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マックのマニュアルその12

 今回はトレーニングシステムを見てみましょう。いくら良いマニュアルを作ってもそれを教える仕組みやシステムがきちんとしてないとだめです。
例えば学校の教育を考えてみましょう。皆さん英語は中学から習いましたか?それとも高校からですか?私は中学校で習い始め、大学まで入れると10年は習いました。でもマックに入社後海外に行ったときには全然通用しませんでした。それは習ったことをすぐ試したり使わないと身につかないからです。
米国マクドナルドもその問題に気が付き、実践的な学習法を導入し始めました。それは米軍が取り入れていた、MTPという教育システムです。学生が必要性を感じて、学習したことをすぐ使わせて少しづつ身につける仕組みです。
 米軍は軍事の経験のない若者を短時間で訓練しなくてはいけない。効果的な研修は5日ぐらい教えて、それを現場で使わせ、自分に足りない個所を気付かせ、また5日間の短期研修をする。研修は座学も含むが基本的に現場の作業だ。
例えば銃の射撃訓練は、単なる射撃訓練だけでなく、使て汚れた銃の分解清掃が必要だ。使って汚れがたまったままだと銃を使えなくなる。射撃場の訓練であれば問題ないが、戦争の現場だと命取りになる。
戦場で明かりのない野営地で銃の分解清掃ができるように、目隠しをして銃の分解清掃をさせる。マクドナルドが米国軍隊のMTPを導入したことは、マクドナルドで使う調理器、シェイクマシンを目隠しさせて分解清掃させるとレーニングにうかがえます。
 私が日本マクドナルドに入社した時期に初めてMTPが導入されました。当時は入社するとすぐにハンバーガー大学に入れ、座学と店舗実習を3週間教えていました。マクドナルドの仕事を理解しないで受けさせる事業ですから、なかなか身につかないのです。

私のMTP経験
https://www.food104.com/food104/post-2120/

 それで最初に米国軍隊のトレーニングからMTPという単発のシステムが導入されました。これを終了するとセカンドアシスタントマネージャーになります。その後MDPマネージメント・デベロップメント・プログラムと名称が変わりました。
以前もお話ししましたが、マクドナルドの特徴は直営店が多く、利益管理の点から社員の育成が大変重要です。そこで、1980年代に店長、スーパーバイザー、統括スーパーバイザーまでの細かい、トレーニングシステムの開発が行われました。
日本のマクドナルドは創業者の故・藤田田氏がフランチャイジーにもうけさせるのが嫌でほとんど直営店舗の開発が中心でした。そのため故・藤田田氏の時代は90%位が直営店で、社員の数は膨大でした。
創業後2年目で入った私は1年で店長、2年でSVに昇進しました。でも1990年ころには店長になるのに20年くらいかかるようになりました。昇進に時間がかかるとやる気を低下させるので、モラルを維持するための目的もあって、階層的な多数のトレーニングコースを作りました。

以下がマニュアルのトレーニングセッションです。

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