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【PickUpMatch】#012.天王山2連線を終えて。名古屋が見せた川崎攻略の可能性。

 世界的にも珍しいJリーグの覇権を争う2チームの2連戦。今季の優勝争いを占う頂上決戦。Jリーグファンにとっては楽しみで仕方なかったのではないだろうか。
(ちなみに僕もその1人だ)

 1試合平均得点が3得点に迫る破格の攻撃力を持つ川崎フロンターレと、直近連続無失点試合数のJリーグ記録を更新した名古屋グランパスの「ほこたて」対決としても注目された。

 結果はご存知の通り、第一戦4-0とフロンターレが力の差を見せつけ、名古屋を完膚なきまでにしてしまった。
 本ブログでは、第二戦について取り上げ、4失点した名古屋グランパスが第二戦に向けどう戦い方を変えたのか、そしてそれはどのくらい変化をもたらしたのか、最終的に勝敗を分けたのはどこかの3トピックから紐解いてみたいと思う。

Topic①:中盤でのボールロストを避けよ

 川崎フロンターレの攻撃において、最も気を付けなくてはならないのは、「奪ったボールを奪い返されること」であると思う。
 もちろん、正確な技術に裏打ちされた素早いパス回しと連携は脅威なのだが、ここに関しては対策を打っても凌駕されてしまう。
 したがって、比較的手を打ちやすい点を最上位に評価した。

 「ボールを奪った瞬間」は、切り替わりで言えば「守備」から「攻撃」へフェーズが移行することを言う。
 この瞬間ボールを奪った側の選手のベクトルは、前方向になるため、一瞬チーム全体の重心が前に転ずる。
(つまりこの瞬間ボールを失えば、チームのバランスが崩れているため、いわゆる一瞬の隙が生まれるのだ)

 フロンターレが怖いのは、この瞬間数人で囲い込みを行いボールを奪い返すとショートカウンターを発動する。
(元々クラブの特徴はカウンターサッカーから始まった歴史もあり、とにかくカウンターが鋭い)

 前置きが長くなったが、ここまでの攻撃をさせないことがなによりも対策の最上位となる。

 名古屋グランパスはセンターフォワードに山崎を置き、マテウスを左サイドに配置することで徹底したクロスボールを活用した。
 (クロスボールの跳ね返りには、ボランチ米本と稲垣2人が回収する)
 こうすることで、少なくとも中盤付近でボールを失う瞬間を減らすことができ、フロンターレの攻撃の発動機会を減らすことに繋がった。
(実際に先制点を失う前半30分まで完璧に名古屋グランパスペースのゲームだった)

 サイドを起点に押し込むことで副次的な効果もあった。フロンターレのサイドバックに高い位置を取らせないことが可能になったのだ。
 フロンターレはサイドバックが攻撃の起点になることが多々ある。このポジションの選手の押し上げによって、攻撃に厚みをもたらしているのだ。

Topic②:最終ラインに吸収されないこと。押し込まれる要因になる。

 どんな試合でもそうだが、強敵と試合をする場合、ゴール前を固めて守備をする、リトリートサッカーは有効である。
 (ワールドカップアジア予選で日本と戦う際のアジアの国々を思い浮かべていただければ分かりやすいかもしれない)
 ただし、ことフロンターレに置いてはこの戦術はほぼ無意味だ。90分間ワンサイドゲームで殴り続けられることとなるし、狭いスペースをボールを受け、エリア内で仕事ができる選手が揃っているため、時間の問題で点を取られる。

 重要なのは、ボランチが最終ラインに吸収されないことだ。ボールに一枚アプローチする選手を出し続け、極力スペースを与えないようコンパクトにし続ける必要があり、チームの重心を後ろに残さない方法となる。
 では名古屋グランパスはどう戦ったのか?

 答えはこうだ。川崎フロンターレのセンターバック2枚に「プレスをかけなかった」のだ。
 守備のスタートはフロンターレのアンカーに位置するシミッチからスタートさせた。狙いはおそらく中盤の選手にボールを自由に持たせないこととグランパスの選手の意識統一だろう。
 1人のズレが命取りとなるため、全員で共通してセンターバックを捨てると認識すれば分かりやすい。
(なんともイタリア人指揮官ならではの発想だと思うが)

 このようにしたことで、センターバックの一角ジェジエウが出しどころを探すシーンが散見された。
 ボールこそ持ち出すがパスがずれ、川崎フロンターレらしくないミスが生まれた。ボールを奪うためにあえてフリーな選手を作らせる、これは一つ新たな攻略法なのかもしれない。

Topic③:個人戦術が勝負の分かれ目。勝負所を見極めた地力の差。

 名古屋グランパスは相当このゲーム頑張ったと僕は思う。ひとつしてやられたとすれば、川崎フロンターレがコーナーキックの回数を増やそうとしてきたことだ。

 このクラブは末恐ろしい。これだけの攻撃力を持ちながら、コーナーキックのレパートリーが豊富で相当の準備、自信を持っている。(常勝時代の鹿島アントラーズ出身の鬼木監督の勝ちに対する意思の強さを感じる)

 だからこそ、攻めあぐねた場合、コーナーなどのセットプレー一発で流れを引き戻す術を知っている。このゲームも前半30分のコーナーキック一発でゲームを動かしてしまった。(ここまでにコーナーを得る回数も多かった)

 また試合終盤のプレーからも川崎フロンターレの強者ぶりが見て取れた。試合終了間際一時3-0と3点差のリードは名古屋グランパスの踏ん張りで3-2まで追いかけられており、名古屋グランパスペースだった。
 普段なら終了間際まで得点を目指すフロンターレだが、田中碧はコーナー付近へのドリブルを選択、ボールキープを敢行した。

 個人戦術レベルの高さ、日頃の練習に裏打ちされたチームとしての自信が困ったときにクラブを救う。そんなことを教えてくれたゲームだった。

 フロンターレサポーターの僕としては勝ち続けてほしいと願う一方、日本サッカーがより強くなるためにこのクラブを倒すチームが現れてほしいと願うばかりである。

 それでは。

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