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いつも同じ味、同じ量がいいとされてるのって。




レストランで働いている時から、先輩方や上司から(同じ重さでカットしろ)と言うことを何度も言われました。
包丁をまっすぐ下に下ろすのが意外と難しく、野菜のカットやフォアグラのカット、牛フィレ肉のカットなどは同じお金を払っている方に対して差がないように毎回同じ重さにカットできるテクニックが要求されます。

これ自体は料理人として絶対に必要な能力だと思っていますし、先輩方が口酸っぱく言っていただいたおかげで、今の自分のテクニックがあり、無意識でもそこを意識していることに誇りを持てています。

料理人として食材やお客様に対するあれこれとまた違った意味で均一化されているものが一般的なお菓子だと思っています。

僕の作るお菓子はいつも同じ量、同じ味ではありません。
これは決して同じものを作れないと言うわけではなく、上記に挙げたように能力はあります。

誰かの下で働いているときは、この能力はフルに活用するべきでしょう。
なぜなら、一人一人が自由気ままに行動してしまうと、そのお店のオーナーに迷惑がかかるからです。

ただ自分でお店をやっていると、前回のお菓子は気に入ってくれたかな?もうちょっとボリュームがあったほうがいいかな?など作って発送した後もいつも思います。
自信がある無いではありません。どんなものを作ってもその先に召し上がっていただく方がいて、その方々の思いは私にはわからないからです。

1人でキッチンに閉じこもっているけれども、誰かの下で働いていた時みたいに気持ちも引きこもっているわけではありません。

自分の作ったお菓子が誰かに食べてもらえて、それでお金をいただいて生活をしている。
そう考えると、自信の如何ではなく、常に前回を超えていこう。もっと驚きを与えよう。と考えるのは当たり前のことだと思います。

たまに百貨店の催事に行きます。
出店する側ではなく買いに行く側です。

フランスの有名なショコラティエの立派な出展ブースなどは、やはり勉強にはなりますが、なんだか名前貸しのような雰囲気で、作っているお菓子はどれも全く寸分違わず同じです。

現在ではOEMなどが発達し、自分の味を他者が完全に正確に再現することが可能です。
金つかされ、統一性を帯びた商品に、僕はあまり価値を感じません。

不安であっても、自信満々であっても、そこに人間らしさを感じたいなと思ってしまいます。

均一化されたお菓子が悪いと言ってるわけではありません。もしOEMで作らずに手作業で作っているのであれば、それはそれですごい技術だと思います。

料理人の頃から言われていました。
プロはいつも同じ量、同じ味がきっちりと作れる存在だ。と

確かにそうなのかもしれないけど、AIが発達した今ではそれは何の意味もありません。

僕はできるだけ召し上がってくださる方の顔を見て、その人に合わせた提供をできるようにしていきたいと思っています。

レストランの方ではそれが可能ですが、お菓子においてはそれは難しいです。

なので、複数回同じお菓子を作る場合は、前回と全く同じではなく、今回はここにポイントを当ててみたよと言う人間の臭さを匂わせたいと思っています。

何でも手作業です。AIが発達して、自分も興味本位で使っている例はありますが、皆様に送らせていただいている字の汚いメッセージカード等はまだまだAIでは対応できません。

僕自身がもっと字が上手くなるのも重要な課題だと思いますが、僕自身がこうやって皆様とやりとりしていると言うことも、僕は結構気に入っています。

おそらく今後AIがなくてはならないと言う時代になります。
その中で1番大事なのは(どれだけ作った相手の顔が見れるか)なんじゃないかなぁと思います。

皆さんが普段購入される食品やお菓子はどれだけ相手の顔が見れるでしょうか。
どれだけその人の作っている姿が想像できるでしょうか。

私たちは決して工場の中で住んでいるわけではありません。
工場の生産システムで生きていきたいと言う人はいないんじゃないかと思います。

だけど、工場が作る均一で統制されたシステムで生み出されるお菓子を買うことに何の抵抗もなくなってきています。僕だってそうです。じゃがりこが大好きです。

ただ、作っている立場として、こうやって(僕ちゃんと頑張ってるよ)と言えればも必要なんじゃないかなぁと思います。

今回も新しくお菓子の箱を考えますが、やっぱり字は汚いし、包装の箱もダサイです。

この気持ちたっぷりのブログを言い訳にして、今日も新しい箱を探すのをサボります。

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働きたい飲食店を目指して目標に進んでいます。