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ラクダ音。

私はカナダで映画に音をつけるという仕事をしており、それに使う小道具は数知れず。いろんな音を作るわけですが、映画の中によく登場する日常的な生活音の中に「タバコの音」がある。

俳優さんにとって、さりげなく演じるのがの難しい仕草は数多くあると思うが、タバコはその代表格の一つではないかと思う。動きを真似ていると、普段吸う人と吸わない人がすぐにわかる。

トントン、シュ、クチャ。

パックから取り出す、咥える、火を付ける。それからタバコを取り出すときに開け口の横をトントン、ってやる、あれ。あれはソフトパックのタバコじゃないとやらない。今では少なくなったソフトパックのタバコだけが生み出す独特な音。柔らかくて、さりげなくて、カッコイイ音。それから空になった時にクチャっと握り潰さない人はいない。ついでに捻ったり。

アメリカのタバコは今でもソフトパックのブランドが数種類あって、カナダのタバコはほぼ全て硬い箱。日本のタバコも近年、ほとんどボックスタイプになったのではと思う。ソフトパックは見つけるのが難しくなってきた。

ラクダ

小道具の中にタバコが数種あって、その中でひときわカッコイイラクダ印のソフトパック。このキャメルは20年くらい前に買った。何の気なしに買った気がするので買った頃はまだ私もタバコを吸っていたのではないかと思う。年季が入ってきたけど、使用頻度が高く、入手困難な大切な小道具なので、直しながら使っている。中身はとうの昔に空っぽで、一本だけ取り出せる穴を残して、あとはシュレッドした紙をタバコっぽいフンワリ感を織り込んで詰めてある。捻りつぶす音にはもちろん使わない。まだ少し匂いが残っている。

そういえば日本からソフトパックのタバコを持ち帰ったこともあったが、いつの間にか失くなってしまった。日本へ行くたびに「タバコ買おかな」と思うのだが、ここ数年、買わずじまいな理由はズバリ、「買い方がわからない」。なんか難しいスよね、日本のタバコ販売機。次回は勇気を出して、そうだ、コンビニで買ってみよう。ソフトパックのタバコ、日本にはまだあるのかな。

愛着の湧く小道具は多い。これからも、このラクダはと歩けるところまで歩いて行きたいと思う。

読んでいただきありがとうございました。

@foleygoro


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