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#12 プライマルスクリームと、カッコ良すぎるボビーギレスピーの話

 いやーカッコいいですね。皆さんご覧になられましたか?グラストンベリーフェスティバルの映像。あの服マジで売ってほしい、でもどうせボビー以外が着ても似合わんやろうけどな、などとよくわからない感情になること請け合いのスクリーマデリカ再現ライヴでの“Moving On Up“、そして御齢60歳でこのスタイリング…はぁ。ため息しか出ませんね。

 名盤”スクリーマデリカ”リリースから昨年で30周年だったんですが、コロナ禍でライブもままならず、今年改めてこの名盤の再現ライブでツアーしているプライマルスクリーム、日本でも来日公演やSummerSonic/SonicManiaでそのライブが見られるなんて、盛り上がらないはずがありません。しかもフロントマンのボビーギレスピーの半生を綴った自伝もこのタイミングで日本語翻訳版が発売されたりもしていて、何かと盛り上がってるプライマルスクリーム。そのキャリアを通じて、無茶苦茶な振り幅の変遷を遂げながら、今も活動しているプライマルと、その変化を全身で体現し続けるボビー。もうかれこれ20年以上、生まれ変わったらボビーになりたい、そのイカした髪型をまねたい、そのスリムな体型に似合いまくってるスリムな革パンを履きたい、何なら憧れすぎて桃鉄をプレーする時は必ず”ボビー社長”と名乗ったりしたものの、そもそも太ももが太すぎて真似しようとすればするほどボビーとの違いを思い知り挫折する、を繰り返したぽっちゃり体型の不肖ワタクシ、そのキャリアを通してボビーギレスピーがいかにロックンロールの神様に愛されていてカッコいいフロントマンであるか、ということだけにフォーカスして、その時々を彩ったMVと共に語っていきたいな、と。

(この自伝、スコットランドはグラスゴーのワーキングクラス出身のボビーがフットボールやパンクにどのように目覚め、そこからどんな風にロックスターになっていくのか、その姿が克明に描かれていて必読、帯のコートニーラブのコメントもイカしすぎて最高です。)

サポートドラマーなのにカッコいい - Jesus and Mary Chain / Just Like Honey

 プライマルスクリームでデビューする直前、ボビーがジーザス&メリーチェインのサポートドラマーだったのは有名な話ですが、この立ったままドラムを気怠そうに叩くボビーがもう既にカリスマ的なカッコ良さ。後追いで雑誌でこの曲のボビーのドラミングを“モーリンタッカースタイルで云々“と紹介されていて、モーリンタッカーって誰?ってとこからヴェルヴェットアンダーグラウンドのことを知ったりもしましたね、そういえば。

12弦のリッケンバッカーがカッコいい - Gentle Tuesday

 プライマルスクリームのキャリアは、いわゆるネオアコから初まってるってのは今じゃもう不思議なのかも知れませんね。初期メンバーのジムビーティが持ってた12弦のリッケンバッカーとコーラスかかったこのギターの音、そしてマッシュルームカットのボビー…もうため息しか出ないスタイリッシュさ。このアルペジオのアトモスフェリックな鳴りに影響を受けたのがストーンローゼスとジョンスクワイアだっていうのもいい話です。未だにこの1stをキャリアのベストアルバムに挙げる人もいるんじゃないでしょうかね。

いきなりロン毛でガレージロックがカッコいい - Ivy Ivy Ivy

 で、こっからなんですよね。あのマッシュルームカットでアルペジオを奏でてたプライマルが”一体何処いった?”ってなるこのロン毛でガレージロックをやり始めたセルフタイトルの2ndからのリードシングル。その後のキャリアとか自伝に書かれてる出自を考えるとこっちの方がむしろボビーっぽいんですが、当時そんな事も知らんネオアコ青年をビビりまくらせたこと請け合いのこのシフトチェンジ、でそれが似合っちゃうボビーのロングヘアと超スリムな皮パンでマラカスを振る姿、ああカッコいい。

アシッドハウスとサンプリングのセンスがカッコいい - Loaded

 名盤と名高い”Screamadelica"、2ndの後に世間で大流行していたアシッドハウスってなダンスミュージックとパーティに入れ込み、アンディウェザオールと出会ったプライマルが生み出したダンスミュージックの金字塔…とか偉そうに言ってますが、”全人類必聴”とかって雑誌とかに載ってるこのアルバムを後追いで聴いたブラー・オアシスラブな当時の自分にその意義など分かるはずもなく、最初聞いた時はポカーンとなったのもいい思い出ですね。後々どんどん顕著になってくそのサンプリングセンスもこの辺りから既に垣間見えてますよね。そしてその瞬間瞬間で入れ込んでる音楽を臆面もなく取り込んでいくそのカメレオンぶり…はぁカッコいい。

一人アメリカ南部へ向かってファンキーでカッコいい - Jailbird

 いやー、この辺りになってくるともう意味分かんないですよね。ダンスミュージックとロックンロールの垣根を飛び越えたあの名盤を生み出したプライマル、ブリットポップの勃興もあって”イギリス万歳”な時代に移り変わろうとしている時に一人アメリカ南部のフラッグをジャケットにしたアーシーなアルバムを作るっていう天邪鬼ぶり。この4th"Give out but don't give up"は代表曲”Rocks”が多分一番有名でしょうけど、アルバムの1曲目に収録されたこの曲、そして脇を締めて低い位置でハンドクラップするこのボビーに憧れすぎて、今もライブとかで手を叩く時はこれを真似してる自分に気づくんですよ。

ダビーなベースラインとスタイリッシュなMVがカッコいい - Kowalski

 で、この辺りからようやくリアルタイムで聴いてる感じなんですが、まだブリットポップとギターロック耳の自分に、ローゼスから奇跡の加入を遂げたマニのバッキバキのベースラインが印象的なこの曲は”良く分からんけどもなんか無茶苦茶カッコいい未知の音楽”って感じでしたねそういえば。あとこのシュールだけどやたらスタイリッシュなMVにもヤラレて、ボビーがかけてるみたいなでかいグラサン探してあるはずもない田舎町を練り歩いたのも良い思い出です。今思えば、フィッシュマンズと共に自分がダンスミュージックにより入れ込むことになるきっかけも、プライマルスクリームだったのかも知れません。

デュエットしてもカッコいい - Some Velvet Morning

 コラボレーションのセンスもいいなぁ、と思うんですよね。こちらはモデルのケイトモス、KowalskiのMVにも出てたんですがここではもう一緒に歌っちゃうっていう。最近のアルバムではハイムやスカイフェレイラをフィーチャーしてたり、マニが抜けた後にど新人のベーシストを迎え入れたり、新しいことや挑戦に対する姿勢がキャリアを重ねてもブレない、凄いことです。


 …いやー、やっぱいろんな角度からプライマルのヒストリーって語れるので、結果としてまたクソ長い文章を書き連ねてしまいました。ダブやリミックスの話とか出来てないし(MBV arkestra/If they move, kill ‘emとかMVないけどクソカッコいいのよねぇ)、不十分なとこもいっぱいあるんですけど、本当にずっと音楽が好きで、音楽に魅了されたボビーがそれをそのまま体現し続け、シーンとはずれてても自分の感覚を元に変化し続ける彼と彼らが、やっぱり大好きなんですよね。

 ボビーの自伝に綴られたように、彼がいかにしてボビーギレスピーというミュージシャンになっていったか、そこにカルチャーや政治、時代背景がどんな影響を与えていたか、については、Spotifyのポッドキャスト、poplifethepodcastで識者のみなさんが語ってられるのが無茶苦茶面白いのでこちらもオススメです。

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