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蜘蛛の糸

小さなころ
散々悪さをしたのだけれど
ただ一匹の
蜘蛛を殺さず
助けたというだけで、
地獄から
お釈迦様が
男を助けようとした。

そういう話を聞いたことがある。

でも、
お釈迦様は
男が必死で地獄から
昇ってくるのを
見つめ
男が自分が助かるため仲間を切り離すとき
お釈迦様は
男を見捨てる

お釈迦様にとって
ほんの戯れ。

その時先生は
だから仲間を見捨ててはいけない。
と大きな声で言っていたが、
私は
何かが違うと感じていた。
お釈迦様はきっと
男が仲間を見捨てることを知っていたのだ。

今までありがとう。

男は私にそう言った。
鍵は私が返しておくから、

東京だよね
頑張ってね。

3年同棲していた
洗濯、料理、掃除
ていのいい家政婦のようだった。
食事にも気を付けて、
バランスのいいものを考えて・・・

東京の本社勤務の話を聞いたときは
私は結婚できる。
ようやく、
この曖昧な状態から解放される
と喜んだ
しかし
彼の口から出た言葉は
別れだった。

仕方がないよね?

あっさり言われた言葉には
淋しさなどなく
当たり前の様に
別れを切り出された。

そう、彼にとっては
私など
戯れの一つだったのだ。

彼はきっと
また東京で、女と同棲するんだろう。

じゃ元気でね。
今までありがとう。

切れた蜘蛛の糸。
落ちて行く男は
その後どうなったんだろう。

お釈迦様は
きっと男の苦しみが
解らなかったのかもしれない。

そう感じながら
扉を閉めて
鍵をかけた。

すがすがしい
春の日の事。

何とも云えない好よい匂が、絶間たえまなくあたりへ溢あふれて居ります。
極楽ももう午ひるに近くなったのでございましょう。

切れた蜘蛛の糸は
もう戻ることも無い。

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