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日本音。

日本はありとあらゆる音がとてつもなく楽しい音列島。

30年近くカナダに住んできた私が日本へ行くと、空港で踏むはじめの一歩と同時に、日本の空気が感じられて、日本の匂いがして、そして日本の音が耳にわんさか飛び込んでくる。

ガヤガヤ。

まずは日本語のガヤガヤの洗礼。声のトーン、笑い声、電話で話す人、すべての「ガヤ」が独特だ。売店の店員さんの「いらっしゃいませ〜」につい、「ただいま〜」と答えたくなる。

椅子の音やドアの音は国が変われば変わるし、そしてトイレ。トイレ大国日本のトイレが他国のものとどれだけ違って聞こえるかは想像に易いでしょう。空港のトイレで音を聞いてそのエキゾチックさに萌えているやつは他にあまりいないかもしれない。

バス乗り場で日本語のアナウンスを浴びる。通り過ぎるバスのエンジンの音も日本車の音だ。バスの中では運転手さんがヘッドセットで注意と案内をしてくれている。ロボ音声じゃない生声車内アナウンスが聞けるとラッキー。降り立った駅前ローターリーに入ってくる軽自動車のエンジン音はカナダでは聞くことがない。焼き鳥屋台のおじさんの声。どこからか聞こえるポップソングは間違いなく大ヒット中の曲なんだけど、聞いた事がないのでこれまた新鮮。

日本には電子音がやたらに多いのは言うまでもないが、それは震災の後の節電でかなり減って、そのまま以前よりは少ない感じ。10年前まではエスカレーターもエレベーターもロボ音声でハキハキ喋ってたし、自販機のボタンからピコピコ飛び散るいろんな音もかなり聞こえよがしで派手だった。

サラウンド・デ・シケイダ

実家は埼玉の山間部なので、自然がいっぱいあって、その音も美しく、懐かしい。木の音、川の音に混ざって、当然カナダで聞くのとは全く違う鳥の声。夏であれば蝉(シケイダ)の声。日本にお住いの皆さんは無意識ミュートできるかと思いますが、カナダ育ちの我がキッズには耳を塞ぎたくなるほどの大音響。

あっちから田舎道をスーパーカブが走ってくる。回転式ギアシフトの音は、私にとってはかなり上位にランクする日本の「田舎の音」。

バックします。

日本では必ず東京へ行く。特に池袋は大好き。埼玉人の端くれですから。高架の上を行く電車のモーター音、音響信号のピヨピヨ、日本の交差点で一番聞こえる4トントラックのディーゼルエンジン音、ゲームセンターの音とか、威勢のいい「らっしゃいやせ〜ぃ!」。どれもこれも嬉しくてたまらない。トラックの「バックします」や「左に曲がります」が聞こえて、「録音したい!」と急いで追いかけた事もあり。

スーパーサウンド

スーパーやデパ地下はこれまた音が嬉しいところ。日本人はスーパーを魚市場みたいな雰囲気にするのが好きだから、威勢のいい売り声や音楽が楽しい。買いたい気分もまんまと盛り上がる。カナダのスーパーにはそういうのがないので、つまらない。コンビニのチャイムは私の耳にはヘブンに入る場面のハープに聞こえる。

平日の夜、東京から帰る電車の車内。人がたくさん乗っているのに妙に静か。これはとても特殊な音空間。とても日本ぽいと感じる「音」だ。小雨の降るある日、(確か)半蔵門線に乗ったとき、床に滑り止めのゴム素材が使われていたのだけど、数百人の乗客の濡れた靴底がキュイキュイと大合唱しているのがおかしくて笑いをこらえた事がある。珍しい日本の音に出会えた日だった。

お蕎麦屋さん

ポータブルレコーダーで録音した素材の中に、「お蕎麦屋さん店内」がある。自動ドア、券売機、人の良さそうなご主人の声、大きな鍋がグツグツ。そして蕎麦をすする音。お蕎麦やさんというとても「日本」な空間の中に漂う素敵な日本文化、日本の音。時々ASMA的に聞き返すとても好きな素材だ。

ここ数年、行けていないが、また近いうちに大好きな音列島日本の音を聞きに行きたいものだ。

読んでいただきありがとうございました。





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