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フードスコーレな人たち vol.4(オオモリノブヒロ篇)

2020年に開校した食の学び舎「foodskole(フードスコーレ)」は、今年3月で2期を終えます。そして4月からは、これまでの授業体系を一新した「2021年度前期Basicカリキュラム」がスタートします。

foodskoleでは、食について「ともに学び合う」がモットーです。米屋、海苔屋、料理人、漁師、醤油職人、かつお節問屋、麹屋、農家、畜産家、編集人、廃棄コンサルタント、大学教授、大学生や高校生など。ここではたくさんの個性豊かな人たちが、それぞれの立場で過ごしていて、ともに学び合っています。その様子はもう本当の学校のようです。

ここで過ごす人たちのことを、もっとたくさんの人たちに知ってもらうことで、わたしたちがそうであるように、読まれた方それぞれの「食」のあり方に良い変化が起きるかもしれない。そんな期待を込めて、この不定期連載をお届けしていきたいと思います。

記憶にも新しい2月に開催した、9時間オンライン生中継「foodskoleの文化祭」の成功立役者といっても過言ではないでしょう。あの裏方をまとめ上げた、ゆるふわパーマで場を盛り上げるのが得意なオオモリ。オオモリがfoodskoleにコミットしたのはなぜなのか。

「誰かの役に立ちたい。誰かのやりたいも自分のやりたいも。そのフィールドがfoodskoleにある」

foodskoleにかける想いを熱烈インタビュー。生い立ちから紐解きます。

不定期連載、今回の担当は「foodskole」の佐藤一成です。
※コアメンバーに大森は2名いますよ!

オオモリノブヒロのプロフィール
10年以上にわたって、IT/Tech企業、スポーツメーカー、コンシューマグッズ、ヘルスケア、地方自治体、水産エコラベル認証制度の管理・促進団体などのPR、マーケティングに携わる。現在は、フリーランスとしてマーケター、PRパーソンとして働きながら、複業でコーヒー屋さん、焙煎士として活動中。これまでに東ティモールやベトナムなど4か国7農園を訪問。生産者、環境、消費者にとってやさしい珈琲を広めるべく講座やイベント出店、出張コーヒー活動も展開中。

料理好き上手の母から学ぶ、お手伝い少年

小さなころから食に丁寧な暮らしがあったオオモリ。それは小学校のころまでさかのぼります。

オオモリ
「母がちゃんとしたご飯を作る家だったので、子どものころから食べるのが好きでした。それでも両親が共働きだったので、自分が先に帰ることも多く納豆掛けご飯とかよく食べてました。忙しい中でも、母は料理をする人だったので、手伝った方がいいんだろうなと思って料理を教わりました。」

そんな誰かを想うことは昔からの性格だったのかもしれません。食事を作ることに楽しみを見出したことで、家族のご飯を作るようになります。

オオモリ
「小学校3年のときには、カレー、お味噌汁を作るようになってました笑。ひとり分作るのも家族分作るのも変わらないなって。夜のご飯担当だったときもあります。料理人を目指そうかとも考えたくらいです。」

そんな大人な発言をするオオモリ少年は夕食担当では足らず、朝食まで。

オオモリ
「土日は早起きして戦隊ものTVで見たいじゃないですか。なので朝お腹が空くとたまに作ってました。でも目玉焼きとかですよ?笑。もしかすると母を助けたい、だから料理をつくっていたのかもしれないですね。」

ちなみに今の得意料理は野菜ジュースを使って作る「無水カレー」とのこと。食に興味を持ったのは家の手伝いから。共働きの母を助けたい、そんな気持ちでご飯を作ることが日常になっていた生活は、中学校まで続きます。そんな中、中高とバスケットに明け暮れる日々で「新しい食の視点」を学びます。

食の大切さをスポーツから学ぶ

食べ盛りの学生時代は、部活が終われば、帰り道に買い食いが当たり前だったこともあり、味や栄養についてそこまで意識していなかったオオモリは、高校3年に出会うコーチから学びます。

オオモリ
「買い食いはよくしてました。お菓子は多くなかったですが、肉屋のハムカツとか、惣菜とか、伝統校によくある代々、部で通い詰めるみたいなお店ですね。そんな中、高校3年の時にコーチから食が大事だって教えてもらってより体作りを意識した食事を意識するようになって、自身に変化が起きました。なるべく添加物や人工的調味料などは接種しないようにとか、栄養についても学びましたね。」

小学生から母の美味しい料理を食べて育ったので、味については敏感だったオオモリ。コーチの教えを意識することで「食べ物の味」から化学調味料に敏感になっていきます。

オオモリ
「子供のころはおいしければいいと思っていたんです。ハムカツとかもそうです。でも久しぶりにジュースやお菓子を食べたときに味に違和感を覚えたんです。あれ?食べてて気持ちよくない、おいしくないなって。今でも自分から積極的に食べようとは余り思わないです笑。」

そんなお菓子の誘惑にも負けない意思の硬いオオモリも、大学に進むステップで失敗し、一浪することになり挫折を味わいます。浪人したショックから「自分が人に役に立てることってあるのか」「やりたいことが見つからない」と苦渋する日々。料理が好きだし、料理人になるか?と思うもピンとこない。いつまで悩んでても意味がないから行動に起こそうと決意し、社会実践が積める経営・情報専攻の大学に進学します。

人生初めてのアルバイトで見つかった自信と変化する暮らし

オオモリ
「大学で人生初めてバイトをしたんですがそこでやりたいことを見つけました。喫茶店のバイトでした。いままで、ちゃんとしたコーヒーを飲んだことなかったのですが、サイフォンコーヒーを淹れるお店で、しかも当時の日本2位の人がいて、一杯一杯丁寧に淹れたコーヒーがめちゃくちゃおいしかったんです。店長がおいしいといえばコーヒーを淹れることができたので、かなり練習しました。」

アルバイトでやりたいことが見つかる。どこで出会うかわからないものですね。何度もコーヒーを淹れる練習を重ね、ついにお店で提供することができるようになります。

オオモリ
「自分で淹れたコーヒーをお客さんにおいしいと言ってもらえる。これがきっかけで自分も誰かに役立てることはあるんだと自信を取り戻しました。それからはおいしいコーヒーをいかに素早く提供するかを考えてましたね。オーダーが溜まっている時なんて特にワクワクしていました。」

お店が忙しいときほどモチベーションが上がってしまうオオモリ。おいしいコーヒーを多くの方に提供したい、誰かの役に立ちたいという気持ちが感じ取れます。オオモリは、丁寧に淹れるコーヒーを知ることで、自身の暮らしを見つめるきっかけに。食材の買い方にも影響が出てきます。

オオモリ
「コーヒーって日本ではほとんど作ってなくて、海外の生産者がいるから楽しめるじゃないですか?それなのに、生産者が大変(儲からない)だっていうことを知って。だから、生産者が困らないコーヒーとか、食べてて気持ちいいかどうかで選ぶようになった。生産者の顔が見えるとか、なるべく、生産者に寄り添ったお店で買うようになった。食べてて嬉しい、気持ちいい、自分だけの満足が気持ちいいわけではないと思うようになりましたね。以前スポーツメーカー、自治体、システム会社の商品PRの仕事していた時も、商品が出来上がるストーリーを知って、思い入れや愛着が湧くことが多かったです。」

モノ、事を選ぶ際の重要な選択事項にストーリー(背景)は欠かせないとオオモリは話します。

社会を知る。2度目の挫折で得たもの

大学卒業後、社会人として8年間がむしゃらに働いたオオモリ。あるとき、自分が働きたいことと実際の仕事内容、目指していたライフスタイルと自分の現状のギャップに違和感を覚え始めます。最終的には精神的にも疲れ果ててしまい、会社を離れることに。ここでオオモリはふと海外1周の旅に出ようと考えます。

オオモリ
「よく飲食店に貼ってある地球1周の旅ポスターがあるじゃないですか。大学の時にアジア2週間の旅というのがあって、いったことがありました。それを思い出して、地球1周の船旅で日本から離れて海外を見てこようと決心しました。」

早速、3カ月の旅に出たオオモリは、南半球の国々を訪れた時、新興国のおかげで自分たち先進国が成り立っていることに気が付きます。

オオモリ
「ボルネオ島ではパーム油を作るため熱帯雨林がアブラヤシのプランテーション(農園)になっているところが多く見受けられました。それによって、生態系にも影響しています。それだけでなく、労働環境悪化も招いている。パーム油の取引先には当然日本も含まれているので、自分に関係がないとは言い切れない。もやもやすることが増えた旅でした。」

もちろん、みのりのある旅でもありました。自身の人生を変えるきっかけを作ってくれたコーヒー、そのコーヒー文化を楽しむ人たちにも出会います。そこでは、生産者支援の取り組みも積極的で自分も何かしたい、そう思って帰路に就くのでした。

日本に戻ってきてからは「自分で納得できる場所と仕事」を選びたいと思い、フリーランスとして働き始めます。フリーランスとして仕事をはじめた矢先、コアメンバーのこくぼから会社を立ち上げるので一緒にやらないかと誘われる。

オオモリ
「ソーシャルグッド専門のPRエージェンシーを立ち上げるとお話がありました。課題先進国といわれる日本で、企業、NPO、生活者など、多様な立場の方と社会課題の解決に挑むという内容の会社でした。共感する部分は多かったので手伝うことを決めました。当時の心境もあり、社員ではなかったですけど笑。」

ソーシャルグッドの仕事にかかわるにつれて持続可能とはどういうことなのか、身近な視点~世界規模まで学んでみたいとの意欲から、foodskoleのSDGsクラスを受講します。ここからオオモリはfoodskoleに深くかかわっていきます。

foodskoleでの新しい挑戦

オオモリ
foodskoleの牧場農園イベントで平井に初めて会いました。平井がfoodskoleに対する想いを語ってくれた事に共感し、農園部立ち上げにも関わりたいと思いました。」

foodskoleのあり方は、講師のいうことがすべてではなく正解はあってもひとつではない。みんなでもやもやし、それぞれが考え抜いたとすれば、それがすべて答えになる、と平井はよく話しています。

その後、オオモリは農園部の副部長として運営に携わることに。どんな人であろうと受け入れてくれる土壌がある居心地の良さに、SDGsクラス第2期のチューター、そしてfoodskoleの文化祭の運営取りまとめ、気が付いた時にはコアメンバーとしてfoodskoleに関わっていました。今となってはコミュニティ中心にいる、なくてはならない存在です。

そんなオオモリは、自身のやりたいことがここで叶うかもと考え始めます。過去に出会ったコーヒーの生産者のことを想いながら。

オオモリ
「自信がなく悩んでいた時に、コーヒーで多くを救われたからこそ、何か生産者の方に還元したい。自分たちの生活基準からすると生産者はハッピーだと感じていないのではないか。子供たちは出稼ぎで街へ、農業はすたれてきているのを見るとそう思います。」

コーヒー生産の現地を訪れたオオモリは、生産者の暮らしをそのように語ります。

オオモリ
「生産者が笑顔で暮らせる上でコーヒーをおいしく楽しみたい。コーヒーを起点とした授業や流通から関わり焙煎、販売まで行いたい。そんなサスティナブルなコーヒーを作り上げます。フェアトレードといっているだけでは、誰もが気持ちよく飲めるコーヒーには十分ではないかもしれません。焙煎するエネルギー、パッケージまでこだわって作ってみたい。とてもワクワクします。」

と意気込みを見せるオオモリ。彼の挑戦は始まったばかり。foodskoleからどのように飛び立っていくのか楽しみでしょうがない。

インタビューを終えて

本当に「誠実・まじめ」これがオオモリを表現している言葉だと感じました。話を聴いて、オオモリが良く話す「誰かのためになりたい」、この言葉は現場で実践している当事者に送られているものだと理解しました。過去をさかのぼれば、自分で考えてやってみた事がほとんどですよね。いかに現場を大事にしているかが伺えます。

だからこそ、曲がったことが許せない、常に誰のために仕事をしているのかの本質を意識しているのだと思いました。ここまでの正義感があるにもかかわらず、まったく強要しないんですよ。できた人間ですよね。

そんなオオモリと一緒に食を学んでみませんか?サスティナブルコーヒープロジェクトへの参画も絶賛募集中。

ただいま、foodskole「2021年度前期Basicカリキュラム」の受講生を募集中です。ご興味お持ちの方は、ぜひこちらをご覧ください。


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