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読書記録 発酵食品と戦争

戦争は発明の母、フードテックがいかに戦争とともにあり続けてきたかをかなしくも思い知る一冊。

秀吉の朝鮮出兵から真珠湾まで兵は味噌玉をかじり、炬燵や潜水艦の中でまで納豆を醸し、煮炊きの煙を出さないで食事ができるからと戊辰戦争に風月堂のパンを携行する。

ナポレオンはミリメシ開発のビジコンを開催して世界初の瓶詰め食品に賞金をだし、鰹節とチーズの旨味で東西の兵は飢えを紛らわし、辛いときには酒を飲んで過ごす。

節米+完全栄養を目指した興亜パンはベースフードのご先祖さまという感じで、まさに温故知新のかたまりの内容でした。

大豆を満洲からの輸入に依存していたための苦しみ、農村の人手不足と燐カリの不足を補うため残渣活用、堆肥作りを徹底する姿、80年経ても根本解決できていないことが苦しくなります。

大豆の代用品を求めてあらゆる素材、手段が検討され、入手が容易な毛髪のケラチン蛋白で醤油がつくられるさまを読むと、コオロギパンで不買運動するのは平和ボケだと思うし、下水汚泥肥料ふくめて、正しい知識をもって感覚的な嫌悪感を乗り越えていかないと、本当に苦しくなってからでは間に合わないと感じました。

正直なところ、食を想うときに有事や統制経済のことなんて考えたくない、もっと豊かな温かな未来に向けた幸福な食卓を描きたい、食料安保を理由に非民主的な統制が行われることは耐えがたいと思っていました。

しかし、食糧が足りなければ、争いは免れなきわけで、穏やかな毎日をこれからも続けていくためにこそ、過去に何が起きたかを振り返って、自分の食べるものの持続可能性から目を背けてはならないのだと、改めて反省しました。

それにしても、日本人のスタミナは、お肉ではなくて、米と豆と塩と発酵とで培われてきたのを実感します。

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