。とか、守備はこの位置から相手にプレッシャーをかけようとかチームによって戦い方は様々だ。

常に局面が変わり続けるのがサッカーで、
イレギュラーが起こり続けるスポーツである。
足でボールを扱うと言う、圧倒的不確定要素が大きい中で、いかにコントロール可能な要素を増やしていくか。
空間と時間をコントロールし、時にはピッチ全体を支配してしまう。
その根底にあるのは、実は「止めて、蹴る」なのだと思う。

共通言語、単に言葉だけではなく、
パスにメッセージを込められるか、一つのボールを置く位置で味方の動き出しの質を変えられるか、それを考え続け、至った先がフロンターレというクラブのスタイルなのだと僕は思う。

Topic③ クラブにはクラブの象徴的プレーヤーが存在する

「止めて、蹴る」を貫き続けた選手こそ、中村憲剛である。
引退する直前までプレーの質が落ちない、精度の高さは圧倒的な技術に裏打ちされた状況把握能力と時間を産み出すゲームコントロール力による。

きっとこの選手がいなければ、フロンターレはここまで強いクラブにはなれなかったのだろう。
クラブを代表し、技術を磨き続けたまさに職人の働きこそ、この川崎というクラブに常勝たるDNAを根付かせた真骨頂だ。

今日、フロンターレは2-0で勝った。
新時代を象徴するルーキーの三苫薫、U-23日本代表の田中碧の2人によるゴールだった。
若手が育つ、強いクラブのサイクルが目の前にできていた。

中村憲剛選手、18年間お疲れ様でした。
ここまで読んでくれた人はぜひ下記動画を見てほしい。
ハンカチを手元に忘れずに。

中村憲剛引退特別動画「天才の種」

元旦決勝。相手はガンバ大阪に決まった。
優勝しよう。みんなで。
それでは。

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