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大手金融出身者が見た、フィンテックの面白さとは?

みなさんこんにちは、FOLIO BACKSTAGEです。

この記事は、FOLIOの様々な部署のメンバーにフォーカスを当てて、フィンテック業界の面白さやFOLIOにおける業務の魅力について深掘りしています。

今回は2023年にFOLIOにジョインした、西村彬宏さんにお話をうかがいます。西村さんは元大手金融機関で投資信託における運用やトレーディング等の幅広い業務経験があり、金融業界における様々な知識や経験を持ってフィンテック業界に参画されました。

大手金融機関からスタートアップへの転職。そこにはどんな想いがあったのでしょうか?

西村彬宏……三菱UFJ国際投信株式会社(現三菱UFJアセットマネジメント株式会社)、株式会社三菱東京UFJ銀行(現株式会社三菱UFJ銀行)への出向などを経て2023年FOLIOに入社。投資信託における運用・トレーディング・営業・資料作成等の幅広い業務の経験に加え、出向を通じメガバンクでの投信の企画推進などにも従事。また投信直販サービス立ち上げの経験から、新規事業開発やデジタル領域での推進、その他関連法規制の論点整理など幅広い業務を経験。

高い技術力とプロダクトを形にする力が魅力

司会:
西村さん今日はよろしくお願いします。早速ですがFOLIOに入社したきっかけを教えて下さい。

西村さん(以下西村):
直接のきっかけは代表取締役CEOの甲斐さん(現在:株式会社FOLIO 取締役兼創業者)からのお誘いだったのですが、最初はご飯を食べながら事業の話やプライベートの話をしていましたね。

事業の内容にももちろん興味はありましたが、話を聞いているうちに自分が一番手として何か新しいことをやりたいなという思いがさらに強くなっていったのを覚えています。
前職では大きな組織の中で新規事業をやっていたりもしたので、ある程度の充実感はあった一方で、大手企業での新規事業という立ち位置ではなくて、スタートアップの起業家というのはどんなものなんだろう? と興味もありました。

司会:
大手金融機関で働いていた西村さんの視点から、FOLIOのプロダクトや事業のどういう部分に魅力を感じていましたか?

西村:
実は前職でも、ファンドラップのビジネスをやろうとしていました(ここでは詳細は割愛しますが、当時はなかなか上手くいかなくて畳んでしまいました)。当時の役員から「スタートアップのFOLIOが提供している『4RAP※』(フォーラップ)がなかなかいいという話を聞いたから、一度話を聞く場をセットしてくれ」と言われて、面識のあった甲斐さんに話を聞きました。
その話を聞いた時からいまだに変わらない印象があります。FOLIOのメンバーはプロダクトを作る時に何が課題かをきちんと理解していて、さらにこういうものが実現できたらいいね、というものを実際に作れる技術力がすごいなと。実際にどういう人達の集まりなんだろうと。そこへの興味は入社前から漠然とありましたね。
(※4RAP……投資一任サービスに必要な運用基盤システムと運用商品をワンストップで提供する金融機関向けのサービス)

司会:
高い技術力に興味があったということですね。ちなみに、外から見ていたFOLIOのサービスにはどのような印象を持っていましたか?

西村:
例えば「AI」や「自動運転」など、気になるテーマを選ぶだけで国内の複数の企業の株式に投資ができるサービスである「テーマ投資」をリリースした時などは、あのサービスは投資信託でやっているような、ある種のテーマ型投資を日本株そのものにバスケット投資(複数の銘柄を1つにまとめて取引する投資手法)することで実現している、今で言うと「ダイレクトインデックス※」みたいな手法という風にも捉えられますよね。投資信託の形式を使わずに個別銘柄を抽出してやる手法は当時あまりなかなったので、変わったことやるなぁとか不思議な感じを抱いていました。
(※ダイレクトインデックス…投資家が個々人で構成銘柄をカスタマイズできるインデックス投資のことで、アメリカで今注目が集まっている。)

その一方で、「ワンコイン投資」(500円から始められる少額積立投資サービス)などのサービスは、金融の世界にどっぷりの人達じゃないから形にできたんだろうなとも思いました。
私の経験や文脈で考えると、500円で始められるというああいう金融サービスって、どう考えてもビジネスとして成立しないんじゃないかなと思ってしまいますし、そもそもGOサインもでない組織も多いと思うのですが、顧客一人を獲得するコストと獲得した顧客から得られる利益はどのぐらいなのか? きちんと採算性が合うのかといった、ユニットエコノミクスのことだけを考えても面白いサービスが作れるわけでもありません。そこは私のような金融出身者がしっかり入って見つつ、元々FOLIOが持つ良さを失わないようにすれば、今後も面白いサービスを提供できるとは感じていました。

イノベーションの一助となる

司会:
FOLIOの可能性を感じて転職された、ということなのですが、弊社の事業のマーケットインパクトや社会的な意義についてはどのように見ていますか?

西村:
それはこれからリリースする事業という視点と、今までFOLIOがやってきた事業という視点と二つの観点から話したいと思います。
今までも、FOLIOは「テーマ投資」や「ワンコイン投資」をリリースしたりと、比較的短い期間で色々なサービスを世に送り出せる実現力を持っていると思っていまして、世の中の変化のタイミング等が合えば、今後も新しいプロダクト・サービスを作り出していけるという感覚や可能性があると思っています。

また、今やっている事業の延長線で言いますと、弊社のビジネスは現在「ロボアドバイザー」と「4RAP」、「投資助言関連ビジネス」というのが注力領域ですが、社会的な意義の大きさという意味で言うと、「4RAP」の分野がより社会的な意義や与えるインパクトは大きいのではないかと思います。

投資顧問協会の資料よりFOLIOが独自で作成

市場規模という意味でも、ロボアドバイザーは約1.7兆円(投資顧問業協会、主要5社のロボアドバイザー合計、2024年3月末時点)、ラップは約19.1兆円(投資顧問業協会より、2024年3月末時点)と後者のほうが大きいということに加え、日本の金融機関は非常に重たいシステムを抱えているのが現状で、各種ベンダー会社が提供~保守・メンテなどの役割を担っているのですが、少し改良を加えるだけで結構な金額がかかるという問題があります。金融システムのがんじがらめ問題については、金融庁も問題意識を持っています。その一方で、問題だと言うけれど、そこって変えられるのか? というとなかなか実現が難しいんです。

司会:
なるほど、そんな状況下で西村さんが感じているポテンシャルはありますか?

西村:
金融機関のDXと言った時に、チャットボットを入れるとか、お客さんとやり取りする紙を電子化したり、生成AIを使ってビジネスをもう少しやりやすくしましょうというレイヤーもイメージしやすい領域ではありますが、その中でも「証券サービスのDX化」みたいな部分であればFOLIOが十分にやれるポテンシャルはあると思っています。
今FOLIOで提供している「4RAP」は、投資信託を既に取り扱っている金融機関様の既存システムの上に付加することのできるサービスであるため、既存システムを完全にリプレイスするという大きな意思決定をしなくても証券サービスのDX化を一歩前へ進められるというメリットがあります。
ただ、金融業界にイノベーションを起こすと言っても、プレイヤーとしてできることは限定的かなとは感じています。

司会:
それはなぜでしょうか?

西村:
今でこそ大きくなっているネット証券も1990年代や2000年代に登場してきた会社が多いですよね(厳密には前身の会社はもっと歴史があるケースもあります)。例えば、弊社の親会社であるSBIグループも、ここまで大きくなるのに20年近くかかっていますし、金融の世界で一つの企業が大きくなるには相応の時間がかかると思います。ただ、私達の技術が日本中の様々な金融機関に導入していただいた結果、金融業界、特に証券業の分野でイノベーションが起きて、時計の針を速めることができるのであれば、それはとても意義のあることではないかと思っています。

1,100兆円以上のポテンシャルがある業界

司会:
なるほど。ところで少々話は脱線しますが、今、「貯蓄から投資へ」という大号令の元で、政府が資産運用を奨励していますよね。NISA(少額投資非課税制度)も新しい制度になりましたし。ここは大いなる可能性を秘めていると思うのですが、フィンテック業界にとっても大きなチャンスなのでしょうか?

西村:
私たちが自ら提供しているロボアドバイザー「ROBOPRO」や「おまかせ投資」では、2024年4月時点においてはNISA対応を見送る判断をしているのですが、その代わりといってはなんですが、SBI岡三アセットマネジメント様へ投資助言する形で、「ROBOPROファンド(AIによる予測を活かした実績のあるROBOPROの運用手法を投資信託で提供するサービス)」という投資信託をスタートしました。
こちらは、ロボアドバイザー「ROBOPRO」と同じエンジンを活用しているサービスで、かつ新NISAに対応しています。FOLIO社での取り扱いはないのですが、日本中の幅広い金融機関で取り扱いいただけるよう期待しています。

また少し話が変わりますが、一口にフィンテック業界と言っても色々な業種がありまして、一番流通金額が大きいのが決済関連分野ですよね。そういう分野と比較すると、弊社がやろうとしている証券分野というのは、流通金額という意味で言うとやや小さいというのは事実です。

司会:
なるほど。

西村:
ですが、小さいからと言ってダメだという話ではないのです。ちなみに個人の預貯金が1,100兆円と言われていますが(日銀資金循環統計2023年第四四半期)、企業の内部留保(利益剰余金)は2022年度で約554兆円あると言われています(財務省「法人企業統計調査」)。
(参考記事「4〜6月設備投資1.2%減 法人企業統計、経常利益は最高」、日本経済新聞、2023年9月1日)

大企業はもちろん株式で資金調達していることもありますが、稼いだ利益を企業内に貯め込んでいると言われますよね。いわゆる内部留保というやつですが、投資に使わないなら株主へ配当として還元することも含めて、持っている資産を有効活用した上で資産効率をあげるよう、東証などが企業に働きかけています。
私は、企業であれ個人であれ、お金や持っている資産の使い方をきちんと考えなさいという時代が来ているんだと思っています。ですから、単に投資してその収益だけを見ているだけでは今までのやり方と変わらない気もしています。

司会:
ではどうすればいいのでしょうか?

西村:
これはなかなか説明するのが難しいのですが、フィンテック企業1社だけで変えようとするのは影響力やスピードにも限界があるので、【他の会社と組みやすい形でのフィンテック】を目指すことが大切だと思っています。
たとえばシステム的な話をしますと、改正銀行法の後押しもあり、2018年頃から「API※」という言葉が一つのキーワードとして話題になりましたよね。銀行にAPIを公開するよう迫る動きとともに、そのAPIを活用した家計簿アプリサービスがたくさん出てきたのもこの頃かと思います。金融機関というのは昔から、自分たちが持っている情報をうまく活用できない、あるいはセキュリティの観点から外部へ公開しない傾向があったのですが、数年前からこのAPIを通じて保有する顧客情報を安全な形で外に開放するようになりました。
(※API(Application Programming Interface)…あるソフトウェアの機能を別のソフトウェアから呼び出して使えるようになる仕組みのこと。例えばAPIを通して銀行や証券会社と繋がり、その人の資産を一つのアプリで一括で見られる家計簿アプリなどに使われている。)

フィンテックというのは自社だけで閉じてしまっている状態ですと、究極的には価値を出せないのかなと思っていて、お互いが持っている情報やサービスをうまく活用しあえるような仕組みを、多くの金融機関と上手く連携しながら作っていく、ここが非常に大切なポイントです。
弊社のサービスである『4RAP』は、ファンドラップのような投資一任サービスに必要な運用基盤システムおよび運用商品をワンストップで提供できるサービスなのですが、この『4RAP』を使うと、相手の金融機関(銀行や証券会社)様の口座にそのまま残高が残る形で、ファンドラップサービスを提供することが出来ます。大切なお客様の資産を自行口座にとどめておきたいと考える金融機関も非常に多いことから、ファンドラップのサービス導入を考える際に導入に踏み切りやすいというメリットがあります。
(ファンドラップ…少額から始められる資産運用サービス。株式や債券、不動産など色々な資産に分散して自動で投資をおこなうことができる。ユーザーは何に投資をするか選択する必要はなく、資産を運用することができる)

この業界を盛り上げるために必要なこと

司会:
なるほど、一社だけでなくて、数社で手を組んでいくことが大切なんですね。

西村:
また、フィンテックという言葉も結構解像度が低い面もありまして、今では何でもかんでもフィンテックと言うようになりましたが(笑)、金融機関というのはそもそもシステム装置産業なので「テック」なんですよね。

ではなぜ、敢えてフィンテックと呼ぶのか。それは、金融機関が有する各機能を別々に分解(アンバンドル)して、使っていただくお客様のニーズに応じて組み合わせたり再設計していくことで、お客様にとってより使いやすいといった素晴らしい顧客体験を生み出したりする動きが、一つの金融機関だけでなくまた金融機関以外のスタートアップなども関わって盛んになっていく、そういうムーブメントを指すのかなと。

新しい時代に対応していくためのサービス設計を考えたときに、本当は何もないところから作るとより良いものが出来るのですが、レガシーなシステムを持っているとなかなかそれができないケースも多いですよね。

だからレガシーを持ってない人たち、ここでは弊社のようなスタートアップが作って、世の中の変化を進める「触媒」になっていく。
私はフィンテックというのはこういうものだと考えていて、その中での証券や資産運用領域において、業界の触媒になっていける可能性があるなと。ここに私は弊社の可能性を感じていますし、そこがモチベーションとなっています。

司会:
なるほど、世の中の「触媒」になる、というのは非常に気になる表現ですね。さて、後半では、金融業界およびフィンテックの今後の可能性について深掘りしていきたいと思います。(つづく)

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