【月次レポート】世界的な金融緩和へ!? その要因と株式市場への影響は?
▼3つのポイント
・7月31日、米国は政策金利を0.25%引き下げ、8月1日には「第4弾の対中関税」の発動を発表
・金融市場は一時的にリスクオフとなるものの、世界的な金融緩和が進む見込みです
・「金融相場」による株式市場への資金シフトにも期待感があります
米国連邦準備理事会(FRB)は、政策金利を0.25%引き下げ
7月31日に米国の中央銀行に当たる連邦準備理事会(FRB)は、連邦公開市場委員会(FOMC)において、政策金利を0.25%引き下げる決定をしました。
さらに、FRBがリーマンショック後の金融市場安定化のために購入した証券残高を縮小させるプランは当初想定より2カ月早い8月に終了させることを発表しました。
31日の米国株式市場は、この発表を受けて失望感から大きく下落しました。8月1日には、トランプ大統領が「第4弾の対中関税」を9月1日から発動することを発表し、株式市場は7月末から8月5日までの3日間で4%を超す下落となりました。
今回の利下げについて、パウエルFRB議長は「この利下げの本質は、サイクル半ばでの政策調整だとわれわれは捉えている」とし、「長期にわたる一連の利下げの始まりではない」と説明した上で、「一度きり(の利下げだ)とは言っていない」と発言。あくまでも景気減速を未然に防止するための「予防的利下げ」であることを強調しています。予防的利下げは景況感の悪化や不透明感を払しょくするために行われるもので、これまで1995年と1998年に実施されました。利下げ後は低下していた米国の長期金利が上昇に転じ、米国株式市場と日本の株式市場では株価も上昇しました。
今回の「予防的利下げ」は、継続するのか
今回のパウエルFRB議長の会見を受けて、FRBの「予防的利下げ」が続けられるのかが、投資家の最大の関心事と思われます。
今期の「利下げ」においては、1990年代に実施された「予防的利下げ」同様に、景気後退や景況感の極端な悪化が表れていたわけではありません。しかし、6月からFRBは米国の景気に対し、やや警戒的な姿勢を見せ始めていました。米中貿易協議が進展しないことや、高関税のダメージが米国にも及び始めていたからです。
8月1日に発表された「第4弾の対中関税」の発動により、3000億米ドル分の中国からの輸入品に10%の上乗せ関税がかかります。この結果、ほぼすべての中国輸入品に追加関税がかかることになり、米国景気拡大への一層の重しになることは明らかです。米国の金融政策には、利下げ圧力が高まることが予想されます。
利下げの決定を行うFOMCは、9月17~18日、10月29~30日、12月10~11日と年内に残り3回予定されております。今回の利下げと第4弾の対中関税の発動発表を受けて、8月1日の市場予想では、9月のFOMCで0.25%引き下げられるとの見方が86.5%、年末までにさらに1回以上の利下げがあるとの見方が70.7%となっています。投資家も、依然、利下げ継続の可能性が高いと考えているようです。
金融相場の色合いが強まる可能性
米国の利下げに備えて、日欧の中央銀行が揃って金融緩和の強化を発表し、利下げへの対応も検討されていますが、「第4弾の対中関税」の発動が発表されたことで、米国も含めて各国金融当局は景気の減速リスクへの対応を一層迫られる可能性があります。
世界的に金融緩和が進む中、利回りを求める「イールドハンティング」の動きが強まることが予想されます。すでにマイナス利回りの債券の残高が世界で13兆米ドルと前年比で倍増しています。
国債等の債券市場からあふれ出た資金が、行き場を求めて、株式やハイイールド債券、新興国の債券等のリスク資産投資へと向かう、いわゆる「金融相場」が始まる可能性もあります。
日本株への影響
7月の日本の株式市場は、日経平均は1.2%の上昇でした。7月29日までに発表された日本の上場企業の4~6月期の業績は、製造業のおよそ2/3が減益となり、米中貿易摩擦による中国経済減速の影響が出ています。これに対して非製造業は6割近くが増益となっています。
しかし株式市場では、この半年間、精密機器、機械や電気機器、その他製造業等が、通信やサービスとともに買われていました。5GやAIなど新技術や半導体設備投資の回復への期待が背景にありました。
トランプ大統領の「第4弾の対中関税」の発表により、市場は世界景気の悪化を懸念してリスクオフの局面にありますが、各国が金融緩和に足並みを揃えることで、市場は落ち着きを取り戻すと考えられます。
日本株はPERで12倍、PBRで1.1倍と米国株のPERで18倍、PBRで3.2倍と比べて割安感があります。冷静に金融当局の対応を見ながら、時間や銘柄の分散を考慮することが重要と考えます。
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