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【PickUpMatch】#013.観るで違いを生み出す選手。現地で見えた準備の意識。

 今節は今シーズン2度目のスタジアム現地観戦から。
 リカルドロドリゲス監督になり、結果が伴いはじめた浦和レッズがホーム埼玉スタジアムにベガルタ仙台を迎えたゲームをレビュー。

 もちろんお目当てはここまで浦和レッズで全試合スタメン出場を果たしている「小泉佳穂」。
 両足共に遜色なく使えるところが度々フォーカスされるが、それ以上にピッチ上で次が「観える」。さらにもっと言えば、巧みな身体の使い方ができるプレイヤーだ。

 現地観戦したからこそ見えてきた凄みもあった。浦和レッズの取り組み新たな志と合わせてまとめてみたい。

Topic①:「観る」でピッチの流れを変えられる

 僕から見て、小泉佳穂が浦和レッズというクラブでロドリゲス監督から信頼を勝ち取った大きな要因がこの「観る」にあると思う。

 ロドリゲス監督のサッカーを施行するには、常に次が観えていることが必要で、プレーの選択肢を持っておく必要がある。
 ボールを握り、相手の変化を捉えながら、常に逆手を取り続けるプレーが求められるため、思考力・判断力が求められ、それを達成するために「観る」ことが重要なのだ。

 実際、このベガルタ仙台とのゲームは前半後半、飲水タイムの前後と試合を4分割した時、4様の変化をチームが見せた。
 このことからも、選手達が考えながらプレーしなければ、チームとして共通理解を合わせ続けることはできないのだ。

 一例を挙げるならば、前半の飲水タイムの後のチームの変化だ。浦和レッズの中盤がベガルタ仙台の積極的なプレスに捕まり、なかなかペースを掴めなかった前半20分間。ある配置で流れを変えてしまった。
 端的に言えば、岩波、槙野の両センターバックの間にボランチの伊藤を降ろしビルドアップに参加させると、両サイドバックを高い位置に置いた。
 こうしたことで、必然的に小泉佳穂が中でボールを引き出す回数が増えた。(福岡戦はこの形でアビスパ福岡の右サイドを撹乱し続けた)
 得点こそ奪うことが出来なかったが、少なくとも押し込まれることを回避できたレッズは、消化不良とは思うが後半に向けて価値ある時間を過ごすことが出来た。

 相手を観ること。それに合わせてプレーや立ち位置を変えられることは前述の通りだが、どのような場面でそれが見えてくるのか。実例を挙げてみる。

 例えば、前半25分のベガルタ仙台キーパーのロングボールの跳ね返りを左足でコントロールしたプレー。
 通常、相手選手が左から来ている場合、右足でコントロールしてボールを隠したくなる。でもこれを左足でコントロールし、身体をオープンにしてボールを逃してしまった。両足を使えるだけではこれはできない。身体に備わる軸を常に入れ替え、思考をしてプレーしているからこそ自信を持ってこのプレーが選べるのだ。
(完全に余談だが、僕もこういうプレーだけ唯一得意だったのでよく分かる)

 駄文になってしまったが、言いたいのは観ることは、首を振って情報を収集することではないのだ。
 身体の向き、ボールコントロールの脚、展開そういった副次的な要素も絡んだ上で、「観える」状態を作ることこそ目指すべき姿なんじゃないかと思う。
 そういう意味でJリーグでも有数のプレイヤーになっていると感じる。

Topic②:ゲームを想定した準備の質が実戦でのパフォーマンスを高める

 現地観戦するときに楽しみになる一つがピッチで行う選手たちのウォーミングアップだ。
 チームによって色が変わるし、狙いが垣間見える。相手チームを相当意識しているなと感じるメニューもあれば、確固たるスタイルを確認するメニューもあるし、様々だ。
 さらに、チームだけでなく選手個人でも意識するポイントが変わる。分かりやすいのは、センターバックであればヘディングの確認をしたり、フォワードであればシュートを多めに打ったり。それもどのくらいの強度で、精度でやっているかでゲーム中の期待値も変わる。
(僕は大学生のコーチ時代、特にサブの選手の個人トレーニングを注意して見ていた。試合中交代選手を決める最後の一押しになりうるのだ。)

 そんな中、こんなシーンがあった。(思わず写真も撮った)
 佳穂がトレーナーとマンツーマンで、ボールの置き所、隠し所の勘所を確かめているシーン。
 ゲーム中、小泉にとってボールをどこに置いてプレーするかは、生命線になる。これを彼は理解していて、ウォーミングアップの段階から意識を持って取り組んでいた。傍目には戯れているように観えなくもないが、個人としての意識の持ち方にとても感銘を受けた。

 チームで言えば、ポゼッションのトレーニングはタッチラインをフリーマンにした4vs.4+2フリーマンと5vs.5のトレーニング。
 攻撃方向を意識しながら、ボールを保持したい狙いと切り替え要素を強くし心拍数を高めながら試合に向けて準備していくメニューと。(あぁ、本当にレッズにはいい監督が来たなと改めて思った)

Topic③:新たなモデルを構築中⁉︎新生レッズが目指す崩しのオプション

 直近のゲーム、レッズが試している形がある。明本を左サイドバックに置き、小泉を左サイドハーフとしてスタートする布陣だ。
 4-4-2など4バックを主に戦うクラブに対して有効との判断なのか、明本の走力と小泉のフリーランを最大限に活かそうとしていることは明確だと思う。
 つまり、小泉佳穂は最初からトップ下に置けば厳しいマークに合い潰されてしまう可能性があるので、複数ポジションできることでプレーの幅を広げる魂胆があり、明本は持ち前のアップダウンできる走力をフルに活用したいという思惑なんじゃないか。

 いずれにせよ、ラストパスが出せる小泉佳穂をサイドハーフ、中盤の両輪を担わせることで浦和レッズの攻撃の形を複数パターン構築しようとしている狙いが垣間見える。
 ぜひ息の長いプレイヤーになって、Jリーグを席巻するプレイヤーになってほしいと願う。

 小泉佳穂の成長とともに、浦和レッズの一時代が築かれると信じて結びとしよう。


 それでは。

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