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あの夜を越えて

久しぶりに前好きだった人のことを思い出しました。あの頃の私はまだ何も分かっていなくて、なのに全部分かった気でいて、魔法が使えたらいいのになって毎日毎日神様に祈ってた。毎晩布団の中で泣いて、バスの揺れとともに離れていく街を見て悲しくなって、現実と夢の隙間みたいなところでずっとひとりで立ち止まってた。
「そろそろ行ってくるね」ってみんな突然遠いところに行ってしまったね。それがなんだかすごく悲しかった。けどね、私は今、去っていったみんなの姿を思い出す度に心があったかくなります。
同じスイミングスクールに通ってて、少し苦手だったけど明るくてやんちゃな男の子が、スイミングの帰りのバスの中で声を震わせながら「明日転校するんだ」って話してくれたあの瞬間が今でもずっと心の中にある。目に涙をためながらそう話してくれたとき、なんでもっと仲良くしなかったんだろうって思った。都合のいい考えだけれど、その子のチラチラ光る目尻を見る度にそう思って、その子の気持ちを考えると胸がいっぱいになって、なんでもっとこの子のことを知ろうとしなかったんだろうって。思い返せば私はそういうのばっかり繰り返してきたね。ほんとうに大切なものはなんだったのか、たからものはなんだったのか、いつも最後になって気付く。けどそれに気付かせてくれたのは紛れもなく、あの記憶の中でひかり続けている大切な人たちだ。
今更もう会えなくなった貴方達のことを思い返しています。
「自分のことで精一杯で、ほんとうに大切な人たちの存在に気付けなかった。」ってラジオで言ってたサラリーマンの人が忘れられないよ。そのサラリーマンがリクエストした曲はすごく素敵な曲だった。いつもどんな気持ちでその曲を聴いてたのかなあ。みんな、みんな、失って、けれどその中で希望を見失いたくなくて必死でさまよって、そうやって生きてきたのかな。
転校していった君も、約束を残して走り出した君も、いつも明るくてでもたくさん悩んで傷付いていた君も、いつの間にか疎遠になっちゃった君も、みんなみんな元気でいますように。どうか幸せでいてください。どれだけ否定されてもどれだけ間違えても私の中にいるみんなは変わらないよ。
きっと私は永遠に不幸だからピンクのパフェ食べて自殺するんだって思ってた私は今普通に生きてるよ。もう毎晩泣いてないし不幸な詩も書いてないんだ。裏切り者です。だけど私これでよかった。今私は私を生きてるよ。何にも縛られず誰のためにも生きてないの。もう君のためだけには生きてない。過去の私は自分の手で殺したってことにしときます。いやまた復活するかもしれない。けど私、あの夜を越えた私はすごく綺麗だよ。「あの夜を越えて私綺麗かしら」って歌詞で大泣きしてた私も君も君もね、あの夜を越えたみんなはすごく綺麗だよ。もう泣かないでいいよ。
たいせつなものはずっと私の中にある。だから私、もう大丈夫だ。

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