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新しいお月見

月の裏側は地球から見ることはできない。

正確に言えば、見ることができるのは全月面の約59%、つまり表の100%と裏の18%だけである。

「いやいや、月も自転してるんだし、もっと見えるんじゃ無いの?」と思う人もいるだろう。実は私たちはこの現象を小学校の授業で習っている(私はすっかり忘れていた)。皆様、覚えているだろうか?


正解は、「月は地球と同様に自転も公転もしているが、実はその周期(1周にかかる時間)は両方とも27日で "同じ" 」だから。

これを専門用語で「潮汐ロック(自転と公転の同期)」と呼ぶらしい。

つまりこういう事。

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図. 日本科学未来館HPより引用

うまい具合に回転するので、地球人からは月の裏側が見えないようになっている。私たちがお月見の時に見ている月は、いつでも「表面」だけ。

日本で見ようが、アメリカで見ようが、ヨーロッパで見ようが、中国で見ようが、アフリカで見ようが、オーストラリアで見ようが、北極で見ようが・・・・月は私たちに「表面」しか見せてくれない。

昔の人たちも、見上げる月がいつも同じ模様なのは気付いていて、裏側に一体何があるんだろうと思っていた。

「月の裏には宇宙人がいるんじゃないか?」

とか。

そんな八方美人なお月様に対して、英知を手にした人類は「あいつの裏の顔を暴いてやるぜ」とばかりに、月の裏側を暴こうとした。

1959年、ソ連のルナ3号によって人類は月の裏側の写真を確認。さらに1968年、アメリカのアポロ8号によって、人類は肉眼でも月の裏側を確認。そして2019年1月3日、ついに中国の嫦娥4号によって人類初の月の裏側への着陸が果たされる。

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多くの人が予想していた通り、月の裏側に宇宙人などいなかった。


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9月のある夜、ベランダに椅子を出して、月を見上げながらお酒を飲む。
月の裏側のエピソード。見えない部分に自分の願望を想像してしまうのは、人間特有なのかもしれない(マスクの下の顔は自分好みの顔に補正してしまう、と、ある方が言っていたように・・・・)

きっと月に宇宙人がいれば、世界はもっと刺激的になるはずという、願望。

ふと思った。

何十年後かには、スペースX社のロケットが民間人も利用できるようになり、「地球見」なるものが流行るんじゃないか?

月に宇宙人はいないけど、月に知り合いが行く時代。

「地球にいる〇〇さん、元気かな〜」なんつって、地球を見下ろす。

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一方、地球では。

お酒やご飯を飲み食いしながら、「月に赴任した〇〇さん、元気かなー」なんつって、ベランダで月を見上げる。

うん、これぞ新しいお月見。







おしまい

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● 写真出典
月面写真:中国国家航天局(2019年1月4日撮影、資料写真)
地球写真:JAXA, NHK

※本記事は新しいお月見プロジェクトのエッセイになります。






お気持ちだけでも十分嬉しいです!ありがとうございます。