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少女を生き抜きたいんだ

あの頃見ていたインターネットの女の子の名前を検索してももう見つからなかった。最初からまるで存在していなかったみたいに、跡形もなく消えていた。みんなどこにいるの?こうやってみんないなくなってしまうんでしょう。貴方も、貴方も、私も、いつかはここを去っていくんでしょう。いつかの記憶の中に永遠に取り残されてしまったような感覚。確実にどこかのタイミングで壊れてしまうモラトリアム、に浸ってその時が来てしまう前に私は大人にならずに死んでもいい。もう君のことを好きじゃなくなってしまったなら、君の最後のぬくもりが完全に失くなる前に天使になっちゃいたい。君の涙をのむ天使になりたかったんだよ。何やっても思春期の延長戦みたいで笑えるね。最近物忘れが激しくてね、何と闘ってたんだっけ、何を愛してたんだっけ、なんで泣いてたんだっけ。って大事なことどこかに置き去りにしちゃうの。結局のところ、ぜんぶ君のせいだよ君が泣くせいだよ君が笑うせいだよ君が光ってるせいだよ。人生で一番苦しかったとき一番本質に近づけてた気がしたから、だから苦しくて長くて寒かったあの冬の日を思い出してしまう。ツインテールとさよならして髪を短く切ったこと、君とさよならしたこと。誰か、私はあの時傷ついてたんだよって言ってあげて。長い艶やかな髪を切るのはれっきとした自傷だと。だって、耐えきれなくなったんだ、君のことで泣くのをやめたくなったんだ、苦しすぎたんだ。私が私をだめにしたんだ。忘れたら楽になるのかな、忘れたらもう君に逢えないのかな。気管支も肺も冷たい空気に侵されてただじっと遠くを見つめていた冬も終わりこんなに輝く季節が訪れたのに、あの頃私といっしょに埋まっていた雪が跡形もなく溶けてしまったことが少し悲しいのはなんでなの。
君のデータを消すなんて私には無理だよ。
君がもう一度笑ってくれないと、私の少女時代は終われないよ終わらないよ。君なしで終わらせないからさ、どうかもう一度笑ってみせてよ。私の少女を剥がしていいのは君だけなんだ。

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