逆イールドは景気後退入りのシグナルなのか?
✓いま起きていること
8月14日のニューヨーク株式市場(ダウ平均株価)は2万5479ドル42セントと、前日比で800ドル以上の下落幅で終わりました。前日比下落率としては-3.05%です。この流れを受けて、8月15日(本日)の日経平均株価は前日から300円以上下落して始まりました。
✓相場下落の理由
こうした株式市場の大幅な下落の理由としては、米国長期金利(米10年国債利回り)が下落し、米国長期金利(米10年国債利回り)と米国短期金利(米2年国債利回り)の金利差が、リーマンショック前の2007年6月以来約12年ぶりに一時逆転したことが発端となった模様です。
✓逆イールドと景気後退の関係性
こうした長短金利の逆転現象を「逆イールド」と呼びますが、逆イールドは、一般的に景気後退入りを示唆する重要なシグナルの1つであることが知られています。逆イールドになったことがすぐに景気後退入りを示すわけではありませんが、世界経済の減速懸念が一段と強まった格好となりました。
なお、一部のアルゴリズムによる自動取引を行っている機関投資家やヘッジファンドなどで、逆イールドのサインが出たときに自動的に金融資産を売る自動プログラムが組み込まれていた可能性もあり、それが株式市場の下落幅を大きくした可能性もありそうです。
歴史を紐解いてみると、1978年以降で米10年国債と2年国債の利回りの逆転現象は5回起こっており、逆転現象が発生してから11カ月~25カ月後に米国は実際に景気後退していることが分かります。株式市場は、将来の景気動向や企業業績を予想して変動するいわば「先行指数」ですから、株価が下落する局面では、以降の景気動向に対して一層の警戒が必要になってくると思われます。
✓安全資産として買われる米国債
そもそも、債券の「利回り」と「価格」は逆の動きをします。つまり、米10年国債利回りが下落しているということは、米10年国債の価格が上昇しているということで、これは米10年国債が買われていること意味します。一般的に米10年国債は、リスクが相対的に小さい「安全資産」の代表例であり、世界経済の先行きの不安感が高まると買われる傾向にあります。
こうした不安感は、8月1日にアメリカのトランプ大統領が中国に対する追加関税措置の第4弾を発表し、米中貿易摩擦が再燃したことに加え、足元で発表された中国やドイツの経済指標が思わしくなかったことや、香港でのデモの泥沼化懸念など、さまざまな要因が複雑に絡みあって醸成されていると思われます。
✓今後の注目点
今回発生した逆イールド(米10年国債-米2年国債)は、過去のケースとは異なり、アメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)が過去に類を見ない非伝統的手段による金融緩和政策を長期にわたって行っていたことで、そもそもの長期金利の水準が押し下げてられてきたことの影響も加味する必要があり、短絡的に「逆イールド=景気後退入りのシグナル」とは言えない可能性もあります。
また8月14日のダウ平均株価の急落を受け、トランプ大統領はツイッターで、FRBのパウエル議長を「無知」と非難したうえで、「米経済の減速懸念が高まっているのは自身の通商政策ではなく、FRBの金融政策が原因」と痛烈に批判しました。こうしたトランプ大統領の「利下げ圧力」を受けたFRBの政策動向には注視が必要です。
✓下落相場で重要な「分散投資」
以上のように、株式市場の見通しは不透明感が高まっておりますが、このような局面においても、長期的な視点に立ち、「分散投資」の基本である、
・「銘柄分散」:日本株式市場に投資する場合は、複数の企業に投資する。
・「国際分散」:世界の株式や債券などに幅広く投資する。
・「時間分散」:一括投資せず、投資タイミングを複数に分けて積立投資する。
のような分散投資の基本を意識した資産運用を考えていくことが大切です。
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